20 / 165
20
しおりを挟む
「はぁ!? あんた女だったの!?
……ありえない! 騙したのね!!??
しかも婚約者候補だなんて………ぜったい許さないんだから!!
フィス! あっちに行きましょ!!」
アーミュの物言いは今に始まった事ではないが、仮にも王の前でして良いものではない。
当然のようにホメロトスの眉が跳ね上がった。
「アーミュよ、其方は本当に……。
メイドが高位貴族の令嬢にそのような言い方をするなぞ、以ての外じゃぞ?」
怒鳴りつけるかと思ったが、注意だけで済ますらしい。
本来なら斬り捨てられても文句は言えない態度物言いなのに、この対応は何処からどう突っ込めば良いのやら……。
困窮してるとはいえ、エリルシアは紛う事なき侯爵令嬢様だ。
その侯爵令嬢に、侍女にもなれない身分の者が、怒鳴りつけ、挙句許さないときた……最早溜息しか出ない。
以前言っているのを聞いたが、アーミュはホメロトスの友人の孫だそうだから、対応が甘いのだろう。
アーミュの方も、唇を突き出してむくれるだけで、反省したり恐縮したりする様子はない。
以前から感じていたが、ホメロトスと言う人物は、かなり大雑把でいい加減、更に言うなら俺様気質なのではなかろうか?
これでは周りも苦労した事だろう。
「お祖父様、アーミュはメイドではなく僕の幼馴染です。
身分も、男爵家の出では侍女にはなれないからと、小間使いと言う事にして僕の近くに居られるようにしてくれたのは、お祖父様ではないですか」
エリルシアは天を仰いでいた顔を俯かせた。
これが王族の会話……。
問題は其処ではないと言いたくなったが、グッと呑み込む。
もう少ししたら図書館も保管庫も、必要箇所のみだが制覇出来そうなのだ。
積み上げられた他の知識や過去からの遺産に未練がないとは言えないが、長居して関わりを増やす方が危険である。キリの良い所で辞するのが正解だろう。
エリルシアも領地で民や冒険者たちに交じって働く事もあるし、立場も次女で平民になる可能性も高い。だから、そこまで身分について煩く言うつもりはない。
しかし節度は必要だし、何より此処は王宮だ。
時には諸外国の王侯貴族も訪れる場だと言うのに、これで王族が務まるのかと、そのうち本気で沸騰してしまうだろうと簡単に予想出来る。
そうなる前に退散するのが一番穏便に済むのだ。
………何と言うか、つくづくこのロズリンド王国は平和なのだなと思う。
ウィスティリス家や領を取り巻く諸々が、反対に異常なのだろう。
だが、とりあえず…今はこの場から脱出しよう、そうしよう。
「王陛下、私はこれで失礼いたします」
ホメロトスと孫王子の身内の会話を聞いていても仕方ないし、アーミュの嫌悪どころか憎悪まで含んだ視線は、流石に鬱陶しい。
「おお、ウィスティリス嬢、すまぬ。
アーミュには儂からもきつく言っておくので、許してやってくれ」
『許すかよ、バーカ』と言う本音は、貴族令嬢の必殺技、曖昧スマイルで受け流す。
まぁ眉尻がピクリと跳ねたので、ホメロトスはエリルシアの内心に気付いたかもしれない。
(謎ね……全体的に察しが悪い王サマなのに、ちゃんと見抜いたり気付いたりする事もある……と…あぁ、気分屋な所があるのかもしれないわ…って、決して喜べない事実ね…)
訓練後なのでドレスではないからカーテシーもどきになってしまうが、呼び止めたラフィラスが悪いのだし、ホメロトスも気にした様子はない。
さっさと無言で挨拶をして、くるりと背を向けた。
と、まぁ……こんなあれこれがあって、ラフィラスがエリルシアの自室を襲撃するようになってしまった訳だが……。
ラフィラスと鬼女アーミュ、そしてホメロトスをぶっちぎって自室に戻ったエリルシアだったが、其処でも思わず天を仰いでしまった。
「戻ったわね♪」
……ありえない! 騙したのね!!??
