【完結可】異世界召喚された聖女の俺、再会を約束した騎士にもう一度会いに行ったら男の姿のままでした。

良音 夜代琴

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6巻 春の嵐と新学期

蒼とセリクの経過報告(2/2)

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 聖女戦隊……?

 聖女、戦隊……。

 ……いや、聖女戦隊ってなんだ……。

 そりゃまあ、ここまでしてもらったんだからそのくらいの要望には応えるけどさ……。
 何だろう……。
 集合して写真が撮りたいとか……、そういうのなのかな……?

「あとその魔道具……いや、先輩曰く『魔法聖女変身コンパクト』らしいけど、とにかくそれ、先輩が1人に1つずつ作ってくれてっけど、入れてる魔術陣は一緒だから、誰のでも同じように使えるからな」

「あ、そうなんだ……」

「先輩には『せめて解除操作だけでもそれぞれで専用にしてほしい』って言われたけどな、やっぱいざって時に汎用性高い方がいいだろ?」

「そうだね」と苦笑してから気づく。
「これって、父さんが使ったらどうなるの……?」

「つーか多分、父さんに一定以上の聖力があれば、向こうに着いた時にはゲートの力で聖女になってるはず」

「だよな?」と蒼に問われてセリクが「うん」と肯定する。

 やっぱりそうかぁ……。
 父さんも女子に……いや、女性に? なっちゃうのか。

 むしろいつまでも『心は少年!』みたいな人だからなぁ……。
 たとえ父さんが俺より年下な見た目で現れてもショックを受けないように、心の準備だけはしておこう。

「それって父さん分かってるの?」

「あ? オレが知るかよ」

「リンは話した?」

「私はゲートにかけられた陣についての知識を持っていない」

 セリクに視線を向けると、首を振られた。
 まあ、セリクは父さんとはまだ一度も面と向かって会話してないもんね。

 つまり誰も話してないって事か……。

「じゃあ俺がこの後話しておくね」

「別に驚かせときゃいーんじゃねーの?」と言う蒼が次に話したのは、明日の朝7時のゲート発動中に移動条件の書き換え実験と、書き換え後の解析をセリクがやりたいという話だった。

「今度は、僕とディアリンド様が今のこの体にもう一度入れるような魔道具を作りたいんです」

 セリクの言葉に、俺とリンは思わず息を呑んだ。
 さっき蒼が食卓で言っていたのはこういう事だったのか。

「それってさっきの聖女になる魔術陣とほぼ同じなんだよね?」

 俺の言葉にセリクは頷く。

「姿自体はそれで変わりますが、そこに体の時間の進みをこの世界と同じするための陣を追加する必要があります」

「そっか、聖女の体に時間操作は必要なかったもんね」

 確か聖女の姿でいた頃は、髪も爪もほぼ伸びなかった。
 当時は『これが作り物の体だからなのかな』なんて思っていたけど、成長時間がこちら側の時間のままだったからか。

 深く納得した俺に蒼が言う。

「玲菜に連絡とったら、覚えてる限りの内容をありったけまとめて送ってくれるらしい。それ見て数年でいけそうな手応えがセリクにあれば、研究時間短縮のためにオレとセリクも土日のうちにフロウリアに行くのもありかなってとこなんだよな」

 なるほど、それで父さんの付き添いは明日の夜にって言ってたのか。

「ただ、そうなるとこっちがなぁ……」
 蒼は眉を寄せて勉強机の右上の棚を見る。

 そこには、蒼とセリクがあの公園に仕掛けたという聖力を感知する装置の受信機が乗っていた。

 意外にも七凪(なな)さんとは3日以降まだ一度も会えていない。

 俺も先日学校の帰りに何となく公園を見に行ったけど、公園に着いてほんの1分足らずで蒼から「公園行く時は前もって連絡してくれ」とLINEが来た。

 聞くと、あの装置が反応したので部屋を飛び出そうとしたが、時間帯的にもしかしたらと俺の位置情報を見たところ公園にいた、という事だった。

 あの件は蒼に無駄な期待をさせてしまったと反省している。

 そんな装置が、昨日今日と午前中に反応を示していたらしい。

 セリクのメモによると、昨日は9時半過ぎに入園し、10時半頃退園、今日は10時過ぎに入園し11時前に退園したのではという事だった。

 俺達は学校で留守だったし、セリクはまだほとんど家から外に出たことがないため見に行くことはできなかったが、蒼は明日こそ接触したいと思っているらしい。

「で、明日装置に反応があったらオレが会いに行くからさ、その間セリクのこと兄ちゃんに頼んでいーか?」

「え?」
 俺が留守番なの?

「ディアはどっちについててもいいぞ」
 蒼に視線を向けられて、リンはほんの一瞬考えてから答えた。
「でしたら、私はアオイ様にお供させてください」

「え?」
 リンはそっちに行くんだ……?
 いや、いいけども。俺はただの留守番だしね。

 俺の声に反応して、リンが俺に視線を向ける。
『問題ないだろうか』と尋ねるその視線に、俺は頷きを返した。



 しばしの沈黙の後「……最後の話はさ……」と口にした蒼が、そこで一度口を閉じる。

 セリクがハッと表情を変えて、蒼の様子を気遣わしげにうかがう。

 どうやら、何か言いづらい話をするらしい。
 俺とリンはひとまずそれだけを理解して、互いに視線を交わしてからまた蒼に視線を戻した。

「あー……、兄ちゃん達にはちょっと重い話かもしんねーけどさ」と蒼は首の後ろを手で撫でるようにしながら話し始める。

「……その話……今するの?」
 セリクが小さく囁いた声に、蒼が低い声で小さく答える。
「ああ。ゲートに触る前には可能な限り情報共有しとくべきだろ。何があんのかわかんねーんだからさ」
「そっか……。うん、そうだね」

「多分なんだけどな。4820年にロイスが殉職してる」

「え……と……今何年だっけ……」
 俺の疑問にすかさずリンが答える。
「今は4844年で、明日には4845年だ」

 じゃあ、それって何年前の話だ……?
 24年前……だから、12日前……?

「8日の事だな」

「え、でも、定年……」

「間際だったって話だ」

「……っ」

「流石にもう骨は拾われてると思うんだが、こっちでは確認できてない」

 え……?

 じゃあ、何?
 ……ロイスの遺体は、野晒しだったの……?

「……そういう事ですか……」
 リンは眉をしかめつつも、納得いったという顔で頷いた。

 そうか……。
 蒼は、ロイスが死んだってだけの話なら、俺達にはしなかったんだ。

 ロイスの骨がまだ拾われてない可能性が多少でも残ってたから、伝えたって事か。
 俺達に、今からでもできることがあるかもしれないから。

「分かった。教えてくれてありがとう」

「ロイスが助けた聖女は、ロイスの事すげー悔やんでたよ」

「……そっか。いつもごめんね、蒼にばっかり大変な思いさせてるよね」

「別に。こんくらいなんてことねーよ」

 フッと口端を片方だけあげて静かに笑って見せる弟は、3月よりもずっと大人びて見えた。
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