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#005 紛糾
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俺、元の世界で、温泉を医療に有効利用しようって言う取り組みを、積極的に行っていた関係機関の促進チームに派遣させられたことがあって、温泉地あちこちに出張で行ったことがあったんだ。かなり興味深かったんだよね。
で、今回の現地視察で分かったこと。
専門家でない俺の眼から見ても、ぱっと見、少し離れた場所に三種類の泉質が点在していると分かった。
硫黄泉はすぐに分かる。匂いも色もあるから。
ちょっと離れた、麓に近い所には少しぬるい池があって、そこは無色透明だった。
舐めてみたらしょっぱかったから、多分、塩化物泉かな?
外傷にも効く、肌に良い温泉だ。
もうひとつは、やはりちょっと離れた岩場から流れ出していたお湯で、周辺の岩が赤くなっていたし、少し鉄さびの匂いがしていたことから含鉄泉だと思う。
有馬温泉と同じヤツだろう。
俺は科学者じゃないから詳細は出せないけど…と考えたところでふと思い出した。
あ、俺って神子じゃん。
集中すれば、鑑定が出来るんじゃね?
そう思いついたから鑑定した。
だいたい思った通りの結果でした。
取りあえず、源泉は瓶に入れて持ち帰ることにした。
この土地は自由に使って良いらしい。
メゾンのスタッフ嬢の故郷は、ちゃんとした地元の騎士爵の領地ではあったんだけど、そこに隣接しているこの温泉地帯は、人が住むにも農地にも向かないという事で、国の直轄地となっている区域。
だから、俺が使いたいなら好きにしていいとのこと。
問題は施設の建設にどこまで国が動いてくれるかだ。
所謂スーパー銭湯くらいの建物を作るくらいまでならいけそうかな。
でも、一応最初はガツンとスパセンター企画、臆せずぶっ込むよ!
翌日は王城に呼ばれていた。
シモン様や義兄一行が割り出して報告した件に関して、エルンスト様が関係庁の大臣数人を同席させて待っていた。
まず、建造物の規模が予想より遙かに大きかったことで、どう言う事かの説明を求められた。
一応現場でシモン様一行にもザックリとは説明したんだけど。
「それはつまり、あのとても人が住めるとは思えない臭い土地に、ひとつの街を建設するという事でしょうか」
シモン様は少し硬い表情で、鋭いツッコミを入れてきた。
さすがシモン様と思った。容赦がない。
いや、あれは使いようによって非常に人体に良い影響を与えてくれるんですよと説明したら。
「あの時、湯が浸った岩に、やや黄ばんだ白い粉やぬめりが残りましたね。アレを神子様は“湯ノ花…つまりは湯に含まれる体に良い成分の結晶”と仰いました。
で、採取して持ち帰った後、実験動物に舐めさせましたところ、死にました。
体に良いどころか毒ですよね?あの湯が美容や健康に良いという事が非常に疑わしく、そのような場所に街を興すなどは、危険なのでは?何より神子様のお体が心配です」
わーん、シモン様が理路整然と攻めてきた!
てか、その動物可哀想な事をしてしまった。いきなり舐めさせるとは思わなかった。
事前に言っておかなかった俺が悪いな。人間で試さなくて良かったと言うべきなのか?
