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しおりを挟むちょっとした森を抜けて、もう少し進めば湖の畔に辿り着く。
そこに屈み込んで、何時もの様に感覚を研ぎ澄ました。
湖の底、深い部分にあった澱みに意識を向ける。
ついでの練習とばかりに、魔力も意識して伸ばしてみる。
(ん……やっぱり魔力のように感じるけれど、何となく自分の中にあるモノとは異なる様に思えるのは何故…?
魔力じゃない可能性……。
まさか妖精とか怪異とか?
あぁ、やっぱりこの世界の魔法の根幹がわからなくて、何もかもが手探りだわ……これではいつまで経っても…)
だが、ふと『そう言えば』と小さく零れた。
(魔力じゃない魔力……環境魔素とかなら?
環境魔素が存在した世界の時は確か……あぁ、そうよ。あれは瘴気に近くない?
魔物が発する瘴気と少し違うのは、環境魔素が澱んだものだからと考えれば…。
なら、あの蜘蛛の巣の様に広がっている残滓は…)
背後でガサリと木の葉を揺らす音がして、エリルシアはハッと振り向く。
瞬時に視線を走らせ……魔物の気配ではなさそうとわかり、エリルシアは緊張と警戒を解いた。
ザッザッと下草を踏みしめる音が近づいてくる。
木々の後ろに人影が見えてきた。
領民の誰かだろう。
湖の様子を見に来たか、それとも水を汲みに来たか……何にせよ、エリルシアが此処に居ては邪魔になるだろうと立ち上がった。
「あれ、エリー様?」
領民で冒険者のソッドが目を丸くして立ち止まった。
ソッドの後ろには、彼の先輩にあたるファングもいる。
後ろのファングはエリルシアと目が合うと、途端に顔を俯かせて会釈した。
毎度の事なのでもう慣れはしたが、嫌われる理由に心当たりはない。もしかしたら身分を気にしての事かもしれないが、何にせよ、ちょっぴり途方に暮れてしまうのも事実。
そんな、エリルシアと兄貴分であるファングの微妙な空気感も知らず、ソッドが嬉しそうにエリルシアに駆け寄る。
「何してんすか? 釣り?」
にこにこと屈託のない笑顔のソッドに、エリルシアは苦笑を浮かべる。
「釣りではないわね。
それで? ソッド達はどうして此処に?」
「サキュンツァ探しに来たんすよ。
前に比べたら、めちゃくちゃ減っちゃってるから、探さないといけなくなっちまってて」
なるほどとエリルシアは頷いた。
たった3年程前の事なのに、随分と昔に感じる。
レヴァンから提案された魔物買い取り云々のアレだ。
エリルシアは王宮を後にした後、そんな話はすっかり他の記憶に圧し潰されて、思い出しもしなかったのだが……。
暫く経ってエリルシアは領地に、両親を始めとした他の者達は官舎館に戻ったのだが、戻った父ティルナスからある日手紙が届いた。
エリルシアが王宮から去ったので、レヴァンはティルナスに話を持って行ったのだろう。
その話はゆっくりと現実味を帯び、そして実現した。
冒険者ギルドとも連携を始めた事で、その規模も拡大出来た。
あの当時は毎日のように、サキュンツァという金にならない魔物の退治と処理に追われていて、機械的に対応してたのに、それが生きたままならお金になると言われたのだ。
冒険者は勿論、そうでない領民達も大喜びで生け捕りに参加した。
そうして盛り上がったサキュンツァ捕獲だったが、水源に水が戻り始めた頃から、その数は瞬く間に激減した。
元より弱い種で、環境への耐性力、適応力で勢力を伸ばす様な在り方だから、環境が変われば、その時に一番即した競争相手に生息域を奪われるのは想像に難くない。
「それで成果はどう?」
聞いてみると、ソッドが眉をハの字にして肩を竦める。
ついでにお手上げのポーズまで追加済みだ。
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