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4章 SYUUI
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しおりを挟むドアを開けると、カランカランとドアベルの音がした。
店内は昭和レトロ感な雰囲気で、何となく雑多な印象をうける。そして照明も薄暗いので見通しは良くない。
数名の客が居るだけの閑散とした店内を見回すが、顔写真を見た等ではない為、誰が『小巻』なのかわからない。
大声を出して確認する訳にもいかず、店員らしい中年女性を捕まえて聞いてみると、あっさり教えてくれた。
どうやら常連らしい。
奥まったテーブル席に近付くと、草臥れた初老の男性がご飯茶碗を手に付け物を口に運んでいた。
まさか喫茶店で食事……しかも和食系だとは思いもせず、陽月と真は少し手前で足を止める。
そんな二人に気付いたのか、初老の男性は顔を上げて箸を置いた。
「あぁ、もしかして電話くれはった『鷹峰さん』やろか?」
「ぁ……はい。
その、御食事中に申し訳ありません」
立ち止まった場所のまま頭を下げる陽月に倣って、真も慌てて頭を下げた。
「いやいや、こっちこそ。
貴方が来る前に食べ終わっておこうと思ったんですが、ちょっとだけ出る時間が遅くなってしまって。
あぁ、立ってないでどうぞ」
小巻の対面の席に、陽月と真が並んで座る。
「前からある店でねぇ。元は食堂やったんですよ。
そのせいか、今でも頼んだらこないして定食だしてくれるんですわ」
小巻の言葉に頷いていると、さっきの女性店員が注文を聞きに来た。
陽月も真も、遅い時間に握り飯を食べていた事もあり、飲み物を注文するに留める。
箸を置いたままの小巻に、陽月が声を掛けた。
「あぁ、御食事をどうぞ。
私達も飲み物を頼みましたので……お話は食後に」
「気ぃ遣わしてしもて、えろうすんません。
…そんなら……お言葉に甘えて」
元々食堂だったのなら不思議な事ではないのかもしれないが、昭和レトロな店内は食堂と言うよりしっかり喫茶店な内装で、焼魚定食が妙に浮いて見える。
だが、これはこれで悪くない。
地元で長く愛されてきた店なのだと思えば、反対に自然な感じが……しなくも、ない。
小巻の前から食器が下げられる。
『いつもの』と小巻が笑うと、程なくしてコーヒーが運ばれてきた。
陽月一人が紅茶なのは珍しくもない光景だが、もしかすると店主が得意なのはコーヒーの方かもしれない。
「すんません、お待たせしましたなぁ」
「いえ。
此方が急にお願いしたのに、快諾してくださってありがとうございます」
小巻が首を振る。
「いやいや。
そんで…行方不明になった言う女性生徒さんの事やったですかね…」
「はい。
行方不明になった生徒の名は林田 花央里さんと言うのですが、覚えていらっしゃるでしょうか……。
当時は2年2組。園芸部の当番で29日には登校していたんです」
コーヒーカップを持ち上げて、小巻は漆黒の波紋を無言で見つめた。
「今日も仕事やったんで、学校でアルバム見てきました。
覚えてます…いうか、思い出しました…ですなぁ。
警察にも何度も聞かれましたしねぇ」
「その警察に話した事と同じで構いません。
申し訳ないのですがもう一度、思い出して話して頂けますか?」
小巻はコクリと頷く。
彼の話す内容は、円道から聞いた事と大差ない。
図らずも円道の話の裏付けとなった。
「まぁ、用務員なんてやる事探し始めたら、キリなんてない仕事やからねぇ。
あの当時、温室もかなり古うなってて、取り壊そか~なんて話も出とったんやけど、円道先生が顧問してる間は、修理重ねて何とか維持しとったんですわ。
今はもう無くなってしもてますけどね。
その日も朝から掃除やらやった後は温室の修理してた思います」
「では、小巻さんが修理をしていた間に、温室を訪れたのは何方です?」
「円道先生と生徒の林田さんだけやったですね。
9時……いや、10時頃やったかな。
それまでは校門のプランターの水やりしてくれてたんちゃうかな。
植込みの方はこっちでも水やりするんやけど、プランターは後回しになってしまいがちやったから。
そんで12時の少し前位やったかな……生徒さんは温室から出て、多分昼食に行った思います。
その後は、残ってた円道先生とお昼食べるんが日課でしたわ」
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