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結局、天体観測のイベントには、欠席の連絡を入れた。交通渋滞はその後、三十分後に徐々に前の車が動き出したことを契機に徐々に解消されていった。だが、どうしても、天体観測どころではなくなってしまった。
「お前が何か始めるといいことがまったくない」
松宮のマンションのリビング、ソファの上に伸びている門倉がそうぼやいた。今にも枯れ果てそうな門倉に対して、松宮は血色のいい頬を薔薇色に染めて言った。
「そんなこと、いってぇ~! もうダーリンったら! 超ノリノリだったくせに~!」
渋滞解消後、松宮の部屋に飛び込んでそのまま玄関で、一発。その後、寝室に雪崩こんで……と、行為の数々を指折り数えながら、にこにこと語る門倉に、松宮は、大きくため息をついた。
「黙れ」
力ない門倉の声に松宮が答える。
「はい、キスで黙らせてほしいってことですか! きゃー!」
「変なことは考えんでいい。もう疲れた、寝る」
「ここで、寝ると風邪、ひきますよ。さ、俺の腕のなかで!」
「風邪よりもっと厄介な何かをひきそうだから、遠慮しておく」
「も~! ダーリンってばぁ」
こんなことでいいんだろうか。門倉は、そう考えたが、もう疲れて頭が動かない。まあ、いいや。もう、どうせ、こいつと過ごす毎日っていうのは、きっと、こういう味付けなのだろう。
(了)
「お前が何か始めるといいことがまったくない」
松宮のマンションのリビング、ソファの上に伸びている門倉がそうぼやいた。今にも枯れ果てそうな門倉に対して、松宮は血色のいい頬を薔薇色に染めて言った。
「そんなこと、いってぇ~! もうダーリンったら! 超ノリノリだったくせに~!」
渋滞解消後、松宮の部屋に飛び込んでそのまま玄関で、一発。その後、寝室に雪崩こんで……と、行為の数々を指折り数えながら、にこにこと語る門倉に、松宮は、大きくため息をついた。
「黙れ」
力ない門倉の声に松宮が答える。
「はい、キスで黙らせてほしいってことですか! きゃー!」
「変なことは考えんでいい。もう疲れた、寝る」
「ここで、寝ると風邪、ひきますよ。さ、俺の腕のなかで!」
「風邪よりもっと厄介な何かをひきそうだから、遠慮しておく」
「も~! ダーリンってばぁ」
こんなことでいいんだろうか。門倉は、そう考えたが、もう疲れて頭が動かない。まあ、いいや。もう、どうせ、こいつと過ごす毎日っていうのは、きっと、こういう味付けなのだろう。
(了)
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