七月の花とBLの掌編

阿沙🌷

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✿7.26: 筏葛

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「おい、最近、お前変じゃねえか」
 さきの言葉にいかだは、はっとして顔を上げた。
 昼休み。他の生徒たちは思い思いに雑談にふけっている。
「ほらさ、ほっとくと筏の思考が別次元に飛んじゃうし。何か悩みでもあるのか?」
「な、ない」
 減らない弁当の中身。筏は詰め込み過ぎの食糧を無理に嚥下する。
「ぜったい嘘だね」
「咲、まじ俺、健康」
「そっかいなぁ」
 怪しいと睨んでくる咲から、筏は思考をそらした。
 彼がいま考えなくてはならないのは、筏の隣に座った小さな少年のことだ。
「なあ、筏! 食わないなら私にくれないか?」
 無邪気に語りかけてくるその少年――九重は、筏にしか見えない。
「やめとけ。どうせ、食えないだろ」
 周囲に聞こえないようにして小声で対応すると、九重は頬を風船のように膨らませた。
「えー、たーべーたーい! とくにこのたこさん」
「ウインナーだ」
「ええい! 陸の海産物よ!!」
「筏? ウインナーって??」
 小声で話していたのに、九重のやり取りに夢中で次第に声が大きくなってしまっていたらしい。咲の耳元に九重との会話――ただし九重の声は咲には聞こえていない――を聞かれてしまったらしい。
「い、いや、ウインナー入っているなぁと」
「おお、そうだね。つかタコじゃん」
「ああ、毎朝、妹が作ってくれるから」
「おおーいいなぁ筏ん家」
「そーですよ! みつるちゃんは筏と違って器用なんですからー!!」
 九重が咲に同調するかのように声を上げた。
「悪かったな、不器用で」
 筏は九重に向けてつぶやいた。
「え? 今、なんか言った?」
「あ、ううん。何でも。それより咲、お前、毎食それだな」
「おう、いつ食べても、焼きそばパンは美味しいぜ」
 にぎやかな昼食時ですら、自分にしか存在を察知できない存在がいると、どうしても――。
「どうしてのです? 筏」
 ううん。今度は絶対に返事しないぞ。
 筏は九重に視線を合わせて無言でそう思った。
 それでも伝わったか伝わらなかったのかはさっぱりわからない。

(了)

✿7月26日:
筏葛いかだかずらBougainvillea
 ブーゲンビリア。九重蔓ここのえかずらとも。花言葉は「情熱」「あなたは魅力に満ちている」「あなたしか見えない」。「あなたにしか見えない」をこじまげて妄想につなげました。……必死です。
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