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第4章 帝都アウシルバード編
59 皇位継承戦④
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戦斧ディーンアックスは、とてつもなく頑丈で、鋭い刃は名剣の切れ味にも劣らない。しかしその本領は使用者の魔力を増幅させて風属性の攻撃魔法に変換する能力である。
短所としては通常の戦斧と比べて遥かに重い重量であるため、自由自在に使いこなすには並大抵の腕力では足りない。しかし、サンネイシス帝国の皇族が代々受け継いできたディーンアックスを、父であるフィリップ皇帝から直々に譲り受けたロンジンは、その期待に応えるだけの膂力を身に付けるに至った。
更に聖獣化を使えるようになったロンジンが振るうディーンアックスは、凶悪なまでの威力を有することとなった。
その戦斧の全力の攻撃が直撃したのだ。レオーネは躱すことすらできなかった。つまり勝敗はここに決した。ロンジンの手はレオーネに当たったときの重い手応えを感じていた。
……手には重い手応え。通常であれば身体を真っ二つにして、手応えが重いというのは考えられない。その答えは目の前にあった。
「流石の一撃だ。俺もヒヤッとしたぞ」
「レオーネ、なぜ……。いや、お前のことだから一撃でぶった斬れるとは思っていなかったが、それにしても……お前! その腕は!」
そこには、黄金の獅子の左腕でディーンアックスを受け止めているレオーネが立っていた。
「俺も力を出し惜しみしていては負けてしまうのでな。聖獣化を使わざるを得なかった」
「お前も聖獣化を使えたのか……お前は俺の聖獣化に対しては己の魔力だけで戦って、切り札たる聖獣化を温存していたということか」
「母から受け継いだ魔力量と叩き込まれた魔力の操作技術が俺の戦いの本質であり、その強さを証明するために戦っている。しかし、帝国最強と言われる男は聖獣化をせずに勝てる相手ではなかったということだ」
先ほどまでの激闘が嘘のように静まり返った舞台上の二人。
「フハハハハッ!」
その静けさをかき消すように、ロンジンが突然笑い出す。
「そうか、そうだったのか、ハハハハハッ!」
ロンジンは宙を見つめて、一人だけで納得したように呟いた。
「――俺の負けだ、レオーネ。俺も馬鹿ではない。冷静になれば相手の強さを見る目ぐらいは持っている。先ほどまでより何倍もの力を秘めたお前に勝つ術を俺は持っていない。……無念だ。もっと鍛錬を積んでいれば、お前の強さに届いたのかも知れないのに、自分こそが最強であると驕り高ぶり、己を鍛えることをすっかり怠っていた。……殺せ。お前こそが最強だ」
そこにはレオーネの強さを素直に認め、皇位継承戦の敗北を宣言したロンジンが言葉の内容とは異なり、晴れやかな顔でレオーネを見つめていた。
少しの静寂のあと、レオーネは呆れた表情で話し出す。
「なぜお前を殺す必要があるのだ? 全く意味が分からん。お前は負けを認めたのであろう。それならこれで終わりだ。大体、俺は皇帝に興味がないのだ。お前と戦いたかったから皇位継承戦に出たまで。そしてお前の強さを十分に知ることができて満足している。可能であればまた戦いたいと思うほどにな」
今度はその言葉を聞いたロンジンが呆気にとられた表情を浮かべていた。
「皇帝に興味がないだと……ハハハハハッ! 確かに。お前ほどの強さであれば、皇帝という地位にもこだわらんのかも知れんな! しかし、それは許されぬ。何故なら我がサンネイシス帝国の皇帝とは武の象徴。お前がならずして誰がなる? これだけの観衆の前でその強さを見せつけたのだ。皇帝になるのはお前だ」
「やはりそうなるか。まあいい。皇帝の仕事はよく分からんが、俺なりの皇帝を務めてみよう。しかし、一つだけ訂正したい。お前は俺が最強だと言ったが、世の中は広いぞ。俺より強いものはたくさんいるはずだ。だからこそ強さの追求を止めはしない。常に挑戦して、最強への歩みを進めることが、俺の生涯のテーマだからな」
サンネイシス帝国の最強を決めるに相応しい皇位継承戦は、レオーネの勝利という結果をもって終了した。
