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第7章 土の大龍穴編
109 ユレアード王国に到着
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『着いたぞ。ここはテルスゲア大陸の東部にある山だ。麓にはシエルキという村がある。そこの名物である猪鍋が美味いのだ。昼食はそれにしよう』
ルシアの背中に乗ってネイスエル女王国を出発した僕たちは、テルスゲア大陸の東側にある山の中腹辺りに到着した。
ユレアード王国があるテルスゲア大陸は、世界で一番高い山”モントオール”があることで知られている。モントオールは大陸の西側に連なる世界最長の山脈の中にある。
ルシアからここまで来る間に教えてもらったんだけど、土の大龍穴はその山の地下にあるらしい。
てっきり山頂辺りにあるのかと思ったら全くの逆で地下だった。山の麓にとても広い洞窟があってその一番奥が大龍穴らしい。
「ルシア様、運んでいただいてありがとうございました。空の旅があのように快適なものだとは想像もしていませんでした」
初めてルシアの背中に乗って空を飛んだクリスタは、最初はどうなることかと思ったらしいんだけど、揺れないし、風も感じない快適な環境にビックリしてた。
『村に行く前に、今日からクリスタの解呪を始める。やり方は説明した通りだ』
クリスタにはユレアードに来るまでに色んなことを説明した。
僕たちが空の紋章を持つ時空間魔法の使い手であること。そしてクリスタの呪いを解くための方法として、呪いをかけられる前の状態まで時間を戻すことを伝えた。
ルシアの予定では一日に3日程度戻していって、1か月かけて約3か月前の状態に持っていくそうだ。
その説明を聞いたときのクリスタは言葉も無いという感じだったけど、「ルシア様とレン様でしたらそういうことができてもおかしくないですね!」と素敵な笑顔を見せていた。いやいや、僕は時間を戻したりできませんよ。いつか出来るようになるのかも知れないけどさ……。
ルシアがクリスタの前に行くと、ルシアの魔力がクリスタを包み込んだ。
『呪いと魔力を阻害しているところだけ3日間時間を戻す。少しだけじっとしておれ。――よし。終わったぞ』
「え? ルシア、そんなにすぐに戻せるの? クリスタ、何か変わった感じする?」
「はい。3日前に戻りました」
「えっ!? クリスタってそんなことが分かるの!?」
「ふふ。冗談です。余りにもあっけなく時間が戻ったと言われたもので、つい。
特に何か変わったような感じはないですね」
「冗談なのか。ビックリしたよ……」
クリスタがニコニコと僕を見ている。呪いがかけられていることに落ち込んでいる雰囲気も無さそうだな。
『ふむ。おかしな感覚が無いならそれでよい。これを毎日続けていくとしよう。レンよ。障壁魔法の指導は任せたぞ』
「うん。僕が修行するときに指導していくよ」
『それではシエルキ村に向かうぞ。着いてまいれ』
ルシアが麓を目指して駆け出した。僕とクリスタもルシアを追って走り出す。
「ネイスエルで武芸を修めているとは聞いてたけど、本格的に鍛えてたんだね」
ルシアが結構速いペースで走っているのに、全然疲れた様子もなくクリスタは付いてくる。
「はい! 私に武芸を指導してくれたのは人魚の集落のとりまとめ役をしているアリアナという先生です。武芸の基本はまず体力という教えで、小さいころから延々と泳がされて、足に変化できるようになってからは走り込みの特訓です。武器は短剣と薙刀をメインに叩き込まれました。おかげで魔法無しでもそこそこ戦えます」
身体の使い方を見ても、そこそこというレベルじゃなく戦えそうだ。王女をここまで鍛え上げるというのもすごいな。
「アリアナ先生は元ハンターなんです。当時はAランクだったと聞いてます。今はハンターを辞めて人魚のみんなを鍛えまくってますね。暴漢に襲われても大丈夫なように熱血指導です!」
そういえば人魚は容姿端麗な種族だから狙われるって話だったな。元ハンターのアリアナさんがみんなを鍛えてるというわけか。
「それなら障壁魔法と一緒に武芸の修行も続けよう。僕の剣術の修行にもなるから実戦訓練もやろうね」
「レン様のお相手が務まるか分かりませんが、よろしくお願いします!」
クリスタは王宮で会ってる時よりも活発で明るい感じだ。多分、こっちが本来の性格で、王宮にいるときは王女としての振る舞いを意識してるんだろうな。
『もうしばらく走るとシエルキ村に着く。念のためにドワーフ族について教えておくぞ。
ドワーフたちは好奇心旺盛で社交的な者が多い。しかし鍛冶師などの職人はこだわりが強くて頑固だ。そしてドワーフ族に共通するのは大の酒好きということだな。人族よりも魔力が強く、身体も頑丈だ。あと人魚ほどでは無いが長命な種族だ。見た目で年齢を見抜くのは難しいだろう』
なるほど。授業で習ったのはユレアード王国はドワーフが住む国ということと王様のことぐらいだもんな。あと、ものづくりが得意でお酒が好きっていうのは聞いたな。ウェスタール王国はたくさんの加工品やお酒を買ってるらしいからね。
「私はドワーフの貴族や商人の方とお会いしたことがあります。王宮に挨拶に来られたのですが、豪快な方たちでしたね。母様が楽しそうに話しておられました」
