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#025 いよいよです
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我がラグンフリズ王国を象徴する色。
金色と黄緑のツートン。
国旗の地色にも使われている。
一年の3分の1は豪雪に、その前後も降雪と氷結により、ほぼ半年近く経済活動が鈍化する。
黄金色は雪の季節に入る前の実りの象徴。
黄緑は、雪解けの地面からやっと顔を覗かせた、若草の象徴なのだ。
ラグンフリズ王国は、元々はコモ王国という、大陸の中でも比較的大きめの国の辺境領だった。
その時はコンセデス領と呼ばれていた。
コンセデス領のワインは独特で、白ワイン系なのだが、光にかざすと本当に極めてうっすらと、黄緑がかった金色に見える。
最初、香りはフルーティだが、飲み口はキリッとして、揺れて空気が入り時間が経つにつれ、僅かに花のような香りが鼻腔を擽るようになる。
コンセデス領が地図上なくなった今でも、コンセデスワインと呼ばれて、揺るぎない顧客を掴まえている。
ヌシ様はこのコンセデスワインがお気に召したのか。
コレが入った樽を置いておくと、空き皿や空き樽を回収しに行った際、樽の蓋が壊れている場合が多い。
他のワインの時には栓が開いて、中身が無くなっているだけなのだが。
一応、色々な銘柄を試している最中だから、コンセデスワインはたまになのだけど。
あと、回数を重ねるごとに、パンも色々と試している。
バケットのようなものや、ふわふわの白パン、最近はバターロールとか、ナッツやドライフルーツの入ったセミハードタイプのパンなど。
菓子も、最初は温泉まんじゅうだったけど、そのうちに月見団子のように積み上げた団子で、中に餡を入れたものとか、栗蒸しようかんとか、目先を変えてみたりもした。
どれも常に皿はキレイになって居るから、和菓子類もお嫌いでは無いのだろう。
因みに栗蒸しようかんは、ご母堂殿下にもシモン様にも大好評だったらしい。
ご母堂殿下は、貴婦人達とのお茶会でも出したとか何とか。
あと、世界一カッコいい俺の護衛騎士殿も、この栗蒸しようかんが気に入ったらしい。
もともと栗は好きなんだよな。
前に、簡単だから栗の茶巾絞りとか作ってみたら、ものすごく喜ばれて、滅多に料理のリクエストなんてしない彼が(いつも何を出しても美味しいと言って食べる)初めて「またアレを作って欲しい!」とキラキラしながら言ってきたんだった。
今度、榊さんに栗蒸しようかんの作り方教えてもらおう。
そんなこんなで、気がつけば裏山の梢から雪が落ちる音が度々聞こえ、村の家々の屋根からも滴がポタポタと滴り、それを追うようにドサリと塊が落ちてくる季節になって来た。
ハズレの村の目抜き通りも、路面の雪は両端に寄せられ、通り自体は乾いてきている。
共同井戸の周りに集まる奥さん達も増えた。
ハズレの村は国の中でも特に豪雪地帯に属するから、他の地域はもう少し雪解けも進んだ景色になって居ると思われる。
で、一度転移で、温泉施設予定地のチノ山原生林地帯に行ってみた。
やはり、ハズレの村よりは早春の色合いになって居る。
近隣の市町村もだ。
この分だとそろそろ道路のインフラ工事が具体的に動き始めるかも知れない。
作業員達の宿泊施設や作業中のまかない場とか、資材置き場とかの建設や設置からだろうけど、大々的に作業が始まる前に俺達神子が、先ずは周辺に結界を張らなくてはならない。
冬眠から覚めたばかりの獣たちは、魔獣を含め、腹を空かしているものだからな。
頃合いを見て、王城に行きシモン様に着工の予定などを聞いた。
着工式も行う、と言う事で、どうせなら同日に結界張りも執り行う旨、許可ももらった。
「またあの、神聖な舞いが見られるのですか?」
ミランが少し頬を染めて訊いてきた。
