教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第3章 ハンターの町 ボレアザント編

41 ボレアス湖の観光

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 ハンターギルドの引取所に素材を大量に渡したところ、査定に少し時間が欲しいということだったので、レナールさんにボレアザントを案内してもらうことにした。

「それにしても驚いたな。あれだけの素材を集めたなんて。修行の旅だと言ってたが、サンドワームを仕留められる少年が修行をしてるなんて、末恐ろしいね」
「いえ、僕なんてまだまだです。もっと頑張って強くなりたいです」
「か~っ。謙虚で努力家ときたか。うちのメンバーにも見習わせたいぜ」
「そういえば、この前の仲間の方たちは何をしてるんですか?」
「ああ。あいつらは4人で受注したクエストをやってるよ。高報酬の美味しいクエストなんだが、リーダーが参加するほどじゃないから自分たちだけで大丈夫とか言ってな。まあ、うちはメンバーの個別受注もバンバン受けてるからよくあることだがな。よし。それじゃ最初のおすすめスポットのボレアス湖に行くぜ。ボレアザントはボレアス湖に隣接してるから栄えたと言っても過言じゃない。そしてそこの魚が旨いんだよ。観光の名所でグルメスポットってやつだ」
『すぐに向かおう。走るぞ』
「いやいや! 走ってもいいんだが、せっかくの観光だ。すぐそこに貸し馬車屋があるから……いや、やっぱり走るとするか。そっちの方が速そうだ」

 そうして3人で走ること1時間。ボレアス湖の畔に到着した。

「ハァハァ……なんて速さだよ! 2人ともどうなってんだ!」
『そう言いながら、しっかりついて来られたではないか。さすがBランクのハンターだ』
「いや、そもそも案内役の俺が付いていってるのがおかしいんだが……ハァ~。あんたらに常識を求める方が間違ってるんだな。レンも大概だが、ルシアさん、あんたはさらに底が見えないな」

 レナールさんは僕のことをレン、ルシアのことはルシアさんと呼ぶようになった。何でもルシアは呼び捨てにできない雰囲気が出てるらしい。確かにそれは分かる。ルシアと呼んでる僕が言うのもなんだけど……
 そうそう。ついでにルシアにも僕のことをレンと呼んでもらうことにした。せっかくハンター登録はレンという愛称で登録したんだし、僕もクロノルシアじゃなくてルシアと呼んでるからね。

 それにしてもボレアス湖はとんでもなく大きい! ラムセティッド大陸はとにかく暑いというイメージだけど、この辺りはひんやりとした風が吹いていてとても気持ちがいい。観光してる人もたくさんいるね。

『そこで魚を焼いている出店があるぞ! 早速食べてみようではないか』

 ルシアのテンションが高いな~。本当、美味しそうなものには目がないね。そういう内にルシアが串にささった焼き魚を3つ買って持ってきた。

『ほら、買ってきたぞ。これは匂いだけで分かるが絶品に間違いないな』

 ルシアから受け取った焼き魚をパクリと頬張る。うん! これは美味しい!! 魚自体の旨味、特に油の旨味が溢れ出ている。ほんのりと振りかけただけの塩がこの旨味を絶妙に引き出してるな~。

「ルシアさん、俺がごちそうしようと思ってたのに、これじゃ逆だよ」
『ハハハッ! あんなに美味しそうな煙が上がっていたらすぐに食べずにはおられん。それにお主には昨日から世話になりっぱなしだ。食事ぐらいは全て我に支払わせてもらおう』
「う~ん。ボレアザントの案内は全てを任せてもらうつもりだったんだがな」
「レナールさん、ハンター登録のときも名所の案内も本当に感謝してます。だから食事ぐらいは気を遣わないでください。ルシアが支払うのが嫌だったら僕が払いますよ」
「いやいや、何言ってるんだよ。レンみたいな少年に払わせるわけにはいかないさ。それだったらルシアさんの好意に甘えるとしようかね」
『好意に甘えてるのは我々の方なのだが、お主も面白いやつだな。よし、食べ終わったら、きちんとした昼食を取るとしよう』
「それだったらおすすめの料理屋があるんだ。そこでお昼にしようぜ」

 レナールさんおすすめのお店に行くと、メニューには新鮮な魚料理がたくさん並んでいた。その中でもレナールさんおすすめのものを注文したんだけど、どれもめちゃくちゃ美味しかった。僕は淡水魚を食べる機会が少なかったからどんなものか楽しみだったんだけど、身はサッパリしていて、それをソースと絡めて食べると深い味わいに変化して口の中が幸せに包まれる。魚のフルコース最高でした。

『レナール、お主のおすすめは絶品だったな。満福亭の食事も最高だし、お主はグルメに違いない。このような縁でグルメ仲間に出会えるとは感激だぞ』
「思わぬところで褒められてるのがくすぐったいが、確かに俺は美味いものが大好きだし、弟が料理人だから美味しい店の情報もたくさん入ってくる。喜んでもらえたなら何よりだ」
「僕もルシアのこんなに嬉しそうな表情を初めてみた気がするよ」

 大満足そうなルシアは、そのあとボレアス湖の自然も満喫して、しっかり収納用の食事も買いだめしていた。レナールさんもお土産を買っているようだ。一通りボレアス湖の観光も終わり、レナールさんが声をかけてくる。

「そうしたらボレアザントに戻って、とっておきの名所に行くとしよう」

 当然、ボレアザントまでは走って戻る。今度は約45分で戻ってきた。



「ハァハァハァ……いや、だからさ……こんなに飛ばさなくてよくないか? というかルシアさんはともかく、レンもよくそのスピードで走れるな!?」
「ラムセト砂漠をずっと走ってたんで、なんか慣れちゃいましたね」
「いや、慣れたら走れるとか、そんなレベルの話はしていないんだが、いまさらだな……」

 う~ん、どうやら僕の感覚も少しおかしくなってきてるんだろうな。気を付けないといけなさそうだね。

「それじゃいよいよ案内するところは、ボレアザントで一番の娯楽スポットである競馬場だ!」
「競馬場って何をするところなの?」
「お前、競馬を知らないのか? ボレアザントと言えばハンターの町であり、何と言っても競馬が有名なんだ。サンネイシス帝国では子どもでも競馬のことを知らないやつはいねえ。やっぱりお前たちはサンネイシスの人間じゃないんだな。……まあ、それはどうでもいいことなんだがな。他国の者ならなおさら競馬は見ておくべきだぜ。あの興奮は他じゃ味わえないからよ」
『ふむ。我も競馬場には行ったことがないな。面白そうだ』

 すでに興奮気味のレナールさんの案内で競馬場に到着した。
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