俎上の魚は水を得る

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#015 憧れのバラ風呂 ※

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翌朝、俺は寝返りを打てない拘束感を感じて意識が戻る。

目の前には彫刻みたいに端正な鼻筋と、金色の長いまつげがあった。
俺の身じろぎに気がついて、その烟る金色のまつげが揺れて、深い森の蔭りみたいな瞳が覗く。

「…えっと、ゴメン…」

あそこまで義兄さんが盛り上げてくれたのに、爆睡してしまった。
ロイヤルスイーツの無駄遣い。だよね。

いいえ、とミランの柔らかい声が耳を擽る。
「随分お疲れのご様子でしたから」

うん。
色々なことが昨日に向けて準備されてきて。
緊張もあったし、自分自身のテンションも思った以上に上がりまくってしまったしで、今ちょっとドーパミン枯渇状態。

「でも、折角の義兄さんからの贈り物を、消化しきれないのは何だか申し訳無いね」
もそもそと起き上がりながら気まずく呟く。

「特にあの、バラ風呂!あれは心残りだよなー」

「じゃあ、これから入りますか?」

えっ…と顔を上げると同時に、天蓋が旋回して体が宙に浮いた。
俺を抱き上げたと同時にマクミランの足が大股で浴室に向かった。

ひゃー、朝風呂かー!
どこまで俺を甘やかすつもりなんだよ!
だめ人間になっちゃうだろ!

ちょうど良い湯温の流れている水盤から手桶で湯をすくって丁寧に洗い流してくれてからバラの花や花びらがぷかぷか浮いて芳香を放っている湯船に下ろされた。
湯船にいきなり入っちゃだめというのは、俺がミランに躾けた。
洗われているときに、肌をくすぐる彼の指がなかなかに罪深い。

なのに!
俺の伴侶と来たら、なんと、俺を湯につけ込んだ後去ろうとしたよ。
「では、ごゆっくり」とか言って。
ちょっと待て。
思わず俺は彼のガウンの裾を捕まえた。

ガウンを脱がずに俺の体を洗ったりしていたから変だと思った。
「まさかの放置?」
戸惑う金髪のイケメン。俺の体を洗ってくれたりした事で、少しガウンも髪も濡れている。

いいな。なかなかコレも眼福だな。
いやいや、今はそういう場合じゃ無く。

「君が入ってこなくてどうすんだよ!」
は?と声を上げて本気でたじろいでいたよ。
「いや、一人で入るには広すぎだろ?この湯船。かといって、泳ぐには狭いだろ?」
「…はい…。…え…?」
「いいから、とっとと脱いで入って来い!」

なにこの子、本気でこの仕様の意味がわかってないの?

おずおずとゆっくり湿ったガウンを脱ぎ、躾けられたとおり水盤の湯で自らを洗う。
まろやかな筋肉の丸みを滑り落ち、飛び散る飛沫と湯気が舞う。

彫刻みたいだ。
ほらよくヨーロッパの噴水広場とかにあるヤツ。かっこいいな。
自分に湯を浴びせながら、体のあちこちを洗っている姿も芸術じみている。
すばらしい。
思わず俺は見とれて眺めてしまう。

あんまりガン見するものだから、途中から彼が少しギクシャクし始めた。
「…あ、あの…、なぜそんなに…見つめているのですか?」
「え、だって、良い眺めだから」
しまった。おっさん発言だったな。
とっさに思ったがその後なにげに恥じらって居るみたいなミランが見られたから、ヨシである。

湯船に身を沈めてきたミランに寄りかかり、彼の手を導いて背後から俺の体に腕を巻き付かせた。
肩越しに振り返り目線でキスを催促する。

俺の視姦が効いたのか、湯船に足を踏み入れたとき、既に彼の下半身が兆し始めていたのを知っている。

むせかえるようなバラの香り。
最初は互いの唇や舌先を舐め合うような触れ合いだったものが、次第に絡まり合い吸い合い、深く貪るようにまさぐり食べ合う。
それに伴い、彼のいたずらな指先が俺の弱い部分を探り始める。

時折隙間から漏れる吐息に混じって、濡れた声が鼻に抜ける。
浮かんでいる花が大きく揺れ始める。
離れた唇から唾液があふれ出し、汗と混じって顎に、そして鎖骨に流れ、張り付いた花びらをぬめらせる。

俺は半身捩って彼の肩にしがみつく。彼の熱い吐息が降ってくる。
濡れた厚みのある肩は滑って、うまく取りすがる事ができない。
更に身を捩って完全に向かい合い抱き合う形になる。俺は彼の両腿に跨がる形になる。
それぞれの剣を切り結ぶように、互いの高ぶったものがぶつかり合い擦れ合う。
その刺激に後退しようとする俺の尻をつかんで引き寄せながら、秘部を広げて指を進めてくる。

…あ、だめ…、ここで最後までいったら、のぼせちゃうから…

自分から誘ったくせに何言ってんだ俺、とは思う。
いやしかし。
湯に浸かったまま高まっていく事が、ここまでくらくらするものだとは思わなかった。
多分、香りのせいもあるんだろう。

いや、バラ風呂は十分堪能した。
これ以上はベッドに移動してくれ。頼む。ミラン。脳が煮える~。

多分、切れ切れにそんな事を訴えていたんだろう。

俺の体を湯船の外にうつ伏せるように乗り出させ。
朦朧としている俺の背後でミランはそっと秘部の窄まりを押し開きながら、いつもよりも熱い舌先を押し込んできた。
思わず「ひっ」と声を上げて口元を手で覆った。
その部分にも力が入ったはずなのだけど、彼の指に押し広げられているソコは閉じる事を許されなかった。

唾液を纏った舌先が丁寧に細部をぬめらせていく感触に背筋がぞわざわする。
時折思い出したように指先が押し入ってきて、更に奥まで舌先を誘導する。
無骨そうな彼の指は、いつも絶妙に繊細で妖しい。
気がつけば、張り詰めた前の方も緩急を付けて攻められて。

いつしか俺は切なさに声を上げながら背をわななかせていた。

一度湯の中に吐精したのをきっかけに、ザブリと抱き上げられて大判のタオルにまかれ、いつの間にか手早く水気を拭き取られ運ばれた。

続くベッドでの激しい責め苦。

なぜか湯から上がった後の方が溺れているような感覚に襲われながら、揺れてもがいた。
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