婚約破棄された令嬢は森で静かに暮らしたい

しざくれ

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テストから数日が経って――

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 ソフィアの自室。
 開かれた窓外にある満月を、ソフィアは笑みを浮かべながら見ていた。
 そこに、一匹の聖獣が現れる。


 上位貴族の令嬢の一室。それは平民がリビングとして使う部屋の数倍の大きさはある場所だ。
 しかし、それでもその聖獣は部屋ギリギリの大きさだった。


『……もっと小さくならねばダメか』


 聖獣はそう呟いて、ポンッと煙を焚き姿を小さくした。
 ソフィアはそれに少し動じたが、穏やかに聖獣を迎えた。


「お久しぶりです、聖獣様」
『分かるのか。幼体の姿ではないのだがな』
「ええ。あれはテストのためのお姿でしょう。ひ弱に見せるための」
『ご明察だ。初代からの言いつけでな、聖女を決める際に使うのだ。いつの代の王にも頼まれている』


 そう。
 この聖獣こそがテストの時に傷を負わせられた幼体の聖獣だった。


『しかし、あれでよかったのか』
「あれ、とは?」
『これほどの洞察力なのだ、分からぬはずもあるまい。聖女をそなたの妹に譲った件だ』


 わざとらしく「あぁ」と頷き、ソフィアがニッコリと微笑む。


「いいんです。あれから、家の妹に対する待遇はよくなったので。ありがとうございました、聖獣様」


 ソフィアがぺこりと頭を下げる。
 聖獣はそれを見て目を細める。納得がいかないとばかりに。


 事情は聖獣も理解していた。
 素質あるソフィアが厚い待遇をされ、妹のほうは比較されあまり良い扱いではなかったのだと。
 それを見かねたソフィアが、聖女を妹に譲ったのだと。


 だが。


『選んでおいてなんだが、あれは聖女には向かわないぞ』
「きっと、いずれ成長してくれます」
『できなかったときは?』
「――私の手でなんとか……したいですね」


 ソフィアが可愛らしく苦笑いを浮かべる。
 聖獣はいい加減だ、っと訴えそうな顔つきをした。


『だがな、おまえの待遇はどうなったのだ。妹の立場に自分がなっただけではないか』
「……ええ、まぁ。ですから、ね」


 ソフィアが窓の外をさす。
 聖獣は怪訝そうに肩眉を下げて窓の近くを見る。
 窓の外には――ロープが垂れ下がっていた。
 それが意味することは……家出。


『お主っ』
「えへへ。ちょっとやってみたかったんです」
『……なんというかお茶目だな。初代に随分と似ておる。――のう、我もついて行こうか』
「聖獣様が、ですか?」
『ああ』
「うーん……いえ、ここは一人で。ちょっと一人になって見たかったんです」
『ふっそうか。我の同伴を拒むとはな』
「ごめんなさい」
『いや。こんな家からはやく出るのだな……――よ』


 最後の部分は、聖獣が意図して小さく言っていたためにソフィアには聞こえなかった。
 だが、ソフィアはロープをしっかりと持って言った。


「それじゃあ、ありがとうございました。聖獣様」
『ああ、達者でな』


 それが、ソフィアが家を出た一幕のことだった。
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