999本のバラを君に

恋桜苺

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その10 ~紫苑の過去~

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その10 ~紫苑の過去~

 今回は少しだけ昔話をしよう。とある街に住んでいた男の子の話だ。
 男の子には母と父の家族がいた。みんなで仲良くその街に暮らしていた。生まれた時から住んでいて慣れ親しんだ街だった。近所との仲もよく、友達もたくさんいて毎日がとても楽しかった。それになにより家族との中がとてもよく幸せな日々だった。しかしそんな日々も突如終わりを告げた。幸せはそう長くは続かないものなのだ。
 ある日のことだった。突然男の子はある病気にかかった。まだ発見されてなく医者も何が何だか分からなかった。なので薬もあまり出せる訳もなく、高い熱が出て吐き気や頭痛も酷くそれをどうにかする術も無かったため家で過ごす日々が多くなった。そんな時隣の人がこんなことを言った。
「あのお宅の子供、正体不明の病気にかかっているんですってね。しかも感染する可能性のある病気だそうよ。」
 全くのデマだった。感染する事はないと医者には言われた。信憑性は無かったがとあるウィルスが多かったらしく、それは感染しないものだそうで伝染る危険は無かった。しかし人はそんな事をすぐに鵜呑みにしてしまう。そして人は噂が好きなものだ。人から人へと、その噂はどんどん広がっていった。
 男の子は順調に回復していっていた。しかしずっと家にいたためそんな噂が流れていることなんて全く知らない。久しぶりに学校へ行った時クラスメイトや先生の男の子を見る目はまるで汚物を見るかのような物だった。
 伝染らないのに伝染るから近寄るなと階段から落とされ、消毒してやると言われ消毒液をかけられ、何度も助けを求めた。しかし誰も助ける人はいなかった。先生も見て見ぬふりをしていた。友達だと思っていた人にも全員に裏切られた。
 そして高校1年生になった頃には病気は治っていると言われていたのだが男の子を待ち受けていた結果は、
「残念ですが悪化しています。このままなら後余命は2年しかありません。」
 まさかの余命宣告だった。ストレスなどが重なり悪化してしまいもうどうしようもない所まで来てしまったらしい。男の子は笑った。
「そうですか。じゃあ残りの時間を楽しんで生きます。」
 笑いながらそう言ったのだ。親はなんとかならないのかと医者に泣きついた。手術でなんとかならないのか、薬はないのか、しかし人生は残酷で何も為す術なはなかった。
 そこで親はある決断をした。
「引越しをしよう。景色がもっといい場所があるんだ。空気も綺麗できっといい所だ。」
 ちょうど父の転勤が決まっていたのでそれと同時に引っ越すことにした。あのいじめられている空間から離してやれれば、もっと色々な人と触れ会えれば。親なりの最善の策だったと思う。
 そして2年生になると同時にこの街へ来た。そして恋を知った。仲間の絆というものを知った。しかし今また悩み始めている。この恋という気持ちをどうすればいいのかと。こんなに悩むくらいなら持たない方が良かったのでは無いかと。
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