「使いようなんですよ!ものすごく効く薬もいきなり大量に飲ませたら毒じゃないですか!ましてや軟膏なんかは経口投与しないでしょ?皮膚から浸透するのと口から飲むのとは大違いなんですから!」
フム、と、シモン様は手元の書類に何かを書き込んでいる。
「ですが、シモン様は非常に良いところに気づかれました。実は温泉そのものは、入浴だけでなく飲用でも効果を得られるのです」
「仰っていることが矛盾していませんか?口からでは毒になるのでは?」
俺達の攻防を暫く見ていたエルンスト様が窘めてくれた。
「本当にあのような劣悪な環境に入浴施設や宿泊施設を建設して大丈夫なのですか?神子様が是非にとお望みならば、“生誕の儀”へのお礼及びお祝いとして、やぶさかではありませんが、神子様のお体に障っては困るのです。一旦個人規模の施設を設けて様子を見ては」
まあ、わかるよ。そうなるだろうね。
温泉の価値を知らない世界では。
結局のところ、当初は泉質の違う三つの湯を源泉から引いてきて、それぞれ専用の大浴場を持つ宿泊施設…すなわち温泉宿を建設するというところまではたどり着いた。
それぞれに別の宿ではなく、一軒の温泉宿に、三つの入浴施設という意味だ。
自然石で囲めば良いだけならと、露天風呂も三つ作ってくれるって。
宿と言ってもホテルのようなものではなく、あくまで俺の別荘的なもの。
スパセンターのような事業としての建物ではなく、個人的な別荘。
でもこの世界での貴族としての別荘だから、いくつもの客室を有したお邸ではある様子。
ただ、大臣の中には「全て神子様のご希望通りにすべきです」という人や、俺の話す温泉の効果にものすごく興味津々で、一種の実験場として建設してはどうだろうか、と言う意見もあり。
関係大臣とシモン様が侃々諤々の議論があったが、最終的にはエルンスト様が一定の歩み寄りの元に着地点を示した感じだ。
生誕の儀に駆り出す対価とは言うが、詰まるところは俺への誕生日のお祝いなわけだ。
それなのに、俺が具合悪くなったり、せっかくの俺用別荘が無駄になったりしたら…。
多分それがシモン様の一番の懸念だろう。
ふっふっふ。
一軒の別荘から。
先ずはそこからだね。
デカくするよ。ゆくゆくね。
温泉はね。
それ自体が財源なんだよ。
そのうち思い知らせてあげるよ。
陛下も王妃殿下と、シモン様もリオネス様と、いずれ来てみたら良いよ。
妄想を膨らませてくつくつとほくそ笑んでいたら、ミランにそっと耳打ちされた。
「今ちょっと、神子様がされてはいけないお顔になってました」
…ハッ…。
で、今回の現地視察で分かったこと。
専門家でない俺の眼から見ても、ぱっと見、少し離れた場所に三種類の泉質が点在していると分かった。
硫黄泉はすぐに分かる。匂いも色もあるから。
ちょっと離れた、麓に近い所には少しぬるい池があって、そこは無色透明だった。
舐めてみたらしょっぱかったから、多分、塩化物泉かな?
外傷にも効く、肌に良い温泉だ。
もうひとつは、やはりちょっと離れた岩場から流れ出していたお湯で、周辺の岩が赤くなっていたし、少し鉄さびの匂いがしていたことから含鉄泉だと思う。
有馬温泉と同じヤツだろう。
俺は科学者じゃないから詳細は出せないけど…と考えたところでふと思い出した。
あ、俺って神子じゃん。
集中すれば、鑑定が出来るんじゃね?
そう思いついたから鑑定した。
だいたい思った通りの結果でした。
取りあえず、源泉は瓶に入れて持ち帰ることにした。
この土地は自由に使って良いらしい。
メゾンのスタッフ嬢の故郷は、ちゃんとした地元の騎士爵の領地ではあったんだけど、そこに隣接しているこの温泉地帯は、人が住むにも農地にも向かないという事で、国の直轄地となっている区域。
だから、俺が使いたいなら好きにしていいとのこと。
問題は施設の建設にどこまで国が動いてくれるかだ。
所謂スーパー銭湯くらいの建物を作るくらいまでならいけそうかな。
でも、一応最初はガツンとスパセンター企画、臆せずぶっ込むよ!
