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第十話

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影属性について語ってくれていたこいつユズリアのお陰で先手を取れた俺達。すぐさま刀を抜いて戦闘を開始する。敵を鑑定すると、「レッドリザードマン」と表記されるのが二つ……って、これ俺が朝飯に食ったヤツじゃねぇか!朝ご飯が俺を食いに来たってか!?ざけんなやぁ!

「リザードマンですね……先に先手仕掛けます。貴方は後方のリザードマンを……」
「いや、全部殺す……朝飯が俺を殺しに来たんだからな……昼飯もお前だぁあ!」
「あ、ちょっと!?」


という事で武術を使う。使い技は……すぐに切り込める剣技。黒王龍のイメージを……体に定着させる。あらゆる生命への頂点、龍の中の王であるあいつの姿を。どう蹂躙するかも、どう敵を殺すのも好きに決めれるという奴らの余裕……あ、なんか思い出したら腹立ってきた……殺すっ!


「『武術・黒王鏖龍』!」



『ギジャッ―――』

『グリャッ―――』



気が付くと、怒りに任せ放った牙突で敵を貫き殺していた。思考を掻き乱したのはダメだな、うん……あの黒王龍との戦いとか卑怯者がいたせいであんまり思い出したくないな。ただ、牙突は強かった、それだけでいいか。

「おお、すげぇじゃねぇか!」
「はぁ……勝手に突撃しないでください。今のは戦犯ですからね」
「悪ぃ、昼飯が飛びかかってきたなら駆逐しないとってな」
「レッドリザードマンは食べれますが、私調理スキル持ってないんですけど」
「え、魔物の調理にスキルいるのか?」
「えぇ……これくらい常識ですよ。魔物の体内にある魔素を生み出す魔核があるんです……それを取り除き、魔物の肉体に残った魔素を抜くのに調理スキルが必要なんですよ、分かりました?」
「お、おう…解説どうも」


ご丁寧に魔物の調理が大変だという事を見に染みさせられた。つまり、調理スキルはフグの毒抜きの為の資格みたいなもんか……そう思うとここの資格ガバガバだな?調理スキル持ってたら魔物調理出来ますよって……危ないような気もするけどなぁ、美味いのならそれでいいんだろうけど。

「食事は私が持ってきたんで。まぁ、ここで食う訳にはいきませんから少し広い場所で食べましょう」
「おう、ありがとな」 
「悪ぃな」
「まぁ、気付いてたの私だけですから……」


なんだかんだ教えてくれるのはまぁ優しい奴なのは分かる……魔眼が絡まなきゃな。一先ず、先に進む事にした。




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「ん?」


暫く歩いて、先程から周りを見渡しているシグルが何かを見つけた。

「何かあったか?」
「ああいや……こんな所に鉱石があるなんてな、それなりに歩いたが、こんな浅い所には到底ないぞ」

指差した場所には、白く鼓動を打つように光を放つ赤い結晶が壁に生えていた。本当に心臓、というか…生きているような感じを見受けられる綺麗な鉱石だ。

「ちょっくら鑑定してみるか」



[デトロント鉱石]


強い衝撃か熱が加わった瞬間に大きく爆発、または爆熱する鉱石。本来としての使い方は地表には出ていない根元の方。根元の鉱石は綺麗で純白、中々の硬さを持った鉱石が取れる……もちろん、露出している鉱石の方は全くといって使い道がない。特定のスキルを使えば加工が行えるが本当に意味があるのだろうか……?


……あれ?火薬ですか?いや、火薬というより硝石やらetc合体してない?これはね、俺も滾りますわ……やるしかないですよねこのビッグウェーブに!
……いや、その前に鉱石系の加工スキルとかないと無理だな?でもこの世界でグレネードや銃火器、挙句の果てには戦車や戦闘機まで……そそるではないか!
という事で本気で考えると全然先になる可能性がある。このデトロント鉱石の爆発に長い時間耐えれる銃身と薬莢、更に薬莢は一つじゃなくて大量に必要……あー、面倒くせわ。ダメダメ、破綻してる…………ん?待てよ、そもそもその薬莢を作りたければ創造系に分類する魔法とかスキル覚えりゃいいし……よし!意外と早いかもしれん。

「あ、それデトロント鉱石ですね。根元の鉱石が希少なので私が取りますよ」
「あ、少し試したいことがあるんだが……試してもいいか?」
「え?爆破しなきゃ別にいいですけど」

