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4章 SYUUI
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しおりを挟むこれといって目新しい情報があった訳ではないが、陽月以外は会話と食事を楽しめたようだ。
会計を済ませドアを開けた瞬間、肌を刺すような冷気に、真が大慌てで上着の前を掻き合わせる。
「ひゃぁ、今日はえらい冷え込んでんなぁ」
「ほんとにここ最近、冷え込みがきつくなってきたわね」
行木が同調すると、井前も頷いている。
「ハルはええなぁ」
突然矛先が此方に向くが、陽月は会話について行ききれず、首を傾げた。
だが、それは陽月だけではなかったようで、行木がきょとんとしている。
「いいって……鷹峰の何がいいって??」
怪訝そうに眉根を寄せる行木の呟きに、井前と穂乃花までが、すかさず突っ込みを入れる。
「顔は良いわよね。童顔だけど」
「お肌もすべすべで……羨ましいです…」
苦い表情で盛大な溜息を吐く行木には構わず、真は妙にテンション高く答えた。
「何って……猫!!」
「「「猫??」って」どう言う事?」
微妙に女性陣の声が重なる。
「ハル、猫連れてきとんねん!
俺はちらっと見せて貰ただけやねんけど、めっちゃ美猫さんやったんや。
それに寒い時に、猫と一緒に布団でぬくぬくって、なんや憧れるやん?」
『猫』と言う単語に、女性達が笑顔になる。
特に穂乃花は猫が好きみたいで、笑顔全開になっていた。
そんな他愛ない話をしながら、券売機の方へ向かう。行木と穂乃花は帰宅の為に、電車に乗る必要があるからだ。
だが、券売機の前の様子に違和感を感じて、歩調が遅くなる。
「どうしたのかしら」
井前が不思議そうに呟く。
「込み合う時間でもないのに、何だか人が多く感じるわね」
行木の言う通り、感じた違和感は行き交う人が滞って、普段より多く感じたのだと気付いた。
券売機に向かいつつ、人の間から覗き見ると、中年の男女がチラシを人々に手渡して、何か話しかけているらしい。
「なんやろな…」
気になったようで、真が男女に近付いていく。
陽月と女性達は顔を見合わせるが、仕方なく真に続いた。
「お願いします!
どんな小さな事でも良いんです!」
「この子を見掛けませんでしたか?」
迷子か何かだろうか……となると、男女は両親かもしれない。
こんな時間まで帰宅していないと言うなら、心配で仕方ないだろう。
しかし声を上げているのは男女だけで、警察等の姿は見えない。
真が躊躇せずに男女に近付き、声を掛けた。
「どないしはったんです?
もしかして迷子とかですか?」
真の声に、女性が振り返る。
掴み掛らんばかりの勢いで、女性は真に縋った。
「この子を見ませんでしたか?
昨日から帰ってこないんです!」
押し付けられたチラシには、中学生か高校生くらいの少女が、制服姿でプリントされている。
真はじっと見てから、陽月の方へ差し出した。
陽月がそれを受け取ると、行木達も覗き込んでくる。
「この辺の子なら、英美子ちゃんと穂乃花ちゃんは……あぁ、則岡君達もわからないわよね……でも、ん~~~わたしも見た事ない…ですね。
……お役に立てなくて……すみません」
井前が申し訳なさそうに女性を見つめる。
女性はガックリと項垂れ、泣き出してしまった。
「あの、警察には?」
行木が訊ねると、男性は力なく首を横に振った。
「このくらいの年頃の子だと、家出の可能性の方が高いからと言って、何も……。
反抗期なのか、喧嘩になる事もありました…ですが、毎日ちゃんと帰って来てて……家出する理由なんて何も思い当たらないんです」
男性の言葉を補う様に涙声の女性が、ハンカチで目元を押さえながら話す。
「事件性がないと動けないって……何の為の警察なの……あの子にもしもの事があったら……あぁ…」
そんな会話には意識を向けず、陽月はチラシをじっと見つめていた。
【ハル……この子……】
(えぇ、昨日見掛けた少女ではないでしょうか)
【紺のブレザーにチェック柄のスカート…うん、間違いあらへんと思う…。
うぅん……伝えたった方がええやろなぁ…ええやろけど、なんや厄介事に巻き込まれんのは嫌やなぁ…】
(私も月と同じくですが、一応伝えておきましょう。
見かけただけで、その後の事はわかりませんから、大して役には立たない情報だとは思いますが)
「お話し中、失礼します。
夕方だったのと、すれ違っただけだったので確証がある訳ではありませんが……もしかしたら彼女を見掛けたかもしれません」
陽月の発言に、視線が集中した。
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