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✿7.30:日々草
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「ねえ、やっぱあんた、他に好きな人がいるんでしょう」
水奈は草日に尋ねた。
彼女は草日に告白してきた一人であるが、彼が恋愛はまだ早いからと言って断ったのにも関わらず、相変わらず友達の座におりつつも時折思いを口にする稀有な女子だ。
「どういう意味?」
「そのまんまの意味。だって草日、教室の窓から外を眺めてぼんやりしていることあるでしょ。すごくせつなそうに」
「……」
「その時の横顔にあたし、惚れたんだよね」
「それはどうも」
「だけどさ、あたし、気が付いちゃった。ほんとはあんた好きな人がいるんでしょ」
「何を根拠に」
「だから、その人を見たくて窓から外見てんのかなぁって」
草日はふっと笑いをこぼした。
「だったら窓の外じゃなくて、その好きな人を見ればいいじゃないか?」
「でもさ、その人、会えないんじゃないの?」
思い切り笑ってやったのに水奈の反応があまりにも生真面目なもので、草日は急に固まった。
「それで。お前は何が言いたいんだ」
きっと強くまなざしを送れば、水奈は何かを言おうとした唇を引き締めた。そして、別の言葉を思案するようにしばしの沈黙を送り、口を開く。
「何も」
「何もってなんだよ」
「いいや。何でもいいや。やっぱり」
水奈がにこりと口元だけをゆるませて草日を見上げた。
こういうところが女のずるいところだ。草日は内心でそう思いながらも、同時に深く追及してこない水奈に感謝した。
「あ、やば」
水奈は着信に震えた携帯電話を取り出して驚いたように目を見開いた。
「ごめ。ちょっと用事できた。草日、それじゃあね」
そう言って駆け出して行った彼女の背中がどんどん小さくなっていく。
ふいに、彼の背中を思い出した。
また明日。そう言って笑って去っていた彼の背中がどんどん小さく、手の届かない距離にまで――。
思い出があるから苦しめられる。そこから一歩も動けなくなってしまう。
けれど、草日にとって彼でなくてはいけない、そんな存在があるのだ。胸中に彼を抱きしめて生きればいいと。
――だけどさ、あたし、気が付いちゃった。ほんとはあんた好きな人がいるんでしょ
草日の頭の中に、水奈の言葉が反響して響いている。
本当にそうなのか。
いや、そういうものなんだろう。きっと。
(了)
✿7月30日:
日々草Madagascar periwinkle
花言葉は「楽しい思い出」。小さい花が可愛いイメージ。お話に関してぱっと思いつくイメージがいつもこんなんでしょうもないなぁと思いながらも。
水奈は草日に尋ねた。
彼女は草日に告白してきた一人であるが、彼が恋愛はまだ早いからと言って断ったのにも関わらず、相変わらず友達の座におりつつも時折思いを口にする稀有な女子だ。
「どういう意味?」
「そのまんまの意味。だって草日、教室の窓から外を眺めてぼんやりしていることあるでしょ。すごくせつなそうに」
「……」
「その時の横顔にあたし、惚れたんだよね」
「それはどうも」
「だけどさ、あたし、気が付いちゃった。ほんとはあんた好きな人がいるんでしょ」
「何を根拠に」
「だから、その人を見たくて窓から外見てんのかなぁって」
草日はふっと笑いをこぼした。
「だったら窓の外じゃなくて、その好きな人を見ればいいじゃないか?」
「でもさ、その人、会えないんじゃないの?」
思い切り笑ってやったのに水奈の反応があまりにも生真面目なもので、草日は急に固まった。
「それで。お前は何が言いたいんだ」
きっと強くまなざしを送れば、水奈は何かを言おうとした唇を引き締めた。そして、別の言葉を思案するようにしばしの沈黙を送り、口を開く。
「何も」
「何もってなんだよ」
「いいや。何でもいいや。やっぱり」
水奈がにこりと口元だけをゆるませて草日を見上げた。
こういうところが女のずるいところだ。草日は内心でそう思いながらも、同時に深く追及してこない水奈に感謝した。
「あ、やば」
水奈は着信に震えた携帯電話を取り出して驚いたように目を見開いた。
「ごめ。ちょっと用事できた。草日、それじゃあね」
そう言って駆け出して行った彼女の背中がどんどん小さくなっていく。
ふいに、彼の背中を思い出した。
また明日。そう言って笑って去っていた彼の背中がどんどん小さく、手の届かない距離にまで――。
思い出があるから苦しめられる。そこから一歩も動けなくなってしまう。
けれど、草日にとって彼でなくてはいけない、そんな存在があるのだ。胸中に彼を抱きしめて生きればいいと。
――だけどさ、あたし、気が付いちゃった。ほんとはあんた好きな人がいるんでしょ
草日の頭の中に、水奈の言葉が反響して響いている。
本当にそうなのか。
いや、そういうものなんだろう。きっと。
(了)
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日々草Madagascar periwinkle
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