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・before 回想編 “Day0”
0-1.
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―ー時は遡る。
これは青年が屋敷に来るまでと屋敷での最初の数日間のお話――
「着いたぞ。ここだ」
弥助青年は乱暴に車から引き下ろされた。彼の両脇に一人ずつ屈強な黒服の男がついている。脱走を警戒してのことだろう。しかし、彼の両手首にはがっちりと強くはめ込まれた手錠があり、彼の首元にも鎖に繋がれた首輪がはめ込まれている。この状態で逃げおおせるのは至極困難だ。
首輪に繋がれた鎖は、いかにも黒服たちの中心人物らしい男の手の中にある。彼もゆったりとした動作で車をおりた。
「ここは……?」
彼の後について少年が降りてくる。輸送されてくる途中で知り合った彼はうら若く健康的な肌をワイシャツからのぞかせていたが、それを真っ白にして車内で震えていた。怯えている彼に話しかけたのは青年だった。彼はまだ自分がこんな状況になっても希望を失ってはいなかった。いつか自由を手にし、誰かの支配から逃げおおせることだけを考えていた。
彼も手錠に首輪という拘束がなされ自由がきかない。しかし、それでめげる青年ではなかった。じっと息を殺して逃亡の機会を狙っていた。
「すごい、大きい」
歩けと黒服たちに促されて、青年と少年は屋敷まで続く広い敷地の中を歩いた。薄汚れたスニーカーが音を立てる。その一歩一歩は確実に檻へと向かうカウントダウンだ。見えてきた黒い瓦の立派な建物に少年は状況さえ忘れて、ため息を着いた。
「入れ」
黒服たちの指示で彼らは室内にねじ込まれる。通された部屋で待っていたのは、やけに立派な高級スーツを見事に着こなした男だった。どことなく軽薄な印象を受ける彼の纏っていた雰囲気はこの場の誰ともかけ離れていて、青年を圧倒させるものだった。
彼は優雅に椅子に腰かけながら、青年と少年へと視線を送る。
「この間のオークションでせり落としたやつだな」
いかにも何でもないという男の口調に男に見とれていた青年は、はっと我に返った。
「ようこそ」
冷たく平坦なことばを放たれる。
藤滝美苑。裏社会のボスという風格を備えているが、彼はまだ家を継いでいない。藤滝家次期当主としての立場であれこれと遊びまわっているという噂を聞いているが、遊び好きには見えない風貌だと青年は彼を見て思った。
金は命より重い。膨れ上がった借金はその命で返せなくてはならない。取り立てることができるのは、数字ではなく肉体と精神とそしてその生命だった。
だまされて闇オークションへの契約を結んでしまった青年――いや、弥助は、彼にブラックケースで買われたのだ。
これは青年が屋敷に来るまでと屋敷での最初の数日間のお話――
「着いたぞ。ここだ」
弥助青年は乱暴に車から引き下ろされた。彼の両脇に一人ずつ屈強な黒服の男がついている。脱走を警戒してのことだろう。しかし、彼の両手首にはがっちりと強くはめ込まれた手錠があり、彼の首元にも鎖に繋がれた首輪がはめ込まれている。この状態で逃げおおせるのは至極困難だ。
首輪に繋がれた鎖は、いかにも黒服たちの中心人物らしい男の手の中にある。彼もゆったりとした動作で車をおりた。
「ここは……?」
彼の後について少年が降りてくる。輸送されてくる途中で知り合った彼はうら若く健康的な肌をワイシャツからのぞかせていたが、それを真っ白にして車内で震えていた。怯えている彼に話しかけたのは青年だった。彼はまだ自分がこんな状況になっても希望を失ってはいなかった。いつか自由を手にし、誰かの支配から逃げおおせることだけを考えていた。
彼も手錠に首輪という拘束がなされ自由がきかない。しかし、それでめげる青年ではなかった。じっと息を殺して逃亡の機会を狙っていた。
「すごい、大きい」
歩けと黒服たちに促されて、青年と少年は屋敷まで続く広い敷地の中を歩いた。薄汚れたスニーカーが音を立てる。その一歩一歩は確実に檻へと向かうカウントダウンだ。見えてきた黒い瓦の立派な建物に少年は状況さえ忘れて、ため息を着いた。
「入れ」
黒服たちの指示で彼らは室内にねじ込まれる。通された部屋で待っていたのは、やけに立派な高級スーツを見事に着こなした男だった。どことなく軽薄な印象を受ける彼の纏っていた雰囲気はこの場の誰ともかけ離れていて、青年を圧倒させるものだった。
彼は優雅に椅子に腰かけながら、青年と少年へと視線を送る。
「この間のオークションでせり落としたやつだな」
いかにも何でもないという男の口調に男に見とれていた青年は、はっと我に返った。
「ようこそ」
冷たく平坦なことばを放たれる。
藤滝美苑。裏社会のボスという風格を備えているが、彼はまだ家を継いでいない。藤滝家次期当主としての立場であれこれと遊びまわっているという噂を聞いているが、遊び好きには見えない風貌だと青年は彼を見て思った。
金は命より重い。膨れ上がった借金はその命で返せなくてはならない。取り立てることができるのは、数字ではなく肉体と精神とそしてその生命だった。
だまされて闇オークションへの契約を結んでしまった青年――いや、弥助は、彼にブラックケースで買われたのだ。
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