ユズリアの許可が出たので、即座に鉱石に近付いて黒王龍のローブで包むと根元からすっと消えた。これめっちゃ効率いいな……

「え、鉱石消えたんですけど」
「ローブが異次元収納系なんだよ、鉱石に衝撃を与えずに楽に回収出来る……よっと、これどうするんだ?」
「貸してください」
「おう」

ユズリアに根元からどちらからも同じ形で伸びるデトロント鉱石を両手で持つと、力を込めて二つに割った。

「お、おい……それ大丈夫か!?」
「大丈夫ですよ。あ、これどうします?」
「……一応持っておくよ」

と、爆発する方のデトロント鉱石をローブの影に収める……ったく、アブねぇなぁ……心臓に悪いというか、あまりにも突拍子過ぎて寿命が縮まる所だった。
それにしても、こんな事で簡単に……いや、簡単じゃないか。誰しも俺のようにこの空間収納系のスキルやアイテムを持っている訳じゃないし。
にしても、本気で使い道がないしこのデトロント鉱石の使い方が分からん。威力はどれくらいなのかはぶつけてみないと分からない……だが、警戒されるくらいの威力はあるという事であろう。


「んにしても、なんかデトロント鉱石が多いな……」

シグルがそう呟くので、周りを見渡すとかなりの数のデトロント鉱石が浮き出ている。だが流石に異常発生と言えるだろう、なんか火山に原因でもあるのだろうか……お決まりのアレ火山噴火一秒前とかになったら死ねる自信がある。

「深く潜らないと原因は分かりませんね」
「ま、この洞穴じゃ火竜の涙宝は見つからねぇ。地道に歩いて探すしかねぇぜ」
「だな……」

そのまま先に進み続けながらデトロント鉱石を回収し、背筋と肝を冷やしながら数時間、やっと大広場の様な渓谷に当たった。





「デケェな」
「そうですね、これならあるんじゃないんですか?」
「ああ、可能性は引き上げられたぜ。だが希少素材だから普通見つからん…手分けして探すぞ」
「了解でーす」


という事で分散して一人一人が探す事に。何かあったら呼んでくれればすぐに行くからな、と伝え残して俺も渓谷の探索を。結局魔法について教えてくれなかったのでまだまだ先になるな……にしても、本当にここ暑いな。また背筋と肝を冷やすか?まぁ、コートを脱いでるからまだ暑さはやんわりだが……火山だからか、というのもあるな。特に火山の探索はかなり危ないものであると思い知らされている。噴火した瞬間に確実に死亡する可能性があるしな、いくらファンタジーでも耐えれるか怪しい…俺以外。ステータスのDEFがどれくらいの性能かは全く分からないし、どれくらいの攻撃を受けても大丈夫なのか分からん。今のところ分かっているのは、武具のステータスは肉体にも影響しており、それに応じて強く硬い装備等を着ればその分ステータスが上下するという事だ。例えば強く硬い武器や装備を付ける場合、応じたSTRが無ければその分AGIが減る。そうすれば肝心な時に移動出来ない、と災難な目に会うので装着する武器等には気をつけないといけない。こうして考えると異世界は甘くないし、油断も出来ない。現実と同じである……他者から見れば楽園、異世界に居る者から見れば地獄……ろくな事がないね。

「ん?」

と、探索していたら綺麗な赤い大石を見つけた。鑑定してみるか……


[火竜の涙宝]

火竜の目に溜まった水分が洞窟の宝石の粉と共に時間を掛けて鉱石化したもの。あらゆる鉱石の硬さを吸収して一つの鉱石と化すが、その用途は多種多様。武具や魔法媒体、装飾品や塗料にも使われる程に応用性が効く。また、使い方を間違えた場合使い物にならなくなる可能性がある。かなり大きく高純度な火竜の涙宝は金貨7000万枚は出せるという国もいる。この鉱石は高純度かつかなりの大きさを誇る。火属性に強い適応性を見せる。


「……よし」

という事で黙っておくとこにした。これはダメだな、使えん。というか軽々しく出せないな、と心で呟いてローブに収めた。流石にこれを加工するとなるとどれくらいの実力か分からないシグルに渡した時には何が起こるか分からん……代わりのを探そうかな……




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という事で暫く探し回って、なんと迷子になってしまった。馬鹿野郎何してんだぁ!
とまぁ自分で叱責入れてもあいつユズリアから十分貰うので良しとして、その代わりにいい鉱石が手に入った。鑑定して気になったのがこれらだ。



[カリュート鉱石]


黒い鉱石。真っ暗な深い洞窟に生成し、闇属性の魔素を吸収して大きくなるが、リザードマンに削られたり酸で溶かされたりする事がある為、無事なカリュート鉱石は中々表に出たことが無い。とある国ではこれの養殖をしようとして挫折した国が多く、未だに成功していない。デトロント鉱石の爆発に強く耐えれる鉱石で有名であり、装備も高純度なら金貨20000枚は出される。


[クルミタン鉱石]

高位再生薬(エリクサー)の管などに使われる金色の鉱石。加工が簡単でありながら、かなりの高度を誇り衝撃にとても強く、デトロント鉱石の爆発にも耐えれる。値段もかなり張り、自然生成もする。しかし、生成条件が適度な温度、属性が炎または光、いずれかのどちからを満たして深度が5クラス(最大で10)でやっと一欠片が生成されるので、人工的に作ろうと試みる輩が絶えない。



うん、めちゃくちゃ薬莢と銃身に相性良い奴あった。これはもう運命と言っていいですよ、はい。というかいきなりこんなに強くなったのなんで…………特に装備は変えてない、つまりLUXが働いたって事かな?
にしても効果が働きまくっている、怖くなるくらいに。ていうか皆養殖頑張り過ぎだろ、どんだけ金欲しいんだよ……
とまぁ、銃に関してやっと進捗が出来上がったと言っても過言ではない。後は鉱石操作と試行錯誤しておくだけだ。で、個人的に実験したい事がひとつ。




カリュート鉱石の養殖、出来るかもしれない。



はい、何言ってんだどんな国も失敗してんだよ…って、言いたいよね。特にユズリアとシグルがいたら絶対言ってたであろう。今も歩きながら鉱石を取っているであろう……で、話の続きだ。忘れないように考えておかないとすぐに頭から抜けちゃうからね、やり方は簡単だ。



このローブに鉱石を突っ込んで後は時間が経つまで放置!


はい、終わりです。この二手間でカリュート鉱石が増えます…この説を思い付いた理由について、今一度復習しておこう。まず、鉱石の発生方法を鑑定した時に『鉱石から鉱石が生まれていく』場合と『空気に乗った鉱石の欠片や粉が魔素を吸収して鉱石化する』場合があるとの事だ。目をつけたのは前者、鉱石から鉱石を生み出すやり方だ。前者を達成する為には、鉱石が再生成する為に条件を満たす必要がある。カリュート鉱石再生成の条件は闇属性の魔素が溢れ、出来るだけ暗い場所が必要…………はい、これ全部俺のローブで何とかなります。場所として判定が出るか怪しいが、闇の魔素(影の魔素も含め)と暗闇という判定を全て当て嵌めれるこのローブ…可能性としては五分五分で再生成が可能になる。こうすれば高純度のカリュート鉱石の養殖を可能にしつつバレル、グリップ、シリンダー、ハンマーも作れる。他のパーツは細かいからあの駄神エルから作り方教えてもらおう。それくらい出来るはず…出来ないとマジで次から駄神って呼ぶしな。という事で、俺の野望part1でした、ありがとうございます……





「あー!いましたよあの人!」
「あ?……って、お前か…イッタァ!?」
「はいはい、ユズリアさんです。指定数集め終わったので帰るとの報告ですよ…何してたんです?」
「深い所まで潜ってたわ、わざわざ探す為に………ていうか、脇腹痛い…」
「えぇ…それで迷ってたら元も子もないじゃないですか。あと、脇腹はわざとです」


別の洞穴からユズリアの声が響き、すぐにこちらへ近づくと思い切りチョップぶち込まれた。それなりに痛い……
にしてもよく分かったな?どうやってここまで来たんだろ。


「さて、さっさと依頼主のシグルさんの所戻りますよ…ワイバーン辺り来てもおかしくないんですから」
「お、おう…」



……なんで分かりやすいフラグ立てるの好きなんだろうな、異世界の人達って。



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今回の進捗6(進行中…)(進捗6/100)

進捗6『英雄王として、自身の名を村、街、国、種族へ知ろしめる。』(進行中)

世界移動回数『1』 世界攻略回数『0』(上限無し)


NEXT→通り魔『4』


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