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・地下室調教編(Day7~)
三日目 2-1
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――遡ること、数分前。
「俺も、わかった。まだ、この屋敷の周辺のことに全然、気が付いていなかった。だから、ただ単身で逃げ出しても、どうにもならないかもしれないってこと……だから……」
「協力してくれるのか!?」
「う、だから、まだ信用が……、でも、ギブアンドテイクだ。あの部屋が監視されていると、教えてくれたから」
「ああ、ありがとう」
「よしてくれ。そんなにおおげさな。……ところで、やけに静かじゃないか」
「へ?」
「あの部屋、みられているから、俺が姿を消したというのが館側もわかっているはずだ。それなのに、やけに静かだ」
「ああ。それなら……」
「いま、仕掛けが作用しているところだ」
仕掛け? 青年が問い直そうとしたところだった。
「――ッ!!」
急に青年が前かがみになって、息をつめた。
「どうした?」
不思議に思って、滝田が尋ねてくる。
「いや……なんでも……」
そう答えるが、青年の額からは大粒の汗が滲みでてきていた。それどころか、頬が紅潮している。
「……あちらの仕掛けだな」
ぽつろと、滝田がつぶやいた。
「正直に言え。大変なんじゃないか?」
浅く息があがりはじめ、もじもじと、太ももを動かし始めた青年に対して滝田が問う。
「……っ」
言えるわけがない。
青年は唇をかみしめた。
「盛られたのは、どこだ?」
だが、そんな青年の心情をこの男はわかっていなかった。
「あの男のことだ、どうせ遅延で効いてくるやつをしこんでおいて、今日のいたぶりに使おうとでも思っていたんじゃねえか?」
「いたぶり……」
「おっと、知らないよな。今日は、例の上客たちが、屋敷にやってくる。その合わせに誰を配置するのか、藤滝は名言していない。おそらく、お前さんを引き出す寸断じゃないかってな……」
青年の唇が震えた。
「前にもあったらしいんだ。ここで、こっぴどく折檻したあとに、客の前に出して、そこで責めて、所有を認めさせるっていう手が」
「そうか……っ」
青年は、びくりと肩を震わせた。我慢できずに、腰が動いてしまう。
「そんなにひどいのか。いま、ものすごく色っぽい顔している」
滝田に指摘されて、彼の頬の色がさらに濃くなった。
「っ、うるさい」
「どこをやられた? ん?」
「聞くな」
「そういうなよ。仲間だろ? な?」
だれが、仲間だ。まだ完全に滝田のことを、信用しきっているわけではないというのに。
「俺ならなんとかできるかもしれない。周りの眼が離れたすきに、いろいろとちょこまかしているからな」
だが――。
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