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・Day5/Chapter6 水揚げには違いない(3)

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 あれから、どのくらい時間が経ったのだろうか。強すぎる快楽に気を失うたびに、気付けで目を無理矢理、起こされて、その場にだされ続けた。
 ふと薄く目を開けてみれば、己をなぶっていた男たちの姿はない。
 去ったのか。
 体中に吐き出されたものがこびりついて、あちこちが痛む。後ろはひきつるくらい強烈な感覚で、まだ中にものが入っているかのような――。
 ふと人の気配がした。
 青年は、身をこわばらせた。
 逃げようと思っても、もうこの身体ではどうすることもできない。
 その人物は、迷わず倒れている青年のもとに来ると、彼の前で膝を折ってひざまずいた。
 手が伸びてくる。
 汗で張り付いた前髪に触れて、額へ、そして頬。何度も雄をくわえて、疲れ果てた顎へと降りていくと、ふっと、手に触れられている感触は消えた。
 次に、唇に何かが当たった。
 ふっと熱く、それでいて優しい、何か。
 行為の名前が浮かぶ前に、青年は意識を落として、奈落の底へと落ちていった。



「始末をつけて運んでおけ」
「は、はい」
 主人に呼び出された使用人はうやうやしく深々と礼をとった。
「帰り際、客どものはしゃぎぶりが尋常ではなかった」
「そうでございますか。……ご主人さま」
 藤滝の無言でじっと何かを考えこむような様子に、使用人はかの主人を見上げた。
「どうなさりましたか?」
「……いや、なんでもない。さっさとしろ」
「はい。御意のままに」
 ばたばたと使用人が働きだしたのを確認すると、彼は、部屋を出て、自室を目指して歩きだした。
 どこか胸が重たい。
 後悔、なわけはない。
 だが、どこか――。
「ご主人さま、おかえりなさいませ」
 自室前の廊下で芹那とすれ違った。
「今日は出なかったのか?」
 声をかければ、彼はさっと地について深い礼の姿勢を取った。
「いいえ。お相手させていただきました」
「そうか。早かったのだな」
「はい」
「どうしてここにいる?」
「その……」
「あいつか?」
「は、はい」
 青年が気になって見に来たのだろう。藤滝は冷笑した。
「次はお前にも、いい客・・・を付けてやる」
「は……はい。ありがとうございます」
 芹那は藤滝の意図を読み取って震えながらも、そう答えた。
 そうだ。
 藤滝は思う。
 こうでなくてはならない。
 己を絶対主人としてあがめ、己のことばを絶対として受けとめ、たとえそれが受け入れられるものでないとしても、ありがとうございます、と頭を下げる――。
 嬲られればすぐに声をあげて、快楽にまけて、頭を地面に擦りつけるくせに、最終的にはそういうものが、あいつのは足りないのだ、と。
「下がれ」
 低く命じれば、少年はそそくさと立ち去っていく。
 その背中をじっと彼は見ていた。
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