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想い
しおりを挟む「こんにちは~」
「あら、友次くんじゃない!」
「お久しぶりです、おばさん」
「まあ~随分と大きくなって……!」
「そんなことないですよ」
「そんなことあるよ! 成長期っていうのかしら? 前よりもたくましくみえるわね」
「前は美里の誕生日にお線香をあげたので……約半年ぶりですね」
「もうそんな経つのね~。ささ、玄関前だとなんだし、入って入って」
「お邪魔します」
◇
「本当にいつもありがとうね」
「いえいえ。俺も来たくて来てるんです。ほんとにお構いなく」
「友次くんもすっかり大人になったわね」
「そんなことないですよ。あ、そうだおばさん。俺、ニラのスクランブルエッグ練習したんですよ。材料も買ってあるんで後で振る舞いますね」
「あらあら。それじゃあどっちが美味しいのか私が審査してあげる」
◇
「あの、おばさん」
「どうしたの友次くん」
「線香をあげた後、今日も美里の部屋に入ってもいいですか?」
「もちろんよ」
◇
「前もこうやってベットに寄りかかって話してたよな」
「……」
「……なあ、覚えてるか? 美里。最後の夏祭り」
「……」
「あの日は楽しかった。ずっと美里の手を引いてゆっくりと一緒に歩いたよな~。久しぶりに触れたお前の手はすごく繊細でさ、少しでも強く引っ張ると壊れてしまいそうだったのを覚えてるよ。普段はさ、お前は自分の弱さを見せまいと、俺に触れられないよう気を張ってたな。まあ、俺はわかってたから気軽に触れないようにしてたんだけどさ、でも夏祭りの時は自然と手を握り合った。俺、あの時むちゃくちゃドキドキしたんだぜ」
「……」
「それから、俺が散々書けっていった進路調査も、お前は結局白紙で出しやがった。だから俺、お前に元気が足りないと思ってさ、おばさんに必死に頭下げて頼みこんだんだ。誕生日の家族旅行に俺も参加したいって。短冊で桜が見たいってお前は願ってたのを知ってたからさ、おじさんとおばさんと一緒に美里に桜を見せる計画を立ててさ。お前が桜を見た感動のあのシーンは今も頭をよぎるんだぜ?」
「……」
「そういや手紙で、お前はイエスはい枕カバーをつけてたのにって書いてたけどさ、あれ、単純につけてたことに俺が気づいてないだけだったんだ。俺、ずっとドキドキしてたから気が回らなかったのかもな。……もしも気づいていたらキスぐらいしてたかも」
「……」
「あ、そうそう。キスで思い出したんだけどさ、年越しの美里のファーストキス……あれ、俺もなんだぜ。たまたま目が覚めてさ、美里の本音が聞けるかなって期待したんだけど、まさかキスされるなんて思わなくてさ……はは。動揺して思わず反応してしまったんだ」
「……」
「それから、手紙で書いてあったイエス保留枕カバーだけどさ、確かにと思って作ってみたんだ。でもよ、使う相手がいないから、意味がなくてさ。だからここに置いておこうと思って今日持ってきたよ。……つけてていいか?」
「……」
「……さすがにおばさんにばれたらややこしくなるか」
◇
「俺の宝箱入れはたしかここに……あれ? 違ったか? ……水色のハンカチ、水色ハンカチ……ああ、あったあった」
「……」
「カメのお面も懐かしいな。……ここに、枕カバーと……指輪と……前のスマホを入れてっと」
「……」
「美里。俺さ、前に進もうと思うんだ。……だから今日、美里と過ごした思い出の品を全部ここに残していくよ」
「……」
「スマホの中にある写真とかメモとか、美里に関するものは結局消せなくてさ、だからスマホを変えたんだ。美里と過ごした日々は間違いなく存在した。だからそれを消すんじゃなくて、しっかりと踏みしめて進むためにも、こうさせてほしいんだ」
「……」
「ああ、これも……しまっておかないとな。……この手紙さ、お前がいなくなってから毎晩のように読んだんだぜ。もう涙としわでくしゃくしゃだけどさ、俺の宝物だから一緒にしまっておくよ」
「……」
「手紙にはさ、美里はなにも恩返しができなかったって書いてあったけど、全然そんなことなかったよ。お前と過ごした日々はさ……俺にとってはかけがえのないものなんだぜ……だから、本当に……ありがとうな……」
「……」
「なんだろうな……俺さ……前に進もうとしてるのに……お前の声が聞きたくてさ……聞きたくてさ……最後の最後までごめんなんだけどさ……もう一度俺の背中を押してくれないか……?」
「……」
「……よかった。前のスマホの電池はまだ残ってる。ふう……これの再生も最後にするから……」
『俺は……お前が大好きなんだ! ……私も、大好きだよ』
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