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#012 あっちも大事だったらしい
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ひとしきり泣いたあと、大きくため息をついて、少し深呼吸を繰り返した。
ややあって、落ち着いてきたときに、取り乱したことの謝罪をした。
咲本君は緩くかぶりを振って、微笑んで続けた。
「あー、…えっと、…その、その後の話をしても良いですか?」
その後?
まだ何か有ったのか?
俺がきょとんとしていると、俺の心の声は顔に書いてあったらしく。
「いや、まあ。…実際にはその後もかなり大変だったんですよ。」
「そりゃあそうでしょう。多くの人が目撃している中で人一人消えて、その後行方不明になっちゃったんでしょ?」
咲本君の言葉に仙元さんが合いの手を入れた。
そう言われたら、それもそうか。
「そうなんですよ。なにしろ、やっぱり先輩はその時を境に、消息不明になってしまったわけです。
最初はいわゆる、ただの失踪扱いで済ませようとしていたフシも有ったんですね。主に警察としては。
でも、普通失踪しちゃうヤツって、借金あったり人間関係がヤバかったりとか、なにがしかのトラブルを抱えてるもんじゃ無いですか。
先輩はそういうの全くなくて。
何より、会社側としてはそんなんで済まされちゃ困りますよと、ウチの優秀な人材が行方不明になってんですよって、警察のぬるい態度に猛攻かけたんですよ。
ただ、まあ、成人男子が失踪って、最初はホントあんまり…。
それに現場で見ていた人達の証言てのが、何か、ことごとく胡散臭いというか、オカルトっぽいというか。
こう、ぱーっと光って、その場で消えた…とか。
警察側も、ちょっと対応に困った部分も有ったんだとは思います。
そのうち、やはり不審である事は確かなので、何かの事件に巻き込まれたのかもと言う事で、捜査本部も出来たりしたみたいです。
そうなると、警察の捜査に関しては俺達にはわからなかったんですけど。
ただ、ちょっと、目撃者が多かったせいもあったし、マスコミ的に…なんというか、その…、言い方が悪いですけど、かなり盛り上がるネタで。
一時すごい話題になって、ワイドショーで取り上げられたり週刊誌の記事になったりしたんです。
一日二日じゃあ、全く収まらなくて。いっとき、どこのチャンネルでもそれが話題だったくらい。
ウチの会社にももうほぼ毎日、マスコミ関連の人が突撃してくるし、一般人からも電話かかってくるし。
あと、そんな事とは関係なく、俺達…個人的に先輩と親しかった者達が集まって、手分けして色々な人に当たってみたりとかしていた時期がありました。
マスコミは最初数ヶ月は凄い盛り上がっていたんですけど、そのうち徐々に沈静化してきて、でも半年後とか、一年後とか、数年後に、思い出したように取り上げたりして。
俺達の『三倉さんを捜す会』も徐々に活動が減ってきてしまって。
あの当時、ちょっとオタクなヤツがいて、『異世界に召喚されちゃったのかもな』なんて冗談言って、みんなから不謹慎だってボコられてたんだけど…。
まさかね。
ホントに召喚されてたなんて…」
そう言いながら、咲本君が笑いながら目頭を押さえた。
…えっと。ゴメン。
「なあ、その『三倉さんを捜す会』って…」
「えっ、そこ?」
間髪入れず、榊さんの突っ込みが入った。
「まあ、発起人は当時の渡辺課長と栄田主任に、冴子さん?…先輩の元カノ…の三人で。職場の中で、比較的先輩と仲の良かった何人かと、先輩と冴子さん共通の大学時代のお友達で構成されてたんですけど。それに何人か少し、先輩が営業がてら度々視察に行っていた病院関連の人とか…結構みんな真剣にやってましたよ。
駅とかモールでチラシ配って呼びかけたり。先輩の遠縁の人まで辿ったり」
えっ、そんなに?
