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・地下室調教編(Day7~)
・幕間
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暗闇に満ちた部屋で、誰かがうごめく気配をみせた。かすかに人影が揺れて、ゆっくりと窓辺へと歩み寄る。
その男は、夜に冷えた窓ガラスにそっと手を添えた。指先からじんわりと冷気が伝わってくる。
暗闇は好きだ。
彼はそう思った。
何もみえねばみえぬほど、よりよい。
彼の胸が大きく膨らみ、そしてしぼんだ。こうして、息をするのも、誰に見られるわけではないこの暗闇が一番好きだ。
終了した宴の後始末は、使用人たちにまかせてある。男はため息をついた。彼の体内にたまりたまっていたものが空気に溶けて、すこしずつ逃げていく。
否。
それで逃げられるわけではないことくらい男はわかっている。
この肉体の髄にまで沁み込んだものは、そう簡単に彼を楽にはしてくれない。
血。
そして、肉。
骨の周囲にまとわりついて、離れないものに、まだ、男は捕らわれていた。
「ご主人さま」
廊下から光がさしこんできた。
「ご支度が整いました」
その光をバックに黒服の男が、丁寧に礼をしている。
「ああ、わかった」
男の声は冷たい夜のなかをただよった。
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