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#026 畏れる気持ち
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神子舞いの衣装は、フード付きの白いローブ。
そして、両手を広げると中振り袖が付いているかのようにも見えるカットのケープが付いている。
本当は色彩も和風に、中のチュニックを赤にして、より巫女さんチックにしてはどうかなんて案も出たけど、最終的にはそれは却下した。
さすがに俺達おっさんじゃないですか、ということで。
ローブの縁取りには金モールのパイピング飾りを施してあり、中のチュニックは淡い萌葱色。
ラグンフリズ王国を象徴する色彩だ。
両手に持つ、三番叟鈴代わりのウィンドチャイムは柄の部分に黄金色と黄緑色のリボンを巻いて、舞えばたなびき、腕を下ろせば地に溜まる程長く垂らした。
ウィンドチャイムの音は鈴の音よりも冷涼感がある。
俺達が両手を広げ片手を輪の中央に当たるように集め、そこを軸に車輪が回るように、ゆっくりと一歩進んでは鈴を鳴らし、三歩進んでは一旦止まってシャラシャラと鳴らす。
黙っていても様にならないし、ということで、時折、仙元さんが一定のフシで「は~らいた~まえ~…き~よめた~まえ~」とか歌うのに併せ、俺達も唱和する。
なんかもうホント、ごめんなさいって感じなんだけど、俺達は至って真剣。
以前の地鎮祭の時には、こんなのでもちゃんと神子の浄化能力を張り巡らせて、神竜様を中心に、浄化と癒やしの魔力を、粉雪を降らせるように一面に降りそそがせた。
今回はそのプログラムを、結界を張る魔法を展開する工程に差し替えた訳だ。
この神子舞いの時には、結構ギャラリーがしんと静まりかえって、我々の祝詞(?)というか祈りの声とウィンドチャイムの音が、草原を微かにさやぐ風の音と遠い野鳥の声に混じるのみで、それがきっと彼らの心にも神聖に響いたのだと思う。
終わってお辞儀をした瞬間に喝采がおき、ちょっと気恥ずかしかった。
そしてお偉いさん(リオネス様と大臣達と義兄)のご挨拶があり。
その場に集まった人々に温泉まんじゅうを配って、儀式はお開きになった。
取材もかなり入って居たようで、やはり翌日の紙面では概ね大きく報じられていた。
仙元さんと榊さんは、いずれも特定の住所は持っていない。
異世界人保護条約機構の拠点が置かれている、メーゲンカルナという秘境に常駐しているが、大陸のあちこちに散らばっている転生者や、老齢となって実質活動はしてない召喚者の元を点々と移動している。
ただ、今回の件でラグンフリズ王国は、彼らの滞在用に、王都にタウンハウスを用意した。
何度も行ったり来たりするのは大変だろうという事だった。
無論、彼らは転移が自在に出来るのだということは知っているから「もし良ければお使い下さい」くらいの軽さで差しだしたものだ。
戸建ての邸を用意するのでは無く、タウンハウスにしておいたという所で押しつけがましくならないよう配慮したのだと思う。
お邸なんか用意したら、ただでさえ俺という神子がいるのだから、ラグンフリズ王国は神子を悉く囲い込もうとしている、と言われかねない。
ただ、仙元さんは実は妻子持ちなのだ。
奥さんは転生者で、実は出自がちょっと複雑故に、メーゲンカルナの機構拠点に身を寄せている。お子さんは騎士団に就職済みだ。
榊さんはコモ王国を出た後、あちこちの国で治癒師として活動していた事で、行った先行った先の神殿に転がり込む癖が付いていたらしい。
それでも、タウンハウスは彼らにはかなり気軽に利用出来るねぐらとして、便利だったようだ。
榊さんは昨今増える和菓子の注文に応えるべく、厨房を自分仕様にどんどん改造してるらしい。
あの儀式以降、他国からも注文が入るようになって来ているらしい。
そろそろ義兄が動き出しそうだ。
その後、いよいよ道路の敷設作業がサクサクと進められていった。
俺達は三日おきくらいにお供物を捧げに通っている。
暖かくなってくると、腐敗や虫などが心配だから、うっすらと防止の結界を施したし、テントを取り付けて日陰にするようにした。
ラグンフリズ王国は気候的に、あまり暑くはならない。
北海道くらいの感じだろうか。
冬場は地熱が高く、他の地域ほどには積雪が見られなかったが、だからといって夏は、他よりも暑いという事も無い。山間部の涼しい風が吹いてくる。
もともと、何も無かった原野を整備する作業が多かった事もあり、街道の敷設作業は夏が終わる前には温泉地の拠点たる別荘建造予定地まで届きそうだった。
それとは別に、運搬用飛竜を使って運べるものや、土地の整備を担う作業員などは、先に予定地に運び込み、上下水道や土台作りなどを進め始めていた。
わくわくして、俺はミランを伴って度々進捗を覗きに行った。
勿論その際には祭壇にお参りしてお供物も捧げた。
ただ。
その時に。うすうすそうなんじゃないかとは思っていたんだけど。
やっぱり。
ヌシ様は覚醒しているのではないかと感じるようになって来た。
穏やかな気配ではある。
でも、最初にその気配を感じたときのように、深い眠りに沈んでいる感触では無い。
緩やかな鼓動を感じる。
一度、ディアナが上空を旋回して、なかなか降下しなかった事がある。
圧倒的な何かの気配を感じて、怯えていたかのようでもあった。
その日は降りずに、一旦ホームに戻してから、転移で改めて来た。
後日、俺とマクミランは連れ立って近隣の古老に、ヌシ様が覚醒した場合、何をすべきか、何が禁忌なのか、注意事項を聞き取るために回った。
古老達はほぼ口を揃えて、「神子様達は常に神竜様を崇めていらっしゃいます。そのお気持ちはきっと神竜様には伝わっているはずです」と言って、全く否定的な事を言われなかった。
けど、神聖なものを畏れる気持ちを抱く人間ばかりではない。
そして、両手を広げると中振り袖が付いているかのようにも見えるカットのケープが付いている。
本当は色彩も和風に、中のチュニックを赤にして、より巫女さんチックにしてはどうかなんて案も出たけど、最終的にはそれは却下した。
さすがに俺達おっさんじゃないですか、ということで。
ローブの縁取りには金モールのパイピング飾りを施してあり、中のチュニックは淡い萌葱色。
ラグンフリズ王国を象徴する色彩だ。
両手に持つ、三番叟鈴代わりのウィンドチャイムは柄の部分に黄金色と黄緑色のリボンを巻いて、舞えばたなびき、腕を下ろせば地に溜まる程長く垂らした。
ウィンドチャイムの音は鈴の音よりも冷涼感がある。
俺達が両手を広げ片手を輪の中央に当たるように集め、そこを軸に車輪が回るように、ゆっくりと一歩進んでは鈴を鳴らし、三歩進んでは一旦止まってシャラシャラと鳴らす。
黙っていても様にならないし、ということで、時折、仙元さんが一定のフシで「は~らいた~まえ~…き~よめた~まえ~」とか歌うのに併せ、俺達も唱和する。
なんかもうホント、ごめんなさいって感じなんだけど、俺達は至って真剣。
以前の地鎮祭の時には、こんなのでもちゃんと神子の浄化能力を張り巡らせて、神竜様を中心に、浄化と癒やしの魔力を、粉雪を降らせるように一面に降りそそがせた。
今回はそのプログラムを、結界を張る魔法を展開する工程に差し替えた訳だ。
この神子舞いの時には、結構ギャラリーがしんと静まりかえって、我々の祝詞(?)というか祈りの声とウィンドチャイムの音が、草原を微かにさやぐ風の音と遠い野鳥の声に混じるのみで、それがきっと彼らの心にも神聖に響いたのだと思う。
終わってお辞儀をした瞬間に喝采がおき、ちょっと気恥ずかしかった。
そしてお偉いさん(リオネス様と大臣達と義兄)のご挨拶があり。