はは。エレノア女王はそういうの好きそうだもんね。
話しながら走っていると遠くに建物らしきものが見えてきた。
「あそこ! 建物が見えてきたよ。シエルキ村ってあれかな?」
『そうだ。あれがシエルキ村だ。昼食が楽しみだな』
ルシアの背中に乗ってネイスエル女王国を出発した僕たちは、テルスゲア大陸の東側にある山の中腹辺りに到着した。
ユレアード王国があるテルスゲア大陸は、世界で一番高い山”モントオール”があることで知られている。モントオールは大陸の西側に連なる世界最長の山脈の中にある。
ルシアからここまで来る間に教えてもらったんだけど、土の大龍穴はその山の地下にあるらしい。
てっきり山頂辺りにあるのかと思ったら全くの逆で地下だった。山の麓にとても広い洞窟があってその一番奥が大龍穴らしい。
「ルシア様、運んでいただいてありがとうございました。空の旅があのように快適なものだとは想像もしていませんでした」
初めてルシアの背中に乗って空を飛んだクリスタは、最初はどうなることかと思ったらしいんだけど、揺れないし、風も感じない快適な環境にビックリしてた。
『村に行く前に、今日からクリスタの解呪を始める。やり方は説明した通りだ』
クリスタにはユレアードに来るまでに色んなことを説明した。
僕たちが空の紋章を持つ時空間魔法の使い手であること。そしてクリスタの呪いを解くための方法として、呪いをかけられる前の状態まで時間を戻すことを伝えた。
ルシアの予定では一日に3日程度戻していって、1か月かけて約3か月前の状態に持っていくそうだ。
その説明を聞いたときのクリスタは言葉も無いという感じだったけど、「ルシア様とレン様でしたらそういうことができてもおかしくないですね!」と素敵な笑顔を見せていた。いやいや、僕は時間を戻したりできませんよ。いつか出来るようになるのかも知れないけどさ……。
ルシアがクリスタの前に行くと、ルシアの魔力がクリスタを包み込んだ。
『呪いと魔力を阻害しているところだけ3日間時間を戻す。少しだけじっとしておれ。――よし。終わったぞ』
「え? ルシア、そんなにすぐに戻せるの? クリスタ、何か変わった感じする?」
「はい。3日前に戻りました」
「えっ!? クリスタってそんなことが分かるの!?」
「ふふ。冗談です。余りにもあっけなく時間が戻ったと言われたもので、つい。
特に何か変わったような感じはないですね」
「冗談なのか。ビックリしたよ……」
クリスタがニコニコと僕を見ている。呪いがかけられていることに落ち込んでいる雰囲気も無さそうだな。
『ふむ。おかしな感覚が無いならそれでよい。これを毎日続けていくとしよう。レンよ。障壁魔法の指導は任せたぞ』
「うん。僕が修行するときに指導していくよ」
『それではシエルキ村に向かうぞ。着いてまいれ』
ルシアが麓を目指して駆け出した。僕とクリスタもルシアを追って走り出す。
「ネイスエルで武芸を修めているとは聞いてたけど、本格的に鍛えてたんだね」
ルシアが結構速いペースで走っているのに、全然疲れた様子もなくクリスタは付いてくる。
「はい! 私に武芸を指導してくれたのは人魚の集落のとりまとめ役をしているアリアナという先生です。武芸の基本はまず体力という教えで、小さいころから延々と泳がされて、足に変化できるようになってからは走り込みの特訓です。武器は短剣と薙刀をメインに叩き込まれました。おかげで魔法無しでもそこそこ戦えます」
身体の使い方を見ても、そこそこというレベルじゃなく戦えそうだ。王女をここまで鍛え上げるというのもすごいな。
「アリアナ先生は元ハンターなんです。当時はAランクだったと聞いてます。今はハンターを辞めて人魚のみんなを鍛えまくってますね。暴漢に襲われても大丈夫なように熱血指導です!」
そういえば人魚は容姿端麗な種族だから狙われるって話だったな。元ハンターのアリアナさんがみんなを鍛えてるというわけか。
「それなら障壁魔法と一緒に武芸の修行も続けよう。僕の剣術の修行にもなるから実戦訓練もやろうね」
「レン様のお相手が務まるか分かりませんが、よろしくお願いします!」
クリスタは王宮で会ってる時よりも活発で明るい感じだ。多分、こっちが本来の性格で、王宮にいるときは王女としての振る舞いを意識してるんだろうな。
『もうしばらく走るとシエルキ村に着く。念のためにドワーフ族について教えておくぞ。
ドワーフたちは好奇心旺盛で社交的な者が多い。しかし鍛冶師などの職人はこだわりが強くて頑固だ。そしてドワーフ族に共通するのは大の酒好きということだな。人族よりも魔力が強く、身体も頑丈だ。あと人魚ほどでは無いが長命な種族だ。見た目で年齢を見抜くのは難しいだろう』
なるほど。授業で習ったのはユレアード王国はドワーフが住む国ということと王様のことぐらいだもんな。あと、ものづくりが得意でお酒が好きっていうのは聞いたな。ウェスタール王国はたくさんの加工品やお酒を買ってるらしいからね。
「私はドワーフの貴族や商人の方とお会いしたことがあります。王宮に挨拶に来られたのですが、豪快な方たちでしたね。母様が楽しそうに話しておられました」
はは。エレノア女王はそういうの好きそうだもんね。
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