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4章 SYUUI
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しおりを挟む時間になったらしく、バスの昇降口のドアが閉まり、ゆっくりと動き出した。
駅前を離れると、暫くはそれでも建物が連なっていたが、徐々にその数を減らし始める。
道路は舗装されて立派なものだが、少し目線をずらせば遠く空き地…もしかすると畑や田んぼかもしれないが…空白地が見え始めた。
「なんや…あっちの方は昔とあんまし変わらへん印象やな」
真も同じ方向を向いていたらしい。
通りが閑散とし始めた事は間違いないが、だからと言って何もなくなった訳ではない。
飲食店やコンビニ、スーパーやドラッグストア、他にも整備工場等々が、ぽつぽつと見える。
ドラッグストア前のバス停で老人は降りていき、バス内は陽月と真、そして運転手だけとなった。
車窓から見える風景は徐々に緑を濃くしていく。
暫くそんな風景を眺めていると、真が降車ボタンを押した。
料金を払って地面に降り立ち、目の前に伸びる道を見つめる。
脇にはハイキングコース等の看板があった。
どうやら目の前の道を行けば良いらしい。
陽月は足元を見る。
自分は運動用の靴ではないが、ビジネスシューズと言う訳でもない。真の方はスニーカーなので、問題はないだろう。
「行ってみますか」
「せやな、途中で無理そやったら戻ったらええねんし」
真も足元を見ていたようだ。
緩やかな上り坂が続くが、子供達の遠足…は兎も角、市民のハイキングコースと言う言葉に嘘はない様だ。
年齢を重ねた紳士淑女達でも、休み休みなら問題なく踏破出来るだろう。
途中、適当な間隔でベンチや広場もあるが、放置されてる訳ではなくきちんと整備もされているようだ。
「ゴミ箱も管理されてますね」
「ゴミ箱?」
「えぇ、ゴミ箱を見れば、管理されているかどうか、何となくわかりますでしょう?
後で管理事務所にも行ってみましょう」
「事務所なんか行ってどないするん…」
「流石に10年以上前の何かが残っているとは思えませんが、一応…ね」
真はピンとこないのか、曖昧に頷く。
そのまま暫く無言で歩いて行くと、コースの分岐点が見えてきた。
片方は更に上に向かうコース、もう一方はそれ以上はきついと言う方々向けのコースだろう。
所謂ミニハイキングコースで、1時間と少しもあれば十分に回れそうだ。
だが、其方では発見位置はおろか、林田の父親が死亡したと言う池も見る事は出来ないので、躊躇する事なく上へ向かうコースを選択。
そういえば林田の実母である桜子が浮かんでいたと言う池は、父親が事故死したのと同じ池なのだろうか……。何となく同じような気もするが、今は歩く事に専念しよう。
さっきまでと違い、徐々に木々が多くなり、山道の様相を呈し始めた。
「流石に肌寒いですね」
「せやな…もう一枚上着持ってきとくんやったわ」
季節的にも気温は下がってきているが、やはり山と言う事で更に気温は低い。
「まぁ歩いて居れば寒さで震える事もないでしょう」
陽月はそう言って進む足を緩めない。
どうみても真より陽月の方が体力では劣るだろう。見たまんまモヤシだから仕方ない。
真はまだ余裕がありそうだが、陽月の方はそろそろ息が切れそうだ。
【ハル、大丈夫か…?】
(なんとか…頑張るしかありませんから)
【……心配やぁ】
陽月は月佳の声に苦笑を漏らす。
真に見られなくて良かったが、少し体力をつけた方が良いかと思案した。
「……池や」
真の声に陽月は顔を上げる。
真が覗き込んでいる場所の隣に立ってみた。
ハイキングコースから出ないよう、安全の為に手摺代わりの柵がずっと道に沿って敷設されているのだが、そこからずっと下の方を覗き込むと、藪の向こうに水面が見える。
もしかするとこの手摺代わりの柵も、林田父の事故死が切っ掛けだったかもしれない。
「コースからは結構外れとんな」
「そうですね。
それに思った以上に上がってきていたようです。
池が斜面のかなり下の方になっていますね」
真がきゅっと眉間に皺を寄せた。
「こっから滑り落ちたんやったら……そりゃ一溜まりも…」
斜面はかなり急だ。
だが藪の中に獣道の様な物も見える。
降りて近づく事は、不可能ではないように見えた。
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