「見たいんだ?」
「勿論です!」
…えー…。
着工式では別にアレは無くても…と思っていたんだけど。
そっか。そんなに。
思わず俺は仙元さんと榊さんに「またアレ、やっても良いですか?」と訊いてしまったよ。
弱いんだよ、俺は。ミランのあの邪気の無いお強請りの目に。
地鎮祭と着工式は、手順としてはかなり似ているが、目的が異なる。
地鎮祭は、神様にご挨拶して、その土地を人間が利用させてもらう事をお許し願うための儀式だ。
一方、着工式はこれから工事を始めるに当たって、責任の重さを心に刻み、工事中の安全と成功を祈る儀式。
結果的に大地を弄る事になるから、その土地の邪気を祓い清める意図もあり、着工式でも鍬入りなどもするのが普通だが。
着工式…起工式とも言うが。
それに当たる式典は、この世界にもある。
最初の工事に携わる者達全員が一堂に会して、お偉いさんのご注意と励ましのスピーチを聞き、一任されるというビジネスライクな儀式だ。
本来、日本のそれのように神事っぽくは無い。
今回の場合はスピーチをするお偉いさんが王族という事が重要。
通常、一応未開発の地を利用する際には魔導師が集まり結界を張ると言う儀式も入る。
ただ、今回に関しては、我々神子組が再び神子舞いを披露し、その舞いの流れで結界を張るというパフォーマンスを見せる形式になった。
そのせいもあり、内外からそれはもう多くの取材が入った。
当然地元民である近隣の群衆も見に来る。
道路敷設の起点は、一応最も近くのトガポタ村の前を通る領道からだ。
トガポタ村の前の領道自体、道幅を広げるなど、補修工事込みのインフラ整備となる。
故にその式典は、トガポタ村にほど近い領道の、最もチノ山原生林地帯に寄った地点で行われる。
その近辺が、だだっ広い原野だという事もあり。
野外コンサートでも行われるのかって位の人出でひしめき合った。
「なんか、大変な事になっちゃってますよね」
榊さんの呟き。
……ウッ…。
なんか、むしろ生誕祭などより…。
金色と黄緑のツートン。
国旗の地色にも使われている。
一年の3分の1は豪雪に、その前後も降雪と氷結により、ほぼ半年近く経済活動が鈍化する。
黄金色は雪の季節に入る前の実りの象徴。
黄緑は、雪解けの地面からやっと顔を覗かせた、若草の象徴なのだ。
ラグンフリズ王国は、元々はコモ王国という、大陸の中でも比較的大きめの国の辺境領だった。
その時はコンセデス領と呼ばれていた。
コンセデス領のワインは独特で、白ワイン系なのだが、光にかざすと本当に極めてうっすらと、黄緑がかった金色に見える。
最初、香りはフルーティだが、飲み口はキリッとして、揺れて空気が入り時間が経つにつれ、僅かに花のような香りが鼻腔を擽るようになる。
コンセデス領が地図上なくなった今でも、コンセデスワインと呼ばれて、揺るぎない顧客を掴まえている。
ヌシ様はこのコンセデスワインがお気に召したのか。
コレが入った樽を置いておくと、空き皿や空き樽を回収しに行った際、樽の蓋が壊れている場合が多い。
他のワインの時には栓が開いて、中身が無くなっているだけなのだが。
一応、色々な銘柄を試している最中だから、コンセデスワインはたまになのだけど。
あと、回数を重ねるごとに、パンも色々と試している。
バケットのようなものや、ふわふわの白パン、最近はバターロールとか、ナッツやドライフルーツの入ったセミハードタイプのパンなど。
菓子も、最初は温泉まんじゅうだったけど、そのうちに月見団子のように積み上げた団子で、中に餡を入れたものとか、栗蒸しようかんとか、目先を変えてみたりもした。
どれも常に皿はキレイになって居るから、和菓子類もお嫌いでは無いのだろう。
因みに栗蒸しようかんは、ご母堂殿下にもシモン様にも大好評だったらしい。
ご母堂殿下は、貴婦人達とのお茶会でも出したとか何とか。
あと、世界一カッコいい俺の護衛騎士殿も、この栗蒸しようかんが気に入ったらしい。