うっわ、親戚辿るのはちょっと勘弁して欲しかったけど。…でも…
「…なんか、悪かったな…。そこまでやってもらってたのに…。俺こっちでちゃっかり幸せになっちゃってて…」
「何言ってるんですか!ちゃかりじゃないですよ!ここに至るまでに、こっちの世界でもいろんな辛い目に遭ってきたんじゃ無いですかッ!
今はただただ、目の前の先輩がこうやって、こっちの人に大切にされているのを見て、ホントに…、良かったなって思ってます。
多分、あの時のみんなも、今の先輩を見たら『ああ、無事で良かった』ってホッとしてくれますよ」
ヤメテ。
もうこれ以上俺を泣かせないで!
もうホント、最近トシのせいか涙もろくなっちゃって駄目なんだから!
「でも、ずっと引っかかっていたんでしょ?お仕事の件。
コレで胸のつかえが取れましたね」
仙元さんが優しい声音で労るように言ってくれた。
「俺が召喚されたときは、まだ16だったけど、いつ家出してもおかしくないくらい家庭環境が複雑だったから、多分誰も捜さなかったと思うんですよね~。
自分も最初はいっそあのしがらみから解放されてよかったと思ったくらいですし。…まあ、最初は、ですけど。
でも三倉さんは、やっぱり元の世界でもそれまでに築き上げてきた社会人としての信用があったからこそのエピソードですよね」
榊さんが頷きながら言う。
聞くと、仙元さんは結婚直後に嫁さんが巨額サイマーだったことが発覚して大喧嘩して飛び出した直後に召喚されているらしく、状況が状況だから、原因がありまくりで誰の目から見ても失踪以外の何ものでもないと思われただろうと言うことだった。
つまりお二人とも、家出とか失踪とかの動機がハッキリしている分、俺の時のような騒ぎにはならず、逆に他人に事情を知られたくない家族には隠蔽された可能性が高かろうという話だった。
それもそれで、酷い話ではあるが。
それにしても想像もしてなかった。
俺が消えたあとでそんな大事になって居たなんて。
ややあって、落ち着いてきたときに、取り乱したことの謝罪をした。
咲本君は緩くかぶりを振って、微笑んで続けた。
「あー、…えっと、…その、その後の話をしても良いですか?」
その後?
まだ何か有ったのか?
俺がきょとんとしていると、俺の心の声は顔に書いてあったらしく。
「いや、まあ。…実際にはその後もかなり大変だったんですよ。」
「そりゃあそうでしょう。多くの人が目撃している中で人一人消えて、その後行方不明になっちゃったんでしょ?」
咲本君の言葉に仙元さんが合いの手を入れた。
そう言われたら、それもそうか。
「そうなんですよ。なにしろ、やっぱり先輩はその時を境に、消息不明になってしまったわけです。
最初はいわゆる、ただの失踪扱いで済ませようとしていたフシも有ったんですね。主に警察としては。
でも、普通失踪しちゃうヤツって、借金あったり人間関係がヤバかったりとか、なにがしかのトラブルを抱えてるもんじゃ無いですか。
先輩はそういうの全くなくて。
何より、会社側としてはそんなんで済まされちゃ困りますよと、ウチの優秀な人材が行方不明になってんですよって、警察のぬるい態度に猛攻かけたんですよ。
ただ、まあ、成人男子が失踪って、最初はホントあんまり…。
それに現場で見ていた人達の証言てのが、何か、ことごとく胡散臭いというか、オカルトっぽいというか。
こう、ぱーっと光って、その場で消えた…とか。
警察側も、ちょっと対応に困った部分も有ったんだとは思います。
そのうち、やはり不審である事は確かなので、何かの事件に巻き込まれたのかもと言う事で、捜査本部も出来たりしたみたいです。
そうなると、警察の捜査に関しては俺達にはわからなかったんですけど。
ただ、ちょっと、目撃者が多かったせいもあったし、マスコミ的に…なんというか、その…、言い方が悪いですけど、かなり盛り上がるネタで。
一時すごい話題になって、ワイドショーで取り上げられたり週刊誌の記事になったりしたんです。
一日二日じゃあ、全く収まらなくて。いっとき、どこのチャンネルでもそれが話題だったくらい。
ウチの会社にももうほぼ毎日、マスコミ関連の人が突撃してくるし、一般人からも電話かかってくるし。
あと、そんな事とは関係なく、俺達…個人的に先輩と親しかった者達が集まって、手分けして色々な人に当たってみたりとかしていた時期がありました。
マスコミは最初数ヶ月は凄い盛り上がっていたんですけど、そのうち徐々に沈静化してきて、でも半年後とか、一年後とか、数年後に、思い出したように取り上げたりして。
俺達の『三倉さんを捜す会』も徐々に活動が減ってきてしまって。
あの当時、ちょっとオタクなヤツがいて、『異世界に召喚されちゃったのかもな』なんて冗談言って、みんなから不謹慎だってボコられてたんだけど…。
まさかね。
ホントに召喚されてたなんて…」
そう言いながら、咲本君が笑いながら目頭を押さえた。
…えっと。ゴメン。
「なあ、その『三倉さんを捜す会』って…」
「えっ、そこ?」
間髪入れず、榊さんの突っ込みが入った。
「まあ、発起人は当時の渡辺課長と栄田主任に、冴子さん?…先輩の元カノ…の三人で。職場の中で、比較的先輩と仲の良かった何人かと、先輩と冴子さん共通の大学時代のお友達で構成されてたんですけど。それに何人か少し、先輩が営業がてら度々視察に行っていた病院関連の人とか…結構みんな真剣にやってましたよ。
駅とかモールでチラシ配って呼びかけたり。先輩の遠縁の人まで辿ったり」
えっ、そんなに?
うっわ、親戚辿るのはちょっと勘弁して欲しかったけど。…でも…
「…なんか、悪かったな…。そこまでやってもらってたのに…。俺こっちでちゃっかり幸せになっちゃってて…」
「何言ってるんですか!ちゃかりじゃないですよ!ここに至るまでに、こっちの世界でもいろんな辛い目に遭ってきたんじゃ無いですかッ!
今はただただ、目の前の先輩がこうやって、こっちの人に大切にされているのを見て、ホントに…、良かったなって思ってます。
多分、あの時のみんなも、今の先輩を見たら『ああ、無事で良かった』ってホッとしてくれますよ」
ヤメテ。
もうこれ以上俺を泣かせないで!
もうホント、最近トシのせいか涙もろくなっちゃって駄目なんだから!
「でも、ずっと引っかかっていたんでしょ?お仕事の件。
コレで胸のつかえが取れましたね」
仙元さんが優しい声音で労るように言ってくれた。
「俺が召喚されたときは、まだ16だったけど、いつ家出してもおかしくないくらい家庭環境が複雑だったから、多分誰も捜さなかったと思うんですよね~。
自分も最初はいっそあのしがらみから解放されてよかったと思ったくらいですし。…まあ、最初は、ですけど。
でも三倉さんは、やっぱり元の世界でもそれまでに築き上げてきた社会人としての信用があったからこそのエピソードですよね」
榊さんが頷きながら言う。
聞くと、仙元さんは結婚直後に嫁さんが巨額サイマーだったことが発覚して大喧嘩して飛び出した直後に召喚されているらしく、状況が状況だから、原因がありまくりで誰の目から見ても失踪以外の何ものでもないと思われただろうと言うことだった。
つまりお二人とも、家出とか失踪とかの動機がハッキリしている分、俺の時のような騒ぎにはならず、逆に他人に事情を知られたくない家族には隠蔽された可能性が高かろうという話だった。
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それにしても想像もしてなかった。
俺が消えたあとでそんな大事になって居たなんて。
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