165 / 286
・地下室調教編(Day7~)
三日目 1-1
しおりを挟む
地平線を、太陽が乗り越えようとしていた。もうすぐ日が昇る。まだ、眠りについている者も多いなか、男は仕立てのよいスーツに身を包み屋敷の外から現れた。
「おかえりなさいませ」
主人の帰宅に、使用人たちは集まり平伏する。男は何も言わずに、さっと表の自室へと、向かう。
「いかがでしたか?」
使用人たちがそれをそそくさと追う。ひとりが彼にたずねてきた。
「あまり良くないな」
男は何事もなかったかのように平坦な口調で答えた。
「あのくそじじいどもの相手だぞ。口だけは大きいくせに、自分から動こうともしない……」
「お疲れさまでございます」
「まったくだ。親父もあんなやつらを下につけていてよく……」
言いかけていたことばを藤滝は飲み込んだ。
「いや、よそう。それよりも、今日の仕度は整っているな」
「はい」
彼の身近にいた使用人が答えた。
「そうか。今日も頼んだ。上客は逃がすなよ」
「承知いたしました」
彼が声をかけた使用人がおそれおおいとばかりに、ふかぶかと頭を下げた。
「ご主人さま」
おずおずと、後ろに控えていた使用人が尋ねて来た。
「なんだ?」
「地下室に控えている脱走囚はいかがなさいますか」
「ああ、あれのことか……。心配いらない、俺が」
と、いいかけて彼は口をつぐんだ。
✿
がちゃりと、施錠されていた入口の鍵が開錠される音が聞こえた。青年は地下室に身を潜ませていたが、その身をゆっくりと上げた。
「また、メシの時間か?」
軽口がたたけるくらいには、回復している。靴音をたてながら入って来た二人の黒服。トレーを持った使用人の二人組の登場であった。
青年の状態を見て、ふたりは目を想定外だとばかりに、目を丸くしていたが、さっそく自分たちの仕事にとりかかった。
「やらなければならないことはわかっているな」
青年にとえば、しかたねえとばかりに、腰をあげて、彼がちかづいてくる。
今日はやけに従順だ。
使用人の前にしゃがみこむ青年に、使用人は安堵したようだったが、次の瞬間。
「くっ!」
青年が前にしゃがんだ使用人がうめいた。
「おかえりなさいませ」
主人の帰宅に、使用人たちは集まり平伏する。男は何も言わずに、さっと表の自室へと、向かう。
「いかがでしたか?」
使用人たちがそれをそそくさと追う。ひとりが彼にたずねてきた。
「あまり良くないな」
男は何事もなかったかのように平坦な口調で答えた。
「あのくそじじいどもの相手だぞ。口だけは大きいくせに、自分から動こうともしない……」
「お疲れさまでございます」
「まったくだ。親父もあんなやつらを下につけていてよく……」
言いかけていたことばを藤滝は飲み込んだ。
「いや、よそう。それよりも、今日の仕度は整っているな」
「はい」
彼の身近にいた使用人が答えた。
「そうか。今日も頼んだ。上客は逃がすなよ」
「承知いたしました」
彼が声をかけた使用人がおそれおおいとばかりに、ふかぶかと頭を下げた。
「ご主人さま」
おずおずと、後ろに控えていた使用人が尋ねて来た。
「なんだ?」
「地下室に控えている脱走囚はいかがなさいますか」
「ああ、あれのことか……。心配いらない、俺が」
と、いいかけて彼は口をつぐんだ。
✿
がちゃりと、施錠されていた入口の鍵が開錠される音が聞こえた。青年は地下室に身を潜ませていたが、その身をゆっくりと上げた。
「また、メシの時間か?」
軽口がたたけるくらいには、回復している。靴音をたてながら入って来た二人の黒服。トレーを持った使用人の二人組の登場であった。
青年の状態を見て、ふたりは目を想定外だとばかりに、目を丸くしていたが、さっそく自分たちの仕事にとりかかった。
「やらなければならないことはわかっているな」
青年にとえば、しかたねえとばかりに、腰をあげて、彼がちかづいてくる。
今日はやけに従順だ。
使用人の前にしゃがみこむ青年に、使用人は安堵したようだったが、次の瞬間。
「くっ!」
青年が前にしゃがんだ使用人がうめいた。
33
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる