教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
59 / 131
第4章 帝都アウシルバード編

58 皇位継承戦③

しおりを挟む
 ロンジンは身長が2m20cm程あり、鍛えられた筋肉を纏った見事な体躯を誇る獅子の獣人である。
 そして、今の彼は身長が3mを超え、顔、腕、足が銀色の獅子の姿へと変貌していた。

「それが噂で聞く聖獣化した姿か。左腕も元に戻っているし、凄まじい力を感じるな」

 帝国最強と言われるロンジンは、その圧倒的な膂力や斧の腕前が有名であるが、最強たる一番の理由は聖獣化にこそある。

 肉体的な強さを特徴とする獣人族の中には、ルーツとなっている獣の力を引き出すことができるものがおり、その力を引き出すことを聖獣化と呼ぶ。聖獣化が出来る者は僅かであるが、その効果は己の能力を飛躍的に上昇させる絶大なものである。

 レオーネの目の前に立つロンジンが静かにレオーネを見つめて語りだす。

「レオーネよ。俺はお前を対等の相手として認めよう。俺の聖獣化は通常のパワーアップに加えて、聖獣化時には超回復が行われる。腕を飛ばされたがそれも元通りだ。逆に言えばお前にそこまでやられたから聖獣化するしかなかったのだ。誇りに思え! それではいくぞ!」

 ロンジンは雄々しき獅子の姿とは対照的に、落ち着いた態度でレオーネに言葉を告げる。高圧的なところは変わらないが、酷い横柄さは見られないようにも感じられた。

 ロンジンが猛スピードでレオーネに迫ると、右手を振りかぶり、レオーネの左わき腹を狙って手刀を繰り出した。

「速いっ!!」

 レオーネは一瞬で接近を許したことに驚き、声をあげながらロンジンの手刀を躱そうとする。

「グハッ!!!」

 レオーネは手刀をギリギリで躱したものの、ロンジンはそのままの勢いで回転。さらに踏み込んで左の裏拳を左わき腹に命中させる。
 障壁魔法を纏っているレオーネであったが、その威力を殺すことはできず、左わき腹に拳を叩きこまれ、その威力で数メートル先まで飛ばされていた。

 観客席より大きな歓声が上がる。今の速い攻防を視認できたものは少ないだろう。ただ、聖獣化したロンジンはサンネイシス帝国の強さの象徴だ。その最強の男が挑戦者を吹き飛ばすシーンは観客を興奮させるに余りある姿であった。

「流石だな、レオーネ。最初の手刀を避けたのもそうだが、俺の拳を腹でうけたのにも関わらずすぐに立ち上がり、痛そうにはしているが大きなダメージには至っていないようだ」

 ロンジンはレオーネの姿を見て、冷静に状況を分析していた。

「いや、驚いたよ。聖獣化はどんなものかと思っていたが、想像の上を行っていた。俺も本気で行かないといけないようだ」
「強がりを言いおって……と言いたいところだが、どうやら本当のことのようだな。よいぞ。お前も本気を出せ! 俺も帝国最強の力を見せてやる」

 そこからのレオーネとロンジンは、まさしく帝国最強を決めるのに相応しい戦いを繰り広げていた。
 聖獣化により今までの数倍の力とスピードを操るロンジンと、獣人とは思えない魔力を操り、ロンジンに劣らないスピードと巧みな攻撃魔法で戦うレオーネ。

 観客も息を呑み、戦いを見守っている。もはやレオーネを嘲るものは誰もいない。
 強さを好む獣人たちにとって、強者とは憧れの存在であり、尊敬すべき者。舞台で戦う二人は紛れもなく強者であり、この二人のいずれかが最強と呼ぶに相応しいのだ。

 レオーネとロンジンの激しい攻防が15分ほど続いたとき、ロンジンがその動きを止めた。

「フハハハハッ!! 強い! 強いな、レオーネよ! 俺とここまで戦えたのはお前が初めてだ。――しかし何事にも終わりはやってくる。俺の聖獣化はあと少しで解けるからな。お前の魔力も大分減ってきたであろう。ここらで勝負を決めないとな。楽しい戦いの時間もこれまでだ」

 ロンジンの横には、舞台に突き刺したままの戦斧ディーンアックスがあった。

「なるほどな。そういえばお前は聖獣化してからは素手で戦っていたな」
「そういうことだ。別に手を抜いていた訳ではない。聖獣化した状態でディーンアックスを使うとエネルギーの消費が半端ではないのでな。お前の魔力を消費させてから使うと決めていたまで。ディーンアックスで戦えば5分ほどで聖獣化が解けるが、それで十分。覚悟を決めるのだな」
「面白い。帝国最強の攻撃ということか。手加減はいらん。決着をつけよう!」

 ロンジンがディーンアックスを持つと、その戦斧は美しい薄い紫の光を纏った。ロンジンの聖獣化と魔力に反応して、凄まじい力を秘めた状態になっている。

「行くぞっ!!」

 ロンジンが正面からレオーネに向かってくる。ロンジンがまだ少し離れたところからその戦斧を軽く振り回すと、いくつもの風の刃がレオーネを襲う。聖獣化してから放たれるその風の刃は威力、速度ともに遥かにレベルが上がっている。

 レオーネは最大限の魔力を集中して、何とか風の刃を避けてはみたものの、いくつかの刃は完全には躱しきれず、浅くはない傷を負っていた。

 そのタイミングを待ち構えていたロンジンは、一瞬にしてレオーネとの距離を詰めると、戦斧を右から左に全力で振るう。

 それはレオーネの残りの全魔力を使っても間違いなく防ぐことのできない威力であり、その攻撃は吸い込まれるようにレオーネに直撃した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...