万事屋25―futago―

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4章 SYUUI

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 周囲を見回す。
 『危険! 乗り越えるな!』と言う看板が目に入ってしまった為、つい気になった。
 過去に死亡事故があったのなら、設置されていて当然ではある。

 少なくとも陽月よりは運動神経の良さそうな真が、先に柵を越えて斜面に足をのばした。

「結構滑んな……。
 ちょっと待ってや、何か引っ掛かり探すよって」

 斜面は藪に覆われていて、足元を確認するのが難しい。
 そして下草で滑りやすくなっているようだ。

「ぉ、ここ、踏ん張れそや。
 ハル、手ぇ」

 関西…大阪の人間が全てそうだとは言わないが、文章を端折はしょって単語で会話する人の割合は、比較的多いのではないだろうか。
 陽月は何となく理解出来る事もあるので、特に困っていないが、仕事でもこれでは支障が出るのでは…と、老婆心が顔を覗かせそうだ。
 とは言え、あえて注意する必要もないだろう。

 真に手を繋がれて、ゆっくりと斜面を二人して下りていく。
 上から見下ろした限りでは気付かなかったが、池の周囲はぐるりと柵で囲われていた。
 魚でも居るのだろうか……真新しい折りたたみの簡易椅子が置かれたままになっている。
 定位置だから置いてあるのか、単純に忘れ物かはわからないので、管理事務所には持って行かずにおくとしよう。

「思ったより大きな池やな」
「そうですね。
 その上深そうです」

 10年以上前、林田父の事故当時の様子はわからないが、柵に立てかける様に干からびた花束が置かれている様子からも、事故は後を絶たないのかもしれない。

 陽月は再び周囲を見回す。

「真さん、発見場所は此処ここより更に上ですか?」
「いや、こっからやと奥の方に進む感じやな」
「行けそうなら行ってみたいですね」
「よっしゃ、ほな進もか」

 ハイキングコースと池から離れ、奥の方へ進む。
 池に下りるまでの斜面とは比べ物にならない程、進みやすい。
 相変わらず藪で足元は見えにくいのだが、それでも獣道の様にほんのりと道らしく地面が見えている場所があるせいだろう。

 奥へ奥へと進み続けていると、木造の小屋が見えてきた。
 小屋と言っても人が入れる程ではなく、物置小屋程度の小さなものだ。

「へぇ、こないな所に…なんか置いてあんのやろか」

 よく見れば扉に掛かっている南京錠に『管理事務所』の文字が見える。
 獣道が辛うじて見えるとは言え、そこそこ難儀する程度には深い藪なので、管理が間に合っていないのかもしれない。

 物置小屋を一周、ぐるりと回って見れば、その考えは更に深まった。
 南京錠がぶら下がっている正面からはわからなかったが、背面は地面に近い場所が腐り落ちていて、ぽっかりと大きな穴が開いている。
 その穴から薄汚れたロープが覗き、何かの道具だろうか、柄の様な細い棒や取っ手が何本か垣間見えていた。
 
【……なぁ、これ…】
(月?)
【ロープ…引っ張り出したんは動物やろか…?
 道具かて手ぇ伸ばしたら、この穴から出せるんちゃう?
 管理用なんやったらシャベルとかもあると思うんやけど…】

 言われれば確かに……発見場所が近いなら、此処ここの道具を使用した可能性はあるだろうが、発見時に警察が調べているだろう。
 もしこの小屋も調べていたとして、現場保存の為のポリスラインテープ等は見当たらない。
 既に解除されたか、調べていないのか……わからないが、先に発見場所へ向かった方が良さそうだ。

「なんかわかったんか?」
「見ただけでわかるなら苦労はありませんよ。
 先に発見場所へお願いします」
「ぁ、わ、わかった」

 再び歩き出した真に、陽月も続く。
 小屋から更に進んで、木々の間に道路が見えてきた。
 井前の言っていた『山の反対側の車道』だろうか……。

 陽月は来た道を、足を止めて振り返る。
 あの小屋からかなり距離がある。いや、体力自慢なら大した距離ではないかもしれない。

「……ぁ、彼処あそこや……」

 真の声に振り返り、彼の視線を辿る。
 その先には、まだ新しい花束や中身が入ったままのペットボトル、お菓子等が置かれていた。







∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

関西では、多くの方が片手で持つような小さな物をスコップ。足を掛けて仕える大きさの物をシャベルと呼んでいるかと思います。
作中でもその区分です。

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