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しおりを挟む咲き乱れる花々を、ぼんやりと眺めていた。
そんなエリルシアの装いは、ドレスではなく動きやすそうなワンピース姿である。
図書館も魔具保管庫も見尽くしたので、そろそろ領地へ戻ろうかと考えていた。
その為、今日はお土産を買おうと、父ティルナスの仕事が一段落するのを待っているのだが、やはりと言うか何と言うか……本当に忙しそうだ。
仕事の部屋から出てくるたびに、書類を抱えている。
一人で買い物に出ても良いのだが、それをしてしまうと後で両親や使用人達から、間違いなく泣かれるだろう。
冒険者ランクは5階級だと言っても対人戦の経験はなく、心配されるのも無理はない。
現在も困窮真っ只中なウィスティリス領は、害獣・害虫・魔物被害だけでなく、治安の低下から悪党も増加している。
その為冒険者ギルドでも盗賊の排除だなんだと、対人間の依頼も多いのだが、流石に領主の…しかもまだ8歳の女の子に、そんな依頼は回す事はしてないのだから当然だ。
勝手のわからない王都で、一人で買い物と言うのも不安がなくはないので、こうして大人しくティルナスを待っているのだが……。
……いい加減、待ち草臥れた。
何よりこのままでは、買い物に出かける前に日が落ちてしまう。
お土産購入用に捻出した金額は決して多くはない。だから店を回って、出来るだけ安く、良い品を探したいのだが……。明日に日延べしても良いが、この分では日を改めたとしても、出かけられる保証はなさそうだ。
馬車止めだか馬車寄せだかをを目指して歩き出す。
近くには厩舎もあったはずだから、もし余ってる馬が居れば貸して貰えないか聞いてみてもいいし、貸して貰えなくても官舎館への道を教えて貰えるだけでも助かる。
官舎館に行き、使用人の誰かに案内を頼むのも良いだろうと考えての事だ。
しかし歩き出して直ぐ、後ろから声を掛けられた。
「ウィスティリス嬢? こんな場所でどうしたのです?」
振り向けば、今日も今日とて美少年っぷりが眩しいレヴァン・ロージント公子が立っている。
珍しく一人のようだ。
「ロージント公子様には御機嫌麗しく」
ワンピースを摘まんで一礼する。
「相変わらず…ですね。
そろそろレヴァンと呼んでは頂けませんか?」
ヒクっと頬が引き攣る。
エリルシアが自分の名を呼ばれる事を、やんわりと拒否し続けているからだろうが、最近では戦略変更して『レヴァン』と名を呼ばせようとしてくる。
懲りない御仁だなと思うが、そこは華麗にスルー一択。
「御挨拶だけで申し訳ございませんが、私はこれで…」
下手に反応すれば、自分で自分の首を絞める羽目になってしまうかもしれないのだから、速やかに撤退するに限る。
「この先は馬車止めと厩舎ですが……まさかと思いますが、王宮外へ出るおつもりですか?」
全く……察しの良い奴は嫌いだよ…と、エリルシアは内心で毒突く。
しかし図星を突かれて、つい視線を泳がせたのがまずかった。
レヴァンは何か考え込むように、一度背後を振り返ってから双眸を伏せる。
「なるほど…差し詰め出かけるのに御父君を待っていた……という所でしょうか…」
あぁ、本当に察しが良すぎて嫌になる。
「しかし、お忙しいみたいですね」
にっこりと良い笑顔で言われても嬉しくない。
エリルシアは思わずガクリと肩を落とした。
「それで? 王宮外へ出る目的は何なのです?」
撒きたいのに撒けないまま、並んで歩く状態になるが、尚も足掻いてみる。
「……ホホホ、公子様にお話しするような事ではありませんわ」
必死に笑みを取り繕って逃げの態勢を整えるが、レヴァンはそれをひょいと躱した。
「ウィスティリス嬢をお一人で外に向かわせる事は出来ませんし、まさかと思いますが徒歩で出かけるおつもりだったのですか?」
うっと詰まり、エリルシアは半眼で視線を横に流す。
何と言うか、どっと押し寄せる疲労感に白旗を上げても良いだろうか……疲労感を前に思考も何もかも放棄したくなった。
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