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・屋敷編
Thuー10
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ここであの男が――。
頭のなかにぼんやりと、ここで行われたであろうことを想像してしまい、慌てて青年は頭を振った。想像しかけただけで、変な気分になりそうだった。
「……あいつ」
そりゃ彼のような存在が青年以外の人間を抱いていてもおかしくはないだろう。彼なら選り取り見取り状態に違いない。それに青年以外の相手をしてはならないという決まりもない。むしろ、決まり事をつくっているのはあの男のほうだ。だから、決して、これは――。
「なんだよ、くそ」
何故か腹立つ。むしゃくしゃしたとても嫌な感情だ。青年は枕を蹴った。それはぽんと宙を舞って床に落ちた。拾おうとして、ふらりと身体を崩した。青年は行為のあった布団の上に倒れ込んだ。痛くはない。それはやわらかい布団の上に落ちたのだから。だが、青年はそこから動けなくなった。
「……っ」
前がじんじんとうずく。藤滝の匂いが微かに残っている。それが別の男のものと混ざり合って鼻につく。息をとめたくなったが、呼吸はし続けなくてはならない。それよりも、息が荒くなる。
もじもじと太ももを動かしていた青年だったが、熱く主張してくるそれに耐えきれずに手を伸ばした。誰も見ていない。誰もいない。そのことが気を許した。こんな姿、誰にも見せられやしない。自分でさえ、認めたくない。
口元から艶めいた声がもれはじめる。指が触れた自分の場所は、硬くなりつついただけで震えた。
頭のなかにぼんやりと、ここで行われたであろうことを想像してしまい、慌てて青年は頭を振った。想像しかけただけで、変な気分になりそうだった。
「……あいつ」
そりゃ彼のような存在が青年以外の人間を抱いていてもおかしくはないだろう。彼なら選り取り見取り状態に違いない。それに青年以外の相手をしてはならないという決まりもない。むしろ、決まり事をつくっているのはあの男のほうだ。だから、決して、これは――。
「なんだよ、くそ」
何故か腹立つ。むしゃくしゃしたとても嫌な感情だ。青年は枕を蹴った。それはぽんと宙を舞って床に落ちた。拾おうとして、ふらりと身体を崩した。青年は行為のあった布団の上に倒れ込んだ。痛くはない。それはやわらかい布団の上に落ちたのだから。だが、青年はそこから動けなくなった。
「……っ」
前がじんじんとうずく。藤滝の匂いが微かに残っている。それが別の男のものと混ざり合って鼻につく。息をとめたくなったが、呼吸はし続けなくてはならない。それよりも、息が荒くなる。
もじもじと太ももを動かしていた青年だったが、熱く主張してくるそれに耐えきれずに手を伸ばした。誰も見ていない。誰もいない。そのことが気を許した。こんな姿、誰にも見せられやしない。自分でさえ、認めたくない。
口元から艶めいた声がもれはじめる。指が触れた自分の場所は、硬くなりつついただけで震えた。
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