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手紙
しおりを挟む「美里のやつ……俺があげたやつちゃんと大事にしやがってよ。……ん? 箱の底になにかある……これは、手紙?」
◇
友次へ――。
読みにくい字でごめんなさい。でも、どうしても書いておきたくて、あなたに伝えておきたくてこの手紙を書くことにしました。
だけど、なにから書いていいのかわからないや……えへへ。
伝えたいことはたくさんあるのに、手紙って難しいね。
だから、先に今の気持ちを書こうと思います。
友次。私はあなたにとっても感謝しています。一生かけてもお返しできないくらい感謝しています。
本当にありがとう。
友次。覚えていますか?
あなたと初めて出会ったのは高校一年の春でした。
私は既に病気にかかり、笑顔も会話もろくにできなかった私に、優しく声をかけてくれたのがあなたでした。
あの時から、私はあなたに救われていたのです。
知っていましたか? 私、ママに高校をやめたいって相談をしていました。
高校で友達ができるかも不安で、孤独に学校生活を過ごすくらいなら、残り少ない人生は好きなことに使いたいと思っていたからです。
あなたが現れたのはそんな時でした。
ムードメーカーで人気者のあなたは、『私の最初の友達は俺』だと周りに公言し、私を孤独から救ってくれました。
そして病気を打ち明けた日、あなたはいってくれました。
『お前が大好きなんだ』って。『これからもずっとずっと側にいるんだ』って。
私、嬉しかった。
本当に、本当に嬉しかった。
だから私も決めたのです。残りの人生を、あなたがいる学校に通うと。
それからもあなたはいつも私と話をしてくれました。
仲良くしてくれました。
あなたはあの時にいったように、私のためにたくさんの時間を使ってくれました。
そしてそれは三年生になってからも変わらなかった。
あなたは私とあなただけのお泊り会を企画したり、七夕には笹まで用意してくれたり、私のためにたくさんの思い出を作ってくれた。
お泊り会では、イエスはい枕カバーなんてものを持ってきてましたね。
私はその枕カバーをつけていたのに、男に二言はないからといって、最後まであなたは私を大切にしてくれました。
私の身体を気づかってくれるあなたのその優しさは本当に素敵だと思います。
だけど、私は同時にあなたのことを縛りつけているような気もしていました。それに私ももっとあなたのことを知りたかった。だからあの晩、私はいいよと伝えました。返ってきたのはあなたの寝がえりの顔ビンタでしたけど……。
素直になれなくてごめんなさい。
でも、イエスはい枕に一言だけいわせてください。
せめてイエス保留枕なら、ムードも私の気持ちも上手く表現できたのではないかと……って、私、なにを書いているのだろう……。今のは見なかったことにしてください……。
それから、七夕ではあなたのお願いごとを見ました。
『美里の病気が治りますように』
本当に嬉しかったです。
最初はお願いなんて叶わないのにと消極的だったのですが、今となっては短冊にお願いごとを書いてよかったです。
『桜が見たい』
私のこのお願いごとを叶えてくれる彦星様が、あなただとわかったからです。
また来年の四月にも、あなたと一緒に桜を見たかったのですが、今年の分のお願いごとはもう使っちゃったみたいです。
気持ちを通わせることができて本当によかった。
夏には私を夏祭りに連れていってくれましたね。
たくさん食べて、たくさん笑って、本当に幸せでした。
射的では、私のために何度も挑戦してくれて嬉しかったです。
あんなに夢中になるあなたの横顔はとっても素敵でした。
ウサギのお面や桃のヘアピンは今でも大切な宝物です。
それから打ち上げ花火が上がる時、あなたはまたくさいセリフをいいましたね。
もちろん嬉しかったです。
だから私は、あなたに大好きだといい返しました。
この時はまだあなたへの気持ちを抑えていたから、こういった形でしか直接伝えることができなかったのです。
ごめんなさい。
そして最後のお誕生日。
朝は秋の桜を見て、夕方はあなたと公園でデート。そして夜はバースデーパーティ。
まさかこんなに素敵な一日になるなんて思いもしませんでした。
準備から参加までしてくれた柳士くんや奈海ちゃんや百々ちゃんにも感謝しています。
段ボールのさいころ投げは本当に楽しかったです。
それから誕生日プレゼントとしていただいた指輪。
この指輪が今後どれほど私の心の支えになったことでしょう。
友次は、本当に私のことを一番に考えてくれていたのだと実感しました。
文化祭ではあなたの劇を、こっそりと見にいきました。
そのことはもうママから聞いているのでしたね。
素直にいえなくてごめんなさい。
体育館ではあの頃の記憶がよみがえり、一人で泣いていたのを思い出します。
とっても、とっても素晴らしい劇でした。
『俺は……お前が大好きなんだ!』
本当に大好きなセリフです。
もし、私も劇に出ていたら、私はちゃんとかまずにいえたのかなって。
そしてクリスマス。
まさか告白されるなんて思いもしませんでした。
といいたいところですが、実はママから聞いていました。
私は、残されるあなたのことを考えて、付き合うべきではないと考えていました。
好きになるほど、いなくなった時の哀しみが大きくなるから、だから本当は断るつもりでした。
でも、できなかった。
受け入れてしまった。
あなたが私のことを好きでいてくれて本当に、本当に嬉しかったから。
それだけじゃなく、あなたは私に元気をくれた。
心臓がとても温かくなって、今の私なら強く生きていけるって感じました。
だから私は、あなたとお付き合いすることにしました。
一緒に過ごした年越しも、外すことはできない思い出です。
お泊り会以来でしたね。あなたと一緒に夜を明かしたのは。
初日の出を待つ間の短い時間だったけど、とても幸せな時間でした。
あなたの寝顔はすごく愛おしかったです。
なのでついあの時……ふふ。
振り返ると、あなたはいつも私のためにいろいろなことをしてくれました。
お返しできないくらいに、たくさんのことをしてくれました。
そして、私はあなたのおかげで、あなたに気持ちを伝えることができた。
大好きって気持ちを、直接あなたに伝えることができた。
ありがとう。
本当にありがとう。
私はとっても幸せでしたよ。
あなたはいってくれました。
『私よりも俺の方が大好き』だって。
そんなことないよ。
私のほうが、あなたよりもずっと、ずっとずっと大好きでしたよ。
それだけは紛れもない事実ですからね。
あなたがこの手紙を読む頃には、私はもういないかもしれません。
だから、ずっと前から決めていた最後のお願いごとをこの手紙に書いておくことにします。
『友次が幸せになりますように』
これからは、私の分まで幸せに生きてください。
そして、今は辛いかもしれないけれど、いつかは前を向いてしっかりと歩んでほしい。
私のお願いごとを叶えてくれる、あなたの織姫様と巡り合えるように。
最後のお願いごともきっと叶うと信じています。
その望みが叶うよう、私はいつもあなたのことを見守っています。
◇
「美里……ばかやろう……お前は、大馬鹿やろうだよ……うう……美里に……こんな手紙を残されて……いったい俺はどうやって前を向けばいいんだよ……ばかやろう……うう……会いたいよ……お前に……美里に、会いたいよ……」
◇
「……いっけね、大事な手紙が濡れちまった。拭いとかなきゃ……って、P.S……?」
『P.S スマホのボイスメモ』
「……スマホ? あいつ、スマホ持ってたっけ……。いや、なかったような……。そうすると……俺のか?」
「……」
「……データがある。……再生、してみるか」
『俺は……お前が大好きなんだ――』
「これは……劇の、録音?」
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