俎上の魚は水を得る

円玉

文字の大きさ
6 / 30

#006 お祝い続々

しおりを挟む
瓶に入れて持ち帰った湯は、ホエノワ学園都市に建設された王立研究所に持って行き、エンドファンと師匠に渡した。

これで、薬か美容品が創れないかと。

多少の鑑定能力を持つ師匠は即座に「ほう、ほう!これは面白いのおッ」と興味津々。
きっと有効活用してくれるだろう。
「足りなくなったら言って。すぐ追加するから」
一度行ったところは転移で行けるからな。

そしたらエンドファンがおずおずと500cc位の瓶を出してきた。
中の液体は淡いシトリン色の透明な液体と、透明感のあるチョコレート色の液体を出してきた。
「まだ試作品なので、ちょっと試してみて、ご意見をください」

わお!
米酢と醤油じゃないの?
栓を開けて匂いを嗅いだら米酢はツンときた。
マクミランは「うわっ」と言って鼻を覆って顔を背けた。
確かにビネガーよりキツいもんな。
「サケの方はまだ時間が掛かりそうです。もう暫くお待ちください」
「うん。頼むね。楽しみにしてる」

良い感じだ。
新鮮なお魚を肴に熱燗を差しつ差されつ…コレにまた一歩近づいてきた。

そんなこんなで気づくと収穫祭まであと10日ほどになっていた。

また王城に呼ばれて転移する。
上空に飛竜が何頭か飛んでいた。
ここラグンフリズ王国は、飛竜を積極的に、経済活動でも軍事でも使役する方向で、訓練や試乗を進めている。
竜騎士を育てるに当たり、ガヌ公国からの指導係を頼み、時折マクミランも呼び出されたりしている。
今回もちょっと声をかけられて、俺とは別行動になった。

俺は国王陛下と共に謁見の間に通されて、生誕祭に先駆けて到着している、各国のお祝いの品を受け取る。
生誕祭当日は、贈り物の目録を読み上げるらしい。

それぞれの国の一流品を次々と贈られて、もう…何というか…。ホントに心苦しい。
嬉しいよりも先にドーモスミマセンという気持ちだ。
30半ばおじさんの誕生日ごときを祝うために、これほど高価なものを次々と。
それぞれ見る度に、読み上げられる品目を聞く度に、ビビる。
「○○国特産の××、大陸一の名工誰々が丹精込めて創り上げた逸品にございます」
…とかが次々と運ばれてくるんだよ。
俺、そんなん貰えるような立派なこと、何もしてないよ~~(滝汗)

けど、常に嫣然と微笑んで「○○国のご厚意に感謝します。国王陛下並びに関わった全ての方々にヤスティナ・テマ神のご加護がありますように」と笑みながら胸に手を当て、その掌を差し伸べる。
魔法でキラキラする治癒の光を出してご使者に降り注ぐ…みたいなパフォーマンスをしてみせる。
そうすると随分喜んでくれる。
せめてもそのくらいしないと申し訳無いわ。
一応旅の疲れも取れるはず。

最後の使者が姿を見せたとき、俺は目を瞠った。
そこには、煌めく長い銀髪を右肩寄りに束ねた、長身の美丈夫がお伴の文官と騎士を従えて、表情が確認出来る距離まで進み出る。そして跪いた。

「コモ王国宰相、グレイモス・エグニシェタ公爵、神子様並びにラグンフリズ王国国王陛下にご挨拶申し上げます」
相変わらずよく通る、美声で名乗る。
「コモ王国王家並びに国民一同になりかわりまして、此度の神子様ご生誕の儀、心よりお慶び申し上げます」

そして、お伴の文官が贈り物の目録を読み上げる。
金細工だの見事な刺繍のローブだのに混じって、俺の心を擽った一文があった。
「ディアナ号を筆頭とした、運搬用飛竜5体を…」

ディアナ!あの銀色の綺麗な飛竜!月の女神!
まじか!!

その夜は訪れた使者の皆さんをもてなす晩餐会が催された。

食後の歓談タイムは、食後酒を楽しむ者、お好みのお茶を嗜む者、果実水を注文する者が入り乱れて、それぞれ語り合いたい者同士が固まって談笑していた。
俺は一応、各テーブルにお礼を言って回った。

「そういうのは私たちがやりますから神子様はよろしいのです」
エルンスト様にはそう言われた。
言ってしまえば、一番偉い人は王族でもない使者の方と、晩餐後の歓談タイムまで座を共にする事はしないらしい。

でもさ、俺のためにわざわざ他国から一番良い品々を持ってきてくれたわけでしょ?
ご飯終わったら他の人に丸投げっていうのもさー。
それに、王族とか高位貴族ならばこの世界のそういうしきたりに則るべきなんだろうけど、俺日本人だもの。
テーブル回って皆さんのグラスにビール注いで回りたいところを、そこをグッと堪えて挨拶だけにするから。ね。ということで。

ひと通りテーブルを回りきってご挨拶が終わったら、マクミランを伴いサロンを辞去した。
廊下を歩いていたら背後から声をかけられた。
振り返る前から、その色気のある美声で誰だか分かっている。

「お久しぶりですグレイモス。此度はありがとうございました」
長身の彼を見上げるつもりで背を伸ばして微笑んだのに、彼はすぐに膝を着いて目線が下がった。
いや、膝を着いたどころか、床に手を着きほぼ這いつくばった。ビックリして固まると、彼の真っ直ぐな銀色の髪が床に滑り落ちて、そのまま顔が俺の足元に。
爪先に口づけられた。

「グレイモス、そのようなこと。どうぞ、お立ちなさい」
手を差し伸べて立ち上がるのを促すと、その手を取って手の甲にも口づけられた。
俺の背後に居るマクミランが一瞬息を止めた気配を感じた。

「お目にかかれて幸せです。相変わらずお美しい」
眩しいものを見るように目を細められた。
本気かコイツ…という心の呟きを押し殺して神子様スマイルを貼り付ける。
「ありがとう。あなたこそ、前にも増して麗しくもご立派になられて」

容姿を褒められたらお礼を言って相手も褒めるのがマナーらしいよ。

日本人的には「いえいえ、もう歳なのでお恥ずかしいです」とか言いたくなるけど、それはNGらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】俺の顔が良いのが悪い

香澄京耶
BL
顔が良すぎて祖国を追い出されたルシエル。 人目を避けて学院で研究に没頭する日々だったが、なぜか“王子様”と呼ばれる後輩ラウェルに懐かれて――。 「僕は、あなたそのものに惚れたんです。」 重くて甘い溺愛攻め × こじらせ美形受

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

偽りベータの宮廷薬師は、氷の宰相に匂いを嗅がれ溺愛される

水凪しおん
BL
「お前の匂いがないと、私は息ができない」 宮廷薬師のルチアーノは、オメガであることを隠し、自作の抑制薬でベータと偽って生きてきた。 しかしある日、冷徹無比と恐れられる「氷の宰相」アレクセイにその秘密がバレてしまう。 処刑を覚悟したルチアーノだったが、アレクセイが求めたのは、ルチアーノの身体から香る「匂い」だった!? 強すぎる能力ゆえに感覚過敏に苦しむ宰相と、彼の唯一の安らぎとなった薬師。 秘密の共有から始まる、契約と執着のオメガバース・ロマンス!

片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...