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3章 YOBIMIZU
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しおりを挟む連絡先を交換しておく。
行木と穂乃花は地下鉄の駅の方へ向かった。
それ以外の面子は同じ電車になるようだ。
終点駅で始発駅でもある駅のホームには、最終電車が止まっている。
ずらりと並ぶ線路のかなり端の方に、目的の最終電車があった。思ったより多くの人が既に乗り込み、発車を待っているのが見えた。
「終電やのに、あの人の多さ……かぁぁぁ、座れそうにあらへんなぁ」
真の呟きに松代が笑う。
「そういや、まこっちゃんと鷹峰は大阪から離れてるんやったよな」
「そそ。
せやけど俺の魂は大阪にあんねん!」
真がグッと拳を握る。
「でも、則岡君って東京生まれじゃなかったっけ?」
「……それは言わへんのがお約束ちゃうん…?
でもまぁ、言葉遣いは今更抜けへんわ。
それにな、この言葉やから仕事が成功するって場面もあるしなぁ、なぁんも問題あらへん」
井前の問いに、むっと一瞬だけ口を歪めたが、単なるノリで本気で気分を害した訳ではないらしい。
「つっか…俺ら大阪生まれからしても、まこっちゃんの言葉はベッタベタやもんなぁ」
「確かにね。
鷹峰君は相変わらずみたいだけど……」
ガクンと身体に慣性力が加わり、軽く足を踏ん張る。
最終電車が、いつの間にか発車時間を迎えていたようだ。
角の丸い四角に切り取られた車窓から、流れる風景を見るともなしに眺めていると、再び井前が口を開いた。
「その…英美子ちゃんも言ってたけど、巻き込んでごめんなさい」
「……問題ありません。依頼ですし、受けると決めたのは私ですから」
「うん、ありがとう。
明日から調査?」
どうやら井前が本当に聞きたかったのは、調査の予定だったらしい。
「そうですね。
ただ警察に話を聞く訳にもいかないでしょうから、まずは円道先生に連絡を取ってみるつもりです。
後は…失踪当日の学校内の事は、もう少し詳しく知りたい所ですので、そっちも何とか情報を集めてみようと考えています」
そこまで言ってから、陽月は松代、井前、真と、順番に流し見た。
「皆さん、当日登校していそうな部や生徒に心当たりや、何か思い出した事等ありましたら、メールで構いませんので教えて頂けると助かります」
「えぇ、勿論よ」
「おう。
野球部はアン時は全員で行っとったから、他…やな。
あぁ、サッカー部とテニス部は、多分連絡取れると思う。任せとって」
「俺は……話した事以外、思い出されへんわ……」
井前は大きく頷き、松代は流石脳筋と言うか…自分の胸を拳でトンと叩いた。
真は首を捻るばかりだが、まぁ暫く彼とは行動を共にする事になるのだから何とでもなる。
降りる駅に到着し、其処で井前と松代の二人とは別れ、真と暗い夜道を歩きだした。
翌朝、陽月は新居見から聞いた連絡先に電話をする。
今日は日曜日なので、流石に病院に電話するのは迷惑になるだろうと、自宅の方に電話を掛ける。
陽月は帰宅部で、担任と言う訳でもなかった円道との接点はない。その為、陽月を覚えている可能性は低い。
出来れば本人の意向を聞きたかったが、仕方ないだろう。
電話口から聞こえてきたのは女性の声…円道とどういう繋がりがある人物かわからないが『卒業生だが見舞いに訪ねても良いだろうか』と聞いてみる。
すると相手は少し言葉に詰まった様子で無言になった。
だが、少しして涙交じりの声で『えぇ、えぇ、どうぞ…喜ぶと思います』と言ってくれる。
自宅に電話したのだから、円道の身内である事は間違いない。
何はともあれ、これで円道とは確実に会う事が出来る筈である。
この後はどうしようかと、陽月は少し考え込んだ。
真はまだ寝ている様なので一人で朝食を済ませ、出かけるべく準備をする。
【どっか出かけるん?】
(えぇ。
折角ですので、その辺を歩いて確認してみようかと。
ついでに『ポンちゃん』の方にも着手しましょう)
【お!
僕の出番やな!】
「なぁぁぅん」
【ササミも行く言うてるわ】
ちなみに、まるで念話のように内心で会話しているのは、真に『何、独り言言うてるん? ぁ、まさか猫と喋っとんの?』と気の毒そうに聞かれたからだ。
不本意ではあるが、恐らく猫を相手に話すしかない、寂しい人物だと思われたのは間違いないだろう……。
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