しかも婚約者候補だなんて………ぜったい許さないんだから!!
フィス! あっちに行きましょ!!」
アーミュの物言いは今に始まった事ではないが、仮にも王の前でして良いものではない。
当然のようにホメロトスの眉が跳ね上がった。
「アーミュよ、其方は本当に……。
メイドが高位貴族の令嬢にそのような言い方をするなぞ、以ての外じゃぞ?」
怒鳴りつけるかと思ったが、注意だけで済ますらしい。
本来なら斬り捨てられても文句は言えない態度物言いなのに、この対応は何処からどう突っ込めば良いのやら……。
困窮してるとはいえ、エリルシアは紛う事なき侯爵令嬢様だ。
その侯爵令嬢に、侍女にもなれない身分の者が、怒鳴りつけ、挙句許さないときた……最早溜息しか出ない。
以前言っているのを聞いたが、アーミュはホメロトスの友人の孫だそうだから、対応が甘いのだろう。
アーミュの方も、唇を突き出してむくれるだけで、反省したり恐縮したりする様子はない。
以前から感じていたが、ホメロトスと言う人物は、かなり大雑把でいい加減、更に言うなら俺様気質なのではなかろうか?
これでは周りも苦労した事だろう。
「お祖父様、アーミュはメイドではなく僕の幼馴染です。
身分も、男爵家の出では侍女にはなれないからと、小間使いと言う事にして僕の近くに居られるようにしてくれたのは、お祖父様ではないですか」
エリルシアは天を仰いでいた顔を俯かせた。
これが王族の会話……。
問題は其処ではないと言いたくなったが、グッと呑み込む。
もう少ししたら図書館も保管庫も、必要箇所のみだが制覇出来そうなのだ。
積み上げられた他の知識や過去からの遺産に未練がないとは言えないが、長居して関わりを増やす方が危険である。キリの良い所で辞するのが正解だろう。
エリルシアも領地で民や冒険者たちに交じって働く事もあるし、立場も次女で平民になる可能性も高い。だから、そこまで身分について煩く言うつもりはない。
しかし節度は必要だし、何より此処は王宮だ。
時には諸外国の王侯貴族も訪れる場だと言うのに、これで王族が務まるのかと、そのうち本気で沸騰してしまうだろうと簡単に予想出来る。
そうなる前に退散するのが一番穏便に済むのだ。
………何と言うか、つくづくこのロズリンド王国は平和なのだなと思う。
ウィスティリス家や領を取り巻く諸々が、反対に異常なのだろう。
だが、とりあえず…今はこの場から脱出しよう、そうしよう。
「王陛下、私はこれで失礼いたします」
ホメロトスと孫王子の身内の会話を聞いていても仕方ないし、アーミュの嫌悪どころか憎悪まで含んだ視線は、流石に鬱陶しい。
「おお、ウィスティリス嬢、すまぬ。
アーミュには儂からもきつく言っておくので、許してやってくれ」
『許すかよ、バーカ』と言う本音は、貴族令嬢の必殺技、曖昧スマイルで受け流す。
まぁ眉尻がピクリと跳ねたので、ホメロトスはエリルシアの内心に気付いたかもしれない。
(謎ね……全体的に察しが悪い王サマなのに、ちゃんと見抜いたり気付いたりする事もある……と…あぁ、気分屋な所があるのかもしれないわ…って、決して喜べない事実ね…)
訓練後なのでドレスではないからカーテシーもどきになってしまうが、呼び止めたラフィラスが悪いのだし、ホメロトスも気にした様子はない。
さっさと無言で挨拶をして、くるりと背を向けた。
と、まぁ……こんなあれこれがあって、ラフィラスがエリルシアの自室を襲撃するようになってしまった訳だが……。
ラフィラスと鬼女アーミュ、そしてホメロトスをぶっちぎって自室に戻ったエリルシアだったが、其処でも思わず天を仰いでしまった。
「戻ったわね♪」
447
あなたにおすすめの小説
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる