俎上の魚は水を得る

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#014 疲労困憊、お祝い、おなかいっぱい

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さすがに教皇猊下ご本人がご光臨なんて事は無かったから良かったけど。

でも教皇猊下直々に、当日テマ教本山からの特使をよこして、ヤスティナ・テマ神を象徴する深緑に金糸銀糸で縁飾りや刺繍を施した正装用ローブを下賜して下さったのにはマイッタ。

王家の判断で、さすがに教皇猊下からの贈り物を、他の使者様達と同等には出来ず、当日のサプライズとして直に手渡しという演出にしたらしい。

ファンファーレと共に赤い絨毯が舞台の正面に通されて、特設階段から特使が上ってきて、恭しく広げられたローブを直々に俺に纏わせてくれて…。

ガクブルですよ。

万雷の拍手と、歓声と、何でか鐘の音が聞こえてきて、沢山の鳩が飛び立っていった。

いや。あの…。

リズミカルな太鼓の音、鈴を鳴らしながら舞い踊る踊り子さん達。
一緒に歌い踊り始める群衆。
俺は…。俺は一体…。

…と思っていたら、遠くの空から午後の陽を受けながら何頭もの飛竜が飛んで来た。



あれは…!

その中の一頭は、ディアナじゃないか。
広場に影が落ち、おそらく飛竜に乗っていた竜騎士達が撒いたのであろう花びらが降る中、思わず俺はディアナに向けて、翔んだ。

ひときわ大きな歓声が上がった。
ディアナの背には、陽を反射する金糸や萌葱色のリボンで飾り付けられた輿が作り付けられて、その先頭の御者席にマクミランがいた。
屋台や櫓の飾りを吹き飛ばさない程度の低さと速度で、少しだけ俺達の姿が群衆に見えるように傾けて、そこで手を振った。沸き上がる歓声。

そのまま上空へ旋回しながら上昇し、何度か挨拶をした後にそのまま俺達は広場を後にした。

他の飛竜達は王城の方に飛んでいったが、俺達を乗せたディアナは、義兄宅のあるストグミク市に向かった。
さっきの飛竜隊は国家所有の軍馬などと同じ扱いだが、ディアナに関しては、所有者は俺という事になっている。
俺の気持ちとしては俺とミランのものなのだが。

グリエンテ商会は、商会所有の運搬用飛竜も何頭か所有し始めており、商会所有の飼育場も整備してきている。
ディアナは普段、そこで世話してもらっている。
さすがに、こんなにとびきり目を引く飛竜をハズレの村には置いておけないし、マクミランの家の庭には飼育スペースは無いからな。

マクミランの甥っ子達や、その従兄弟達もディアナのことは大のお気に入りで、柵の外からではあるがディアナちゃんディアナちゃんと呼んでは、首や尻尾を少し撫でさせてもらったりしている。
ディアナは賢い子で、自分に好意を向けてくる人間は分かるらしく、尚且つ相手が子供である事も分かるから、自分の方が相手をしてあげているという認識のようだ。

義兄宅に着くと、そこではそこでまた、盛大に誕生日を祝ってもらった。
マクミランの弾く竪琴と、フリーネン義兄さんの弾く手風琴、それに義姉さんの吹く横笛に合わせて子供達や使用人がフォークダンスのようなダンスを踊りながら、お誕生日を祝う歌を歌ってくれた。

いつもはミランのソロだったが、大勢で歌うとほぼ別物っぽかった。
え、こんなに陽気な歌だったの?みたいな。

そして、義兄家族から贈られたプレゼントは、ストグミク市にあるグリエンテ商会の持つ一流ホテルのロイヤルスイートルームの宿泊だった。

てっきり義兄宅にお泊まりするのだと思っていたけど、たまには二人っきりの時間を満喫してくれとの事だった。

「要はウチの家族からのプレゼントはコイツですよ」
そう言って包帯の倍くらいある幅広のリボンを、マクミランに巻き付けて花結びを作り、俺の方に差しだしてきた。
マクミランは、何も聞かされてなかったらしく、されるがままにリボンで巻かれて突き出されてポカンとしていた。

「わー、ありがとうございますー!大切にしまーす」
俺はちょっと酔って、調子に乗っていたせいもあり、若干ウケを狙った感もあるんだけどすかさずリボンで巻かれたマクミランに抱きついて言った。

その辺りでやっと状況が分かったマクミランが真っ赤になって「義兄さんっ!」と抗議したが、周りに冷やかされて終わった。





用意されたロイヤルスイートは王族やらが泊まる仕様になっているとのことで、この部屋の利用者専任の執事と侍女も付いている。

到着してすぐに、ものすごく自然に上着を脱がされ、手を洗うボウルを差し出され、ウエルカムティー&フルーツを供された、

俺達は別々の風呂にぶち込まれ、個別にマッサージを受けて磨き上げられ…。

俺の身支度が終わってサロンに出て行くと、貴族みたいに整えられたミランが既に待っていた。
たぶん着替えの服なんかも、義姉さんと義兄さんたちが用意してくれたんだろうなと思う。サイズぴったりだし。

そして、王族みたいなディナー。

なんだか、ここまで来たら笑えてきた。
これ、絶対わざとだよね。義兄さん。ウケ狙ってるんだよね。
だって、食事しているのは俺達二人なのに、室内楽団が入っていて生演奏してるし。
どこまでやんの?って感じになってる。

デザートの時には部屋を暗くして、アイスクリームにかけたブランデーに灯を点すなんて演出までやるし。

寝室に入ったら、部屋がプラネタリウムになってるし。
ベッドにはばらの花びらが散ってるし。

そして、要所要所でなぜか記念撮影が入る。
義兄さん、絶対コレホテルの広告にするんだろうな。

ちょっと覗いてみたら、案の定さっきとは別の広めの浴室に魔石で常時一定温度を保った湯が張られて、そこにも花びらが散らされていた。

さすがに最初はドン引きしていたミランも、終いには笑ってしまっていた。

けど。あろうことか。
ここまでしてもらったのに、俺は、その日は疲労困憊で即落ちで爆睡だった。
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