亡国戦線――オネエ魔王の戦争――

石和¥

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追記: パフェルの記憶

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 わたしは、愚かな役立たずだ。

 生まれ育ったのは、王国の外れにある、貧しくて土埃の舞うケイアル村。
 そこではライ麦と燕麦しか育たず、大人たちは陰気な顔で俯いて背中を丸め、痩せこけた畑に蹲っているばかり。わたしはいつもお腹を空かせ、見たこともない王都を夢見て、いまいる場所から逃げ出すことばかり考えてた。

 いつか、きれいな街で、きれいな服を着て、きれいなひとたちと、きれいな暮らしをするんだ。

 それがどういうものなのかなんて、何ひとつ知らなかったくせに。

 あるとき、王国でも有名なお菓子職人さんが若い女の子にお菓子の作り方を教えてくれるって聞いて、わたしは両親を必死に説得した。
 こんな村を出て行く機会は他にない。何度もお願いして、最後には許さないなら家を出るとまで脅して、根負けした両親から、どうにか送り出してもらうことが出来た。

 でも、わたしは知らなかった。知ろうともしなかった。

 “こうしゅうかい”というそれは、南部領国境城砦から河を越えた先、得体の知れない魔族が暮らすという魔王領だったのだ。

「みなさん、一緒に美味しいお菓子を作りましょう。よろしくお願いします」

 有名なお菓子職人たちが、全員獣人族ウェアだなんて誰が考えるだろう。

 正直にいえば最初は少し怖かったけど、接してみるとふつうの……とっても優しくて可愛らしい女の子たちだった。

 職人さんたちのまとめ役は、人狼族ウォルフのカナンちゃん。
 本格的なお菓子作りなど知識も経験もない王国の女の子たちに、カナンちゃんたちは根気よく優しく丁寧に教えてくれた。
 悪戦苦闘の末に初めて作ったいびつで焦げ跡のある焼き菓子を、わたしたちは笑いながらみんなで食べた。それは涙が出るほど美味しくて、夢でしかなかった未来が目の前で形になった気がした。

「村に帰りたくない。ずっとここにいたい。お菓子を作って、カナンちゃんみたいな立派な職人さんになりたいの」

 思わず漏らした言葉は王国の子たち全員が同じ気持ちだったみたいで、困った顔で笑うカナンちゃんの反応を、わたしたちは食い入るように見つめた。

「ダメよ」

 予想通りの答えだったけど、ガッカリはしなかった。わかってたからだ。どうせ夢なんて叶わない。土埃に汚れて畑に蹲るような大人になる。そうするしかないんだ。

 でも、その後カナンちゃんは、わたしたちひとりひとりを真っ直ぐに見て、続けた。

「辛いことから逃げるために、お菓子を作っちゃダメ。そんなお菓子じゃ、誰かを幸せに出来ない。誰も幸せに出来ないなら……」

 そのとき聞いたカナンちゃんの言葉は、いまでもわたしの耳に残っている。

そんなもの・・・・・お菓子じゃない・・・・・・・

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