俎上の魚は水を得る

円玉

文字の大きさ
上 下
19 / 30

#019 遠慮してたというのか ※

しおりを挟む

 ※ R18 回です。 苦手な方は回避してください

――――――――――――――――――――――――――――――



久し振りに家中の窓を開けて、空気を入れ換えて、旅装を解いたら先ずはお茶。

お疲れさまの気持ちを込めて。
王家から持たされたご母堂殿下手作りのアプリコットマフィンなども添えてみる。

いやーホントに連日忙しかったなあ。
でも久し振りにディアナに乗れて嬉しかったー。
結局魔獣の炙り肉は食べられなかったからちょっと惜しかったなー。
いや普段ウチでも食べてるんだけど、広場で振る舞われているのはまだだから~。

などと茶をやっつけながらヘラヘラしていたら。

「今日はいなかった、あの転生者は昔の恋人なのですか?」

思わず茶を吹いてしまった。
いきなり直球?
あっけらかんと「うん!そうだよ」とか笑って言えないよね。
何となくギクシャクしながら「…う、うん…実は…」と、もごもご。
なぜなんだろう。彼とは何もしていなかったというのに!

「…ああ、でも安心して、彼はね…」
「今でも好きですか?」

俺の言葉を遮って、真っ直ぐ見つめて訊いてくる。
「………」

なんて言ったら良いのか。勿論今でも好きだ。嫌いになったことは無い。でも、それは既に恋人としてじゃない。

俺は一度深呼吸して、言葉を返そうとした。でも、今度もまた遮られた。

「今日は彼が居らず、他のお二人だけで良かったです。あのお二人だったのであまり気になりませんでした」

あのね…と、俺は落ち着いてミランに語りかける。
「咲本君のことだって、ただ懐かしかったのと、職場に対して抱えていた罪悪感を払拭して貰えた事への感慨で涙が出ただけだよ?君が気にする必要なんて無い。愛してるのは君だけだよ。…不安?」
いえ、と彼は首を振った。
「気になるのと不安になるのは違います。…嫉妬は感じますが…、彼に対して感じるのはどちらかといえば羨望に近いでしょうか」

ん?と首を傾げると。
「俺の知り得ない元の世界でのあなたを熟知していることと、何よりあなたがずっと心に抱え込んでいた重荷をさらりと取り払ってくれた事…それが酷く羨ましくて…妬ましいです」

最後の方は少しヘコんでいるような表情だった。
「何でもかんでも…あなたの人生の節目は、俺が作りたいんです。俺以外の誰かにそれを譲りたくないんです。…どんどん、欲深になっているんです…」

心が狭いんです…とかなんとか、最後の方は次第に声が小さくなってゴニョゴニョという感じだったけど、もう俺は何だか嬉しくなっちゃって、思わず顔を覆って肩を震わせてしまったよ。


その夜、久々の自宅でのまぐわいは俺の限界点を完全に超えまくった。

ああ、他所ではあれでもかなり遠慮していたんだなと思い知らされたよ。

つか、俺達朝もしたよな?バラ風呂からの~…で。
なんかもう、あれって彼にとってはむしろウォーミングアップだったの?って感じだよ。朝やったことで、俺の体も受け入れやすくなっていたと言うのもある。

ああ、もうね。
最初はソフトだったんだ。むしろいつもより慎重に、そっと始まって。
だから、まあ、今日はもう既に一回やってるしね、と軽めのつもりだった。

それが。
次第に興に乗ってきてと言うか、真剣味が上がってきて。

止めようとしても止まってくれなくなって。

彼の荒い熱い吐息が落ちてきて。呼吸に合わせて厚い胸板が上下して。
色んな角度から弱いところを舐められまくって。

俺の体を這い回る、少し硬い掌の動きに意識がとられる。
這うような、撫でるような、たどるような、擽るような動きで。
繰り返される愛撫に、次第に奥底から俺を苛んでくる疼きに堪えられなくなってくる。

乳首を甘噛みされながら舌先で先端をねぶられると、もう無意識に声が溢れて、勝手に腰が揺れてしまう。

腰骨をたどられ、脇の弱いところを擽られ、背中を愛撫され腰を浮かされ…。
最初は単純に擽ったいのに、繰り返されていくことで奥底から別の感覚が湧き上がってくる。

そして、脈打つ熱い塊を下腹部に押し当てられて擦り付けられて。一緒に握られて。扱かれて。
幾度となく身を捩った。
あんまりにもその緩急や、敏感な部分をなぞる指先が絶妙で。

だんだんと何も考えられなくなる。
覆い被さってくる彼の体の厚みが、のしかかってくる重みが愛おしくて、切なくて。

ゆっくりと押し入ってくる、ぬめりを纏ったその硬くて大きな熱。
限りなく不快感に近い快感も、ある瞬間を境に激しく襲ってくる官能も、全てが、…全てが…。

大きなうねりになって。

持ちきれないほどの、抱えきれないほどの、甘い…責め苦に…。

呑み込まれて。

揺すられて。

あ…、…っ…ぁ…

とっさに俺は悲鳴に近い声を上げて、空しく藻掻く。

得体の知れないなにかが…。その昂ぶりの向こうに、何かが来る。だめ。
こんなの。
こんなの…。

やだ、やめて、待って

「いやです」
藻掻きながら懇願する俺にぴしゃりと言った。
苦しそうに揺すりながら。

「一緒に…、もっと…、もっと先に…、あなたと、もっと…」
急くような熱い吐息の中で、切れ切れにそんな言葉を零しながら、彼の律動が早くなる。
ある種の恐怖を感じつつ、そのうねりに容赦なく押し上げられながら喘ぐ事しか出来ない。

絞り出すような声で、何度も彼が俺の名を呼んだ。
もう、おかしくなりそうだった。
早く、早く、この責め苦を終わらせたいと望んだ。
自分の中がギュギュッと締まるのが分かった。俺を抱え込んでいる彼の喉からウッという声が聴こえて、熱い物が中で放たれたのを感じる。
その時俺もイッた。けれど、射精は無かった。

コレは…。

目の前がチカチカした。後から幾度も寄せては返す波のように快楽の潮が襲う。
身の置き所の無い甘い疼きに、腰や背中を痙攣させて喘ぐ。


ま、まさかこの歳になって、こんな事をおぼえさせられるとは…!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男ふたなりな嫁は二人の夫に愛されています

BL / 連載中 24h.ポイント:1,881pt お気に入り:137

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:4,727

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,696pt お気に入り:1,660

ひきこもぐりん

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:586

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:32,741pt お気に入り:11,566

生きることが許されますように

BL / 完結 24h.ポイント:2,293pt お気に入り:777

処理中です...