教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
126 / 131
第7章 土の大龍穴編

122 特殊個体の魔石

しおりを挟む
 ルシアが依頼している物を作るためには特殊個体クラスの魔石が必要らしい。
 そしてどうやらシルスさんは特殊個体の居場所を知っているようだ。

「ここらでは有名な魔物だからのう。特殊個体はこの山の山頂付近にいると言われる氷竜だ。Aランクハンターが討伐できなかったほどの強さだが、山頂付近から下りてくることもないから放置されておる魔物だ」

 Aランクハンターが勝てないなんて、やっぱり特殊個体ってとんでもない強さだな……。

『ふん。あやつらは我ら龍族の龍形態に似ておるから竜などと呼ばれておるが、しょせんは知性の低い魔物。我らが討伐してくれよう』

 ルシアが妙にやる気だぞ。魔石が欲しいんだろうけど、氷竜ということに触発された感じだ。

「シルスさん。山頂付近にいるということですけど、ここからどれぐらいで行けるのでしょうか?」
「ここは山の中腹だからのう。ハンターでも普通に登るのなら2日はかかる」
「2日もかかるんですか!? とんでもなく高いところにいるんですね!」

 僕が驚いていると、シルスさんが不思議そうな顔をしている。

「いや、それはそうだろう。モントオールは世界一高い山だからな」
「えっ! ここはモントオールなんですか?」
「なんだお主、ここがモントオールと知らんで訪ねて来ておったのか?」
「土の大龍穴からルシアの転移で来たもので、違う山に来たものかと思ってました」
「ガハハハハ! なるぼどのう。一瞬でモントオールの地下から中腹に移動したのなら、どこにおるか分からなくても不思議ではないのう」

 ここって霊峰モントオールだったのか。勝手に違う山に転移したものだって思い込んでたよ。

『それでは行くとするか』
「え? もしかして今から行くつもり?」
『当然だ。こんなことで悩む必要も無いだろう』

 こんなことって……特殊個体と戦うんですよ?

「でも、山頂付近に行くまでに時間もかかるし、準備もいるんじゃないの?」
『あほう! 馬鹿正直に山を登る必要は無いのだぞ? 転移すればすぐだが、それよりも飛んで行けばいいだけだ。お主は飛べるようになったことを忘れていないか?』
「あっ、そうだね……。飛んで行けば早いね」
「え~! レンにいちゃんって飛べるの? 本当にすごいや!」

 カノアくんがまたまた目を輝かせて僕を見てる。そうだね。飛べるのは普通じゃないよね。

『それではシルスよ。今から行ってくるゆえ、昼食の準備を頼む』
「ガハハハッ! ルシア様はお昼どきには戻ってこられるおつもりか。これは本当におつかい感覚だのう」

 シルスさんが豪快に笑いながら僕たちを見送ってくれた。



『どうだ。飛べるとすごく便利であろう?』
「いや、それは本当にそうだね。この高さを普通に登るのなら1日かけても無理だと思うよ」

 浮遊の魔法のおかげで山頂付近にもまもなく着きそうだ。障壁魔法と風の加護があるから寒さや酸素が少ないことも何の支障もない。

『そろそろ山頂付近だ。戦闘の準備を怠るなよ』
「やっぱり僕が戦うんだね。戦闘の準備と言っても、氷竜という名前で想像できる戦闘シミュレーションぐらいしかしてないけどさ」
『それが大事なのだ。あらゆる状況を想定しておくことが基本だ。想定外にも対応できるようにな』
「うん。それはできてるよ。……あれ? 山頂付近には巨大な魔力反応がいくつもあるよ! 氷竜以外にも魔物がいる?」

 僕の探知魔法にはとても大きな魔力反応がいくつも見えている。しかもこれ、あのときのクイーンサンドワームよりも大きくないか? そういえば以前倒したクイーンサンドワームはフライアがまだ生まれたばかりのやつって言ってたっけ。
 いや、そんなことより特殊個体クラスの魔力反応がいくつもあるんですけど! それぞれの距離は離れてるから群れでは無さそうだけど。

『氷竜は一体だけなんて誰も言っておらんぞ? モントオールの山頂付近は特殊個体の氷竜どもがねぐらにしておるのだ。別に全てを討伐する必要は無い。ここから一番近いやつを狙うとしよう』
「そういうことね。それじゃあ僕の探知魔法で一番近いやつを目指すよ」

 いよいよ山頂付近に近づいてきた。この辺りはかなり吹雪いてるな。視界が悪い。

『レン、気をつけろよ。相手も気づいているぞ』

 僕たちからは全く氷竜が視認できる距離じゃないんだけど、僕たちは魔力反応で相手の場所をとらえている。
 氷竜も何らかの方法で僕たちに気づいているわけか。確かに相手が臨戦態勢に入ってる空気を感じるな。

 僕は警戒を一段階上げて、氷竜に近づく。
 とにかく先制攻撃はこちらから行きたいね。様子を見るような余裕は無いのだから。

 さて、クイーンサンドワーム以来の特殊個体との対決だ。今できる全てのことを出しきるぞ!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

処理中です...