みそっかすをふりほどけない

木偶舞屋🌷

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 陽光が頭上に来る時間。オフィスの中に納まっている為、実際に太陽の位置を確認は出来ないが、正直な腹時計が鐘を鳴らして教えてくる。
「うわ、お前、めっちゃ腹減ってんじゃん。それより飯、奢って」
 俺に飯をたかりに来た彼がせわしなく上体を揺らしている。
「やだ」
「けち」
 不満げに頬を膨らませる成人男性を無視して、パソコンの電源を落としデスクを立つ。その後をなおも彼が追いかけてくる。
 足の向かう先は食堂だ。午前中の疲れを癒しに来た社員たちでにぎわっている。その一角に空席を見つけた。
 彼の姿が消えたので、ふうとため息をひとつ吐いた。包みを広げて自作の弁当を頂く。
 だが、静寂な時間は長く続かなかった。
 カレーうどんの乗ったトレーを持って彼が再び現れ隣の席に堂々と座った。
「なんでお前こっち来るんだよ」
「一緒に食べようと思って。あ、それウズラの卵あげた奴じゃん。一口頂戴!」
「やだよ!」
「けち! またそういうこと言う!」
「お前なあ」
 子供のような言動の彼に呆れる。こいつは一体何歳なんだろう。
 昔から俺の後ばかりついて歩いてきた。何にも出来ないみそっかすの癖に。
「仕方ないな」
「おっ、くれるの?」
「言っとくが冷凍食品だぞ」
「いいって! ありがとう!」
 じっと見つめてくる彼の眼力に負けて、俺はおかずを彼に分けた。嬉しそうにうどんの上にとっぴくぐされたウズラの卵の揚げ物。
 ずずーっと麺と一緒に彼に飲み込まれていく。
「うわ! 汁、こっち跳んだ!」
「あはは、悪い悪い!」
 こんな馬鹿な奴、置いて行ってしまえばいいのに。それでも出来ない自分は一体なんなんだろう。
 (了)

ーーーー
✿当作は2019.12.22に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さんにお題『けち/「またそういうこと言う」』で創作したものです。
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