翌日は王城に呼ばれていた。
シモン様や義兄一行が割り出して報告した件に関して、エルンスト様が関係庁の大臣数人を同席させて待っていた。
まず、建造物の規模が予想より遙かに大きかったことで、どう言う事かの説明を求められた。
一応現場でシモン様一行にもザックリとは説明したんだけど。
「それはつまり、あのとても人が住めるとは思えない臭い土地に、ひとつの街を建設するという事でしょうか」
シモン様は少し硬い表情で、鋭いツッコミを入れてきた。
さすがシモン様と思った。容赦がない。
いや、あれは使いようによって非常に人体に良い影響を与えてくれるんですよと説明したら。
「あの時、湯が浸った岩に、やや黄ばんだ白い粉やぬめりが残りましたね。アレを神子様は“湯ノ花…つまりは湯に含まれる体に良い成分の結晶”と仰いました。
で、採取して持ち帰った後、実験動物に舐めさせましたところ、死にました。
体に良いどころか毒ですよね?あの湯が美容や健康に良いという事が非常に疑わしく、そのような場所に街を興すなどは、危険なのでは?何より神子様のお体が心配です」
わーん、シモン様が理路整然と攻めてきた!
てか、その動物可哀想な事をしてしまった。いきなり舐めさせるとは思わなかった。
事前に言っておかなかった俺が悪いな。人間で試さなくて良かったと言うべきなのか?
「使いようなんですよ!ものすごく効く薬もいきなり大量に飲ませたら毒じゃないですか!ましてや軟膏なんかは経口投与しないでしょ?皮膚から浸透するのと口から飲むのとは大違いなんですから!」
フム、と、シモン様は手元の書類に何かを書き込んでいる。
「ですが、シモン様は非常に良いところに気づかれました。実は温泉そのものは、入浴だけでなく飲用でも効果を得られるのです」
「仰っていることが矛盾していませんか?口からでは毒になるのでは?」
俺達の攻防を暫く見ていたエルンスト様が窘めてくれた。
「本当にあのような劣悪な環境に入浴施設や宿泊施設を建設して大丈夫なのですか?神子様が是非にとお望みならば、“生誕の儀”へのお礼及びお祝いとして、やぶさかではありませんが、神子様のお体に障っては困るのです。一旦個人規模の施設を設けて様子を見ては」
まあ、わかるよ。そうなるだろうね。
温泉の価値を知らない世界では。
結局のところ、当初は泉質の違う三つの湯を源泉から引いてきて、それぞれ専用の大浴場を持つ宿泊施設…すなわち温泉宿を建設するというところまではたどり着いた。
それぞれに別の宿ではなく、一軒の温泉宿に、三つの入浴施設という意味だ。
自然石で囲めば良いだけならと、露天風呂も三つ作ってくれるって。
宿と言ってもホテルのようなものではなく、あくまで俺の別荘的なもの。
スパセンターのような事業としての建物ではなく、個人的な別荘。
でもこの世界での貴族としての別荘だから、いくつもの客室を有したお邸ではある様子。
ただ、大臣の中には「全て神子様のご希望通りにすべきです」という人や、俺の話す温泉の効果にものすごく興味津々で、一種の実験場として建設してはどうだろうか、と言う意見もあり。
関係大臣とシモン様が侃々諤々の議論があったが、最終的にはエルンスト様が一定の歩み寄りの元に着地点を示した感じだ。
生誕の儀に駆り出す対価とは言うが、詰まるところは俺への誕生日のお祝いなわけだ。
それなのに、俺が具合悪くなったり、せっかくの俺用別荘が無駄になったりしたら…。
多分それがシモン様の一番の懸念だろう。
ふっふっふ。
一軒の別荘から。
先ずはそこからだね。
デカくするよ。ゆくゆくね。
温泉はね。
それ自体が財源なんだよ。
そのうち思い知らせてあげるよ。
陛下も王妃殿下と、シモン様もリオネス様と、いずれ来てみたら良いよ。
妄想を膨らませてくつくつとほくそ笑んでいたら、ミランにそっと耳打ちされた。
「今ちょっと、神子様がされてはいけないお顔になってました」
…ハッ…。
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