その場に集まった人々に温泉まんじゅうを配って、儀式はお開きになった。
取材もかなり入って居たようで、やはり翌日の紙面では概ね大きく報じられていた。
仙元さんと榊さんは、いずれも特定の住所は持っていない。
異世界人保護条約機構の拠点が置かれている、メーゲンカルナという秘境に常駐しているが、大陸のあちこちに散らばっている転生者や、老齢となって実質活動はしてない召喚者の元を点々と移動している。
ただ、今回の件でラグンフリズ王国は、彼らの滞在用に、王都にタウンハウスを用意した。
何度も行ったり来たりするのは大変だろうという事だった。
無論、彼らは転移が自在に出来るのだということは知っているから「もし良ければお使い下さい」くらいの軽さで差しだしたものだ。
戸建ての邸を用意するのでは無く、タウンハウスにしておいたという所で押しつけがましくならないよう配慮したのだと思う。
お邸なんか用意したら、ただでさえ俺という神子がいるのだから、ラグンフリズ王国は神子を悉く囲い込もうとしている、と言われかねない。
ただ、仙元さんは実は妻子持ちなのだ。
奥さんは転生者で、実は出自がちょっと複雑故に、メーゲンカルナの機構拠点に身を寄せている。お子さんは騎士団に就職済みだ。
榊さんはコモ王国を出た後、あちこちの国で治癒師として活動していた事で、行った先行った先の神殿に転がり込む癖が付いていたらしい。
それでも、タウンハウスは彼らにはかなり気軽に利用出来るねぐらとして、便利だったようだ。
榊さんは昨今増える和菓子の注文に応えるべく、厨房を自分仕様にどんどん改造してるらしい。
あの儀式以降、他国からも注文が入るようになって来ているらしい。
そろそろ義兄が動き出しそうだ。
その後、いよいよ道路の敷設作業がサクサクと進められていった。
俺達は三日おきくらいにお供物を捧げに通っている。
暖かくなってくると、腐敗や虫などが心配だから、うっすらと防止の結界を施したし、テントを取り付けて日陰にするようにした。
ラグンフリズ王国は気候的に、あまり暑くはならない。
北海道くらいの感じだろうか。
冬場は地熱が高く、他の地域ほどには積雪が見られなかったが、だからといって夏は、他よりも暑いという事も無い。山間部の涼しい風が吹いてくる。
もともと、何も無かった原野を整備する作業が多かった事もあり、街道の敷設作業は夏が終わる前には温泉地の拠点たる別荘建造予定地まで届きそうだった。
それとは別に、運搬用飛竜を使って運べるものや、土地の整備を担う作業員などは、先に予定地に運び込み、上下水道や土台作りなどを進め始めていた。
わくわくして、俺はミランを伴って度々進捗を覗きに行った。
勿論その際には祭壇にお参りしてお供物も捧げた。
ただ。
その時に。うすうすそうなんじゃないかとは思っていたんだけど。
やっぱり。
ヌシ様は覚醒しているのではないかと感じるようになって来た。
穏やかな気配ではある。
でも、最初にその気配を感じたときのように、深い眠りに沈んでいる感触では無い。
緩やかな鼓動を感じる。
一度、ディアナが上空を旋回して、なかなか降下しなかった事がある。
圧倒的な何かの気配を感じて、怯えていたかのようでもあった。
その日は降りずに、一旦ホームに戻してから、転移で改めて来た。
後日、俺とマクミランは連れ立って近隣の古老に、ヌシ様が覚醒した場合、何をすべきか、何が禁忌なのか、注意事項を聞き取るために回った。
古老達はほぼ口を揃えて、「神子様達は常に神竜様を崇めていらっしゃいます。そのお気持ちはきっと神竜様には伝わっているはずです」と言って、全く否定的な事を言われなかった。
けど、神聖なものを畏れる気持ちを抱く人間ばかりではない。
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