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・屋敷編
Thuー16
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「覗きじゃないですよ。部屋に戻ってみれば、おふたりが、勝手に始めていらしたので、部屋に戻るタイミングを失ってしまっただけです」
落ち着き払った口調で返って来たことばに青年はドキリと胸をはずませた。この部屋に住まう者が戻ってきて室内にいたふたりの前に姿を現した。
「ずいぶんとお楽しみのようで」
顔色ひとつ変えず戻って来た朋華に藤滝が苦笑しているのを、青年は見た。あの、冷徹な男の小さな表情の変化に、少し驚く。
「お前も楽しんでいくか?」
「売り物にならなくなりますよ?」
身体の上に乗っていた体重が離れていく。青年は、起き上がった。
「可愛いからとお戯れになられるのも、少々問題があると思いますがね」
「どうだか」
朋華と話す藤滝の口調からは、普段の氷のような冷たさが消えている。何故か心臓に小さな棘が刺さったような胸の痛みが走った。
「しないなら離せ」
男がいまだに青年の手首をつかんでいた。それをふりはらおうとしたが、彼はびくともしない。
落ち着き払った口調で返って来たことばに青年はドキリと胸をはずませた。この部屋に住まう者が戻ってきて室内にいたふたりの前に姿を現した。
「ずいぶんとお楽しみのようで」
顔色ひとつ変えず戻って来た朋華に藤滝が苦笑しているのを、青年は見た。あの、冷徹な男の小さな表情の変化に、少し驚く。
「お前も楽しんでいくか?」
「売り物にならなくなりますよ?」
身体の上に乗っていた体重が離れていく。青年は、起き上がった。
「可愛いからとお戯れになられるのも、少々問題があると思いますがね」
「どうだか」
朋華と話す藤滝の口調からは、普段の氷のような冷たさが消えている。何故か心臓に小さな棘が刺さったような胸の痛みが走った。
「しないなら離せ」
男がいまだに青年の手首をつかんでいた。それをふりはらおうとしたが、彼はびくともしない。
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