教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第2章 風の大龍穴編

32 風の大龍穴

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 ラムセト砂漠に来て7日目の夜。僕たちはルシアのログハウスで寝る準備をしているところだ。

「今日はめちゃくちゃ走ったよね。ルシアがもうすぐ風の大龍穴だぞっていうから張り切っちゃったよ」
『そのおかげでいよいよ明日の朝には風の大龍穴に着くぞ。10日はかかると思っていたが8日目には到着できるのだ。我の予想を上回る速度で来れたことは素直に褒めておこう』
「ふふ、ありがとう。昨日と今日も色んな魔物と戦ったけど、やっぱり今日のサンドワームと2回遭遇が強烈だったね」
『どちらも次元断で上手く仕留めていたではないか。とくに2回目の次元断は範囲も的確で魔力量も適正に使えておったな』
「うん。昨日初めて戦ったサンドワームよりは二回りほど小さい相手だったしプレッシャーも少なかったから、魔力の操作も魔法の発動も冷静に把握しながら出来たんだよ」
『小さいと言っても30m級ではあったがな。まあよい。冷静に戦えることは大事なことだ。ラムセト砂漠にはまだ色々な種類の魔物がおるが、その中でもサンドワームは1、2を争う強い魔物だ。それをあれだけ容易く倒せるようになったのだから、大きな成長と言えるな』
「そうなのかな。自分ではそんな実感は無いけど。時空間魔法が無かったら勝てなかったしね」
『あほう。時空間魔法を操ることが出来るようになったのが成長なのだ。それに自身の魔力貯蔵量もかなりの精度で分かるようになったのではないか?』
「そうなんだよ! 自分の魔力の流れを掴む訓練をしたことが無かったんだけど、ずっと意識するようにしてたら自分の魔力量がどのくらいかが分かるようになったよ。それに魔力操作もしやすくなったね」
『旅に来て7日間でそれだけできるようになるのは、やはり実戦を経験した賜物であるな。その調子で修行を怠るではないぞ。褒美というわけではないが、今日の勉強は休みとする。明日に備えて早く寝ることにしよう』
「分かった。いよいよ風の大龍穴か~。ワクワクして眠れないかも知れないな」
『フフフ。お主も12歳の少年らしさがあるのだな。楽しいことが待ってる前日に眠れないのはお約束というやつだ。それなら、我が睡眠の魔法でもかけてやろうか?』
「いや、大丈夫だよ! ワクワクしてるけどきちんと寝るからさ。それじゃ先に寝るよ。おやすみなさい」

 僕とルシアは明日に備えてそれぞれベッドで眠りについた。



「ふわ~。ぐっすり寝られたな~。……あれ? ルシアがいないぞ?」

 ワクワクして眠れないかと思ったけど、サンドワームと連戦していたこともあり、僕はすぐに眠ることができた。別に寝坊したわけでもなく、早く起きたんだけどルシアはいないみたいだ。

『レアンデル! 起きたようだな! 外に出てくるがよい!』

 外からルシアの大きな声が聞こえてきた。僕は寝巻のままだけど外に出てみる。するとそこから見えるのは今までに見たことがないものだった。

「なにあれ! 竜巻!? いや竜巻よりもっと大きいな……。ルシア! ここにいたら危ないんじゃない!?」
『あれが風の大龍穴だ。昨日は暗くて見えにくかったのだが、ここからでもきれいに見えるな。よし。朝食を済ませたら出発するぞ』
「あれが風の大龍穴!? でっかい竜巻みたいなのが?」
『行ってみれば分かる。とりあえず中で食事にするぞ』

 僕とルシアはログハウスで朝食を食べて準備を整え、急いで出発した。

 ――走ること2時間。

「うわ~。この先に進むの無理じゃない? 濃密な砂嵐が侵入者を妨げるように吹き荒れてるよ。これがでっかい竜巻の正体だったのか」

 僕たちの目の前5mを境にして、その先は砂嵐が吹きまくっている。明らかに自然に発生したものではなく、ここが風の大龍穴なのだとしたら、許可なく入るのはお断りって感じだ。

『まあ、普通ならそうなるな。風の大龍穴はこの砂嵐の中にある。そこに行くためにはこの風を中から止めてもらうか、外から無理矢理止めるかの二択となる。しかし我々は普通ではないからな。無理矢理止めるとしよう』
「えっ? この砂嵐を無理矢理止められるの?」
『極大の風の属性魔法で止める方法もあるが、我々は時空間魔法の使い手だぞ。お主もこれを止められる魔法を覚えたではないか』
「もしかして次元断で止めるの!? この巨大な砂嵐を止められるかな……」
『とにかくやってみるがよい』

 目の前にそびえ立つ風の壁を見ていると、次元断で止められる気がしないんだけど、風の大龍穴に行くためには止めるしかないか。

「よし。やってみるよ」

 僕は目の前の砂嵐に対して座標を定めて、縦に空間を分割させるイメージで魔力を操作する。

「次元断!」

 すると砂嵐に切れ目が入り、縦に5mほどの高さ分だけ風が止まった。……のも、つかの間ですぐに砂嵐が切れ目を包み込んだ。

「はあ~。一瞬だけど止まったね。随分魔力を使ったのに、あれだけしか止められないのか……」
『一瞬とはいえきちんと止められたではないか。サンドワーム相手に実戦で使った成果が出ておるな』
「でも、あれじゃ中に入るのは無理だよ」
『それでは我の魔法を見てるがよい。修行を積めばこんな風にできるようになる。次元断!』

 ルシアが目の前の砂嵐に次元断を使うと、地面から天空の見えないところまで切れ目が入り、幅2mほどの通り道ができた。

「これは……すごいや……!」
『お主も時空間魔法を極めれば出来るようになるぞ。ほら、しばらくすると砂嵐が復活するから早く入るぞ』

 ルシアが作った風の切れ目の通り道を進んで行くと、目の前には巨大な建物がそびえ立っていた。
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