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1章 OTONAI
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しおりを挟む「うん、知ってた!
絶対にハルは忘れとるって!
ほんま、変わらへんのなぁ……相変わらず人の名前とか顔を覚えるのは苦手そうで、反対に安心するわ」
唐突な言葉に陽月の方がきょとんと目を丸くする。
「そこまで綺麗さっぱり忘れられてたら、反対に清々しいくらいやで。
中学ン時に同じクラスやった真や……あ~名前とかじゃ思い出さへんか…」
真が徐に腕組みをする。
「あ~…ホラ、アレや」
――アレと言われてもさっぱりわからない。
「2学期の期末試験ン時に、お前筆箱忘れたやろ?
で、先生に鉛筆と消しゴム借りたやん!
そんで後ろの席やった俺に、鉛筆削り持ってないかって聞いてきたやん!
覚えてへん?」
陽月はぼんやりとした光景が脳裏に浮かぶのを感じた。
「……あぁ…なるほど…。
2年の時に同じクラスだったのは確かみたいですね…」
「そうそう!
鉛筆削りやなんてオーパーツ、誰が持ってるって言うんやってなぁ?」
『オーパーツ』と言う単語の意味を調べ直して来た方が良いと、此処は突っ込むべきところだろうか……?
そんな陽月の内心の声が聞こえるはずもなく、真は話を続ける。
「って、お前、ほんまに言葉も相変わらずなんやなぁ。
ハルの方が大阪生まれの大阪育ちのくせして、なんでそんなに標準語なんよ…俺の方が東京生まれやっていうのに……」
思わず陽月の片眉が跳ね上がった。
向けられた鋭い視線に、真の方が言葉を詰まらせる。
「ご、ごめんて……。
この話題も相変わらずなんや……そないにまだ気にしてるん?」
「当たり前でしょう。
大阪で生まれ大阪で育ち……なのに何かにつけて東京から引っ越してきたのかと何度も問われる……心底悲しかったんですよ。
……本当に同級生の則岡さんなんですね。
私のそんな黒歴史を知っているという事は…」
「黒歴史って……まぁ、何はともあれ思い出して貰えて良かったわ」
そこで一旦区切り、再度ソファへ促す。
真も陽月の視線に気付いたのか、室内を物珍しそうに見回しながら促されたソファに腰を下ろした。
「なんや…ほんまに昭和やな。
時間に置いて行かれた感が半端ないわ」
真の言いたい事もわかる。
陽月の『万事屋25』が入っているビルは、その名も由緒正しき曙ビルという。
紛う事なき昭和の遺物だ。
震災も乗り越えた、ある意味歴史的建造物である。
そんな、単に古いだけと言われても仕方ないビルの1階には総菜居酒屋が入っていて、階段を降りるだけで飲み食いに困らないという好条件。
この曙ビルのオーナーが趣味でやっている店なので、あまり利益追求はしておらず、いつ行っても閑散としていて反対に居心地が良い。
周辺はシャッター街になっているからさもありなん…である。
「それで?
用件は先日の電話では窺えませんでしたが…?」
陽月からの声掛けに、真はハッと顔を戻した。
「あぁ、ごめん。
あン時、もうちょっと時間ある思たんやけど、丁度上司が来たから慌てて切ってしもうたんよ。
えっとな、今度同窓会するんやて。
そんで俺がメッセンジャー」
何ともご苦労な事だ。
それにしても中学の、しかも2年と言う中途半端な同窓会と言うのも珍しいのではないだろうか?
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