その結果に驚くもの、喜ぶもの、困惑するものなど、受け止められ方は様々であり、しばらくの間は街での話題も皇位継承戦のことで持ちきりとなった。
それから約2か月後、第72代サンネイシス帝国の新皇帝が誕生した。
短所としては通常の戦斧と比べて遥かに重い重量であるため、自由自在に使いこなすには並大抵の腕力では足りない。しかし、サンネイシス帝国の皇族が代々受け継いできたディーンアックスを、父であるフィリップ皇帝から直々に譲り受けたロンジンは、その期待に応えるだけの膂力を身に付けるに至った。
更に聖獣化を使えるようになったロンジンが振るうディーンアックスは、凶悪なまでの威力を有することとなった。
その戦斧の全力の攻撃が直撃したのだ。レオーネは躱すことすらできなかった。つまり勝敗はここに決した。ロンジンの手はレオーネに当たったときの重い手応えを感じていた。
……手には重い手応え。通常であれば身体を真っ二つにして、手応えが重いというのは考えられない。その答えは目の前にあった。
「流石の一撃だ。俺もヒヤッとしたぞ」
「レオーネ、なぜ……。いや、お前のことだから一撃でぶった斬れるとは思っていなかったが、それにしても……お前! その腕は!」
そこには、黄金の獅子の左腕でディーンアックスを受け止めているレオーネが立っていた。
「俺も力を出し惜しみしていては負けてしまうのでな。聖獣化を使わざるを得なかった」
「お前も聖獣化を使えたのか……お前は俺の聖獣化に対しては己の魔力だけで戦って、切り札たる聖獣化を温存していたということか」
「母から受け継いだ魔力量と叩き込まれた魔力の操作技術が俺の戦いの本質であり、その強さを証明するために戦っている。しかし、帝国最強と言われる男は聖獣化をせずに勝てる相手ではなかったということだ」
先ほどまでの激闘が嘘のように静まり返った舞台上の二人。
「フハハハハッ!」
その静けさをかき消すように、ロンジンが突然笑い出す。
「そうか、そうだったのか、ハハハハハッ!」
ロンジンは宙を見つめて、一人だけで納得したように呟いた。
「――俺の負けだ、レオーネ。俺も馬鹿ではない。冷静になれば相手の強さを見る目ぐらいは持っている。先ほどまでより何倍もの力を秘めたお前に勝つ術を俺は持っていない。……無念だ。もっと鍛錬を積んでいれば、お前の強さに届いたのかも知れないのに、自分こそが最強であると驕り高ぶり、己を鍛えることをすっかり怠っていた。……殺せ。お前こそが最強だ」
そこにはレオーネの強さを素直に認め、皇位継承戦の敗北を宣言したロンジンが言葉の内容とは異なり、晴れやかな顔でレオーネを見つめていた。
少しの静寂のあと、レオーネは呆れた表情で話し出す。
「なぜお前を殺す必要があるのだ? 全く意味が分からん。お前は負けを認めたのであろう。それならこれで終わりだ。大体、俺は皇帝に興味がないのだ。お前と戦いたかったから皇位継承戦に出たまで。そしてお前の強さを十分に知ることができて満足している。可能であればまた戦いたいと思うほどにな」
今度はその言葉を聞いたロンジンが呆気にとられた表情を浮かべていた。
「皇帝に興味がないだと……ハハハハハッ! 確かに。お前ほどの強さであれば、皇帝という地位にもこだわらんのかも知れんな! しかし、それは許されぬ。何故なら我がサンネイシス帝国の皇帝とは武の象徴。お前がならずして誰がなる? これだけの観衆の前でその強さを見せつけたのだ。皇帝になるのはお前だ」
「やはりそうなるか。まあいい。皇帝の仕事はよく分からんが、俺なりの皇帝を務めてみよう。しかし、一つだけ訂正したい。お前は俺が最強だと言ったが、世の中は広いぞ。俺より強いものはたくさんいるはずだ。だからこそ強さの追求を止めはしない。常に挑戦して、最強への歩みを進めることが、俺の生涯のテーマだからな」
サンネイシス帝国の最強を決めるに相応しい皇位継承戦は、レオーネの勝利という結果をもって終了した。
その結果に驚くもの、喜ぶもの、困惑するものなど、受け止められ方は様々であり、しばらくの間は街での話題も皇位継承戦のことで持ちきりとなった。
それから約2か月後、第72代サンネイシス帝国の新皇帝が誕生した。
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