もともと栗は好きなんだよな。
前に、簡単だから栗の茶巾絞りとか作ってみたら、ものすごく喜ばれて、滅多に料理のリクエストなんてしない彼が(いつも何を出しても美味しいと言って食べる)初めて「またアレを作って欲しい!」とキラキラしながら言ってきたんだった。
今度、榊さんに栗蒸しようかんの作り方教えてもらおう。
そんなこんなで、気がつけば裏山の梢から雪が落ちる音が度々聞こえ、村の家々の屋根からも滴がポタポタと滴り、それを追うようにドサリと塊が落ちてくる季節になって来た。
ハズレの村の目抜き通りも、路面の雪は両端に寄せられ、通り自体は乾いてきている。
共同井戸の周りに集まる奥さん達も増えた。
ハズレの村は国の中でも特に豪雪地帯に属するから、他の地域はもう少し雪解けも進んだ景色になって居ると思われる。
で、一度転移で、温泉施設予定地のチノ山原生林地帯に行ってみた。
やはり、ハズレの村よりは早春の色合いになって居る。
近隣の市町村もだ。
この分だとそろそろ道路のインフラ工事が具体的に動き始めるかも知れない。
作業員達の宿泊施設や作業中のまかない場とか、資材置き場とかの建設や設置からだろうけど、大々的に作業が始まる前に俺達神子が、先ずは周辺に結界を張らなくてはならない。
冬眠から覚めたばかりの獣たちは、魔獣を含め、腹を空かしているものだからな。
頃合いを見て、王城に行きシモン様に着工の予定などを聞いた。
着工式も行う、と言う事で、どうせなら同日に結界張りも執り行う旨、許可ももらった。
「またあの、神聖な舞いが見られるのですか?」
ミランが少し頬を染めて訊いてきた。
「見たいんだ?」
「勿論です!」
…えー…。
着工式では別にアレは無くても…と思っていたんだけど。
そっか。そんなに。
思わず俺は仙元さんと榊さんに「またアレ、やっても良いですか?」と訊いてしまったよ。
弱いんだよ、俺は。ミランのあの邪気の無いお強請りの目に。
地鎮祭と着工式は、手順としてはかなり似ているが、目的が異なる。
地鎮祭は、神様にご挨拶して、その土地を人間が利用させてもらう事をお許し願うための儀式だ。
一方、着工式はこれから工事を始めるに当たって、責任の重さを心に刻み、工事中の安全と成功を祈る儀式。
結果的に大地を弄る事になるから、その土地の邪気を祓い清める意図もあり、着工式でも鍬入りなどもするのが普通だが。
着工式…起工式とも言うが。
それに当たる式典は、この世界にもある。
最初の工事に携わる者達全員が一堂に会して、お偉いさんのご注意と励ましのスピーチを聞き、一任されるというビジネスライクな儀式だ。
本来、日本のそれのように神事っぽくは無い。
今回の場合はスピーチをするお偉いさんが王族という事が重要。
通常、一応未開発の地を利用する際には魔導師が集まり結界を張ると言う儀式も入る。
ただ、今回に関しては、我々神子組が再び神子舞いを披露し、その舞いの流れで結界を張るというパフォーマンスを見せる形式になった。
そのせいもあり、内外からそれはもう多くの取材が入った。
当然地元民である近隣の群衆も見に来る。
道路敷設の起点は、一応最も近くのトガポタ村の前を通る領道からだ。
トガポタ村の前の領道自体、道幅を広げるなど、補修工事込みのインフラ整備となる。
故にその式典は、トガポタ村にほど近い領道の、最もチノ山原生林地帯に寄った地点で行われる。
その近辺が、だだっ広い原野だという事もあり。
野外コンサートでも行われるのかって位の人出でひしめき合った。
「なんか、大変な事になっちゃってますよね」
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……ウッ…。
なんか、むしろ生誕祭などより…。
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