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✿バブル・パニック
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疲れた。
どっしりと重たい足を運びながら、ようやく帰ってきた安アパートの一室。
ラージャは、玄関でへたり込みそうになる自分を励ましながら、浴室を目指す。
がばっと無造作に脱ぎしてたシャツを籠にも放り込まずに床に放置する。
シャワーを浴びる前に寝るわけにはいかない。
浴室へのドアを開けた途端。
「へ?」
疲労でへろへろになっているラージャの瞳に飛び込んできたのは、まず金色。まばゆいばかりの黄金だった。
「な、なななな!!!!」
それが何であるか、ワンテンポ遅れて脳が理解した。
長い金色の髪は絹のように男の細い肩の上を流れている。水気を含んで彼の頬に張り付いている一房を手で乱暴にどかしながら、ラージャのほうを振り向いた彼が不敵な笑みを浮かべた。
「ヘイ! お帰り!!」
薄い唇から発せられたその言葉がラージャの凍りついた理解力をだんだんと溶かしていく。
「え、ええええ、エルゥ!!!!」
そう。扉を開けた先にいたのは、泡に包まれた状態の全裸のエルガー、彼の仕事上の相棒だった。
普段はハーフアップにしている長い髪をほどき、真っ白い肌をさらしたままの、相棒。
服を着ている状態では、ただ細いだけだと思っていた彼の肉体は程よく筋肉がついている。
だが、それらのしなやかな筋肉の上には泡立ったボディソープが白い衣のように乗っかっている。
湯気と蒸気と泡にかろうじて隠された姿は極めて際どい。
だがそれより。
「え、える? なんでここに?」
「なんでって、ここ、お前んちだろ? あんなちゃちな鍵穴じゃ、簡単にほぐしてやれるぜ?」
彼の浮かべる不敵な笑み。本人に挑発の意思はないと分かっているのだが、エルガーのこのような笑いにラージャはたじろぐ。
彼から彼独特の色気が滲み眼差しに挑戦の色味が混じっているような気がして、その場から動けなくなる。
だが、彼の返した言葉では、全然、ことの回答になっていない。それよりも、気になること単語がぽんと飛び出てきたので驚くラージャ。
「鍵!? まさか勝手に開けたのか!?」
「そう」
「そうじゃなくて!!」
そういえば疲れていて、全く気が付かなかった。鍵を鍵穴に入れてから部屋に入っただろうか? いや――。
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと弁償する。それにもし侵入者が来ても安心だぜ、ラージャ」
どこが安心だ。第一、お前が一番の侵入者だ。
「このぼくが不審者からお前を守ってやれるからな!!」
自信満々に胸を張るエルガー。頼む、ここにいる。お前という不審者が。
あまりにも突然の展開にラージャはへたり込んだ。
「お前は一体、どうしてこう神出鬼没なんだ……」
「神でも鬼でもお前のための神鬼だぜ、ぼくは」
「そういうことを言ってるんじゃない。どうして風呂に入っているんだ」
「なんでって、ぼくんちのシャワー出なくなった」
「は?」
「だから、ラージャんち行けばどうにかなるかなぁって。あ、そうそう、背中流すか? それとも……前から?」
「要らない、自分でやる」
「わあお、つまんねぇの」
「いいから早く出ろって」
「了解」
「わっ、馬鹿!! 泡つけたまま出てくんな!! ちゃんとボディソープを流してからにしろ!!」
「ああ言えば、こう言うってやつだな、ラージャ」
「お前が言わせているんだろうがぁ!!!!」
ばっと、ラージャはうつむいていた頭をあげた。
今まで突発展開に追いついていけず、さっぱり忘れていたが、エルガーもラージャ自身も――全裸だった。
「うぎゃあああああ!!!! 流すな!! 流すな!!」
シャワーをオンにしたエルガーが自身の身体に温水をかけ始めた。
彼の肉体を覆っていた白い泡が流れ落ちて、だんだんと彼の身体をさらしだしていく。
「なんだよ、流せってお前が言ったんだろ?」
「言った、言った!! 言ったが、俺の目の前で流すな!!」
慌てて風呂場の扉を閉めるラージャ。それでもこの扉一枚を隔てた場所に生まれたままの姿のエルガーがいるというのは、何とも。
「バカバカバカバカ、馬鹿すぎるだろ!!!!」
エルガーのせいでさっきまでの疲労など吹き飛んで行ってしまった。
