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・地下室調教編(Day7~)

三日目 1-5

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「だから、俺として、お願いだ」
 ばっと、滝田が、青年の目の前にひれ伏した。
「頼む。協力して欲しい。きみが逃げるというのなら、それをとめることはできないが、頼む! まだここにとどまって、俺のちからになってくれないか」
「や、やめてくれ……」
 必死に額に地面をこすりつけはじめる滝田に、青年は慌ててそれを制止させようとした。
「俺も、わかった。まだ、この屋敷の周辺のことに全然、気が付いていなかった。だから、ただ単身で逃げ出しても、どうにもならないかもしれないってこと……だから……」
「協力してくれるのか!?」
「う、だから、まだ信用が……、でも、ギブアンドテイクだ。あの部屋が監視されていると、教えてくれたから」
「ああ、ありがとう」
 滝田が、全力で、青年の手をとった。
「よしてくれ。そんなにおおげさな。……ところで、やけに静かじゃないか」
「へ?」
「あの部屋、みられているから、俺が姿を消したというのが館側もわかっているはずだ。それなのに、やけに静かだ」
「ああ。それなら……」
 にやりと笑って滝田が言った。
「いま、仕掛けが作用しているところだ」





 地下室からつづく廊下でふたりの使用人が話し合っていた。
「くそ、どうする!? ご主人さまに、なんと報告したらいい!?」
「ばか、言うなよ。言ったら、俺たちの一巻のおわりだ」
「だが、一体なぜ……薬をつかっていたと、聞いていたのに」
「ああ、あんなにも元気だとは、思っていなかった……」
 廊下はいくつもの地上への入口に通じている。そのうち、倉庫への扉をつかってやつは逃げた。
 それがあのおかたにバレたら、どんな目にあうだろうか……。
 さいわい、監視下に置かれているはずの地下室の異変にまだ館は気が付かないでいる。
 ふと、足音がした。
 彼らは息をのんだ。
「よお」
 彼は片手をあげて、こちらへと歩んできた。
「な……っ!!」
 使用人たちはくちを開けた。
 取り逃がしたとばかり思い込んでいた、青年が姿を表したからだ。階段をおりてふたたび、地下の世界へとおりてきた、青年に、彼らは何度もまばたきをした。信じられないとさえ思った。
「どうしたんだよ」
 青年は、笑いを噛み殺しながら言った。なるべく平然を装って。
「どうせ、あいつもそろそろ来るんだろ? 早く戻ってあいつの世話・・でもしてやらねえとな」
 ぽかんとしている使用人を一瞥したあと、青年は自ら部屋へと戻っていく。

 さあ、来い、藤滝美苑。
 勝負はここからだ。
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