ただ、これからこの非常事態をどう乗り越えていけばいいのか。考えなくては。
ああ、頭が痛い。
(了)
どっしりと重たい足を運びながら、ようやく帰ってきた安アパートの一室。
ラージャは、玄関でへたり込みそうになる自分を励ましながら、浴室を目指す。
がばっと無造作に脱ぎしてたシャツを籠にも放り込まずに床に放置する。
シャワーを浴びる前に寝るわけにはいかない。
浴室へのドアを開けた途端。
「へ?」
疲労でへろへろになっているラージャの瞳に飛び込んできたのは、まず金色。まばゆいばかりの黄金だった。
「な、なななな!!!!」
それが何であるか、ワンテンポ遅れて脳が理解した。
長い金色の髪は絹のように男の細い肩の上を流れている。水気を含んで彼の頬に張り付いている一房を手で乱暴にどかしながら、ラージャのほうを振り向いた彼が不敵な笑みを浮かべた。
「ヘイ! お帰り!!」
薄い唇から発せられたその言葉がラージャの凍りついた理解力をだんだんと溶かしていく。
「え、ええええ、エルゥ!!!!」
そう。扉を開けた先にいたのは、泡に包まれた状態の全裸のエルガー、彼の仕事上の相棒だった。
普段はハーフアップにしている長い髪をほどき、真っ白い肌をさらしたままの、相棒。
服を着ている状態では、ただ細いだけだと思っていた彼の肉体は程よく筋肉がついている。
だが、それらのしなやかな筋肉の上には泡立ったボディソープが白い衣のように乗っかっている。
湯気と蒸気と泡にかろうじて隠された姿は極めて際どい。
だがそれより。
「え、える? なんでここに?」
「なんでって、ここ、お前んちだろ? あんなちゃちな鍵穴じゃ、簡単にほぐしてやれるぜ?」
彼の浮かべる不敵な笑み。本人に挑発の意思はないと分かっているのだが、エルガーのこのような笑いにラージャはたじろぐ。
彼から彼独特の色気が滲み眼差しに挑戦の色味が混じっているような気がして、その場から動けなくなる。
だが、彼の返した言葉では、全然、ことの回答になっていない。それよりも、気になること単語がぽんと飛び出てきたので驚くラージャ。
「鍵!? まさか勝手に開けたのか!?」
「そう」
「そうじゃなくて!!」
そういえば疲れていて、全く気が付かなかった。鍵を鍵穴に入れてから部屋に入っただろうか? いや――。
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと弁償する。それにもし侵入者が来ても安心だぜ、ラージャ」
どこが安心だ。第一、お前が一番の侵入者だ。
「このぼくが不審者からお前を守ってやれるからな!!」
自信満々に胸を張るエルガー。頼む、ここにいる。お前という不審者が。
あまりにも突然の展開にラージャはへたり込んだ。
「お前は一体、どうしてこう神出鬼没なんだ……」
「神でも鬼でもお前のための神鬼だぜ、ぼくは」
「そういうことを言ってるんじゃない。どうして風呂に入っているんだ」
「なんでって、ぼくんちのシャワー出なくなった」
「は?」
「だから、ラージャんち行けばどうにかなるかなぁって。あ、そうそう、背中流すか? それとも……前から?」
「要らない、自分でやる」
「わあお、つまんねぇの」
「いいから早く出ろって」
「了解」
「わっ、馬鹿!! 泡つけたまま出てくんな!! ちゃんとボディソープを流してからにしろ!!」
「ああ言えば、こう言うってやつだな、ラージャ」
「お前が言わせているんだろうがぁ!!!!」
ばっと、ラージャはうつむいていた頭をあげた。
今まで突発展開に追いついていけず、さっぱり忘れていたが、エルガーもラージャ自身も――全裸だった。
「うぎゃあああああ!!!! 流すな!! 流すな!!」
シャワーをオンにしたエルガーが自身の身体に温水をかけ始めた。
彼の肉体を覆っていた白い泡が流れ落ちて、だんだんと彼の身体をさらしだしていく。
「なんだよ、流せってお前が言ったんだろ?」
「言った、言った!! 言ったが、俺の目の前で流すな!!」
慌てて風呂場の扉を閉めるラージャ。それでもこの扉一枚を隔てた場所に生まれたままの姿のエルガーがいるというのは、何とも。
「バカバカバカバカ、馬鹿すぎるだろ!!!!」
エルガーのせいでさっきまでの疲労など吹き飛んで行ってしまった。
ただ、これからこの非常事態をどう乗り越えていけばいいのか。考えなくては。
ああ、頭が痛い。
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