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システィアーナの婚約者
5.オルギュストのやった事
しおりを挟むオルギュストは自室に軟禁状態にあった。
鍵がかかっている訳でもないし、鎖や縄で繋がれている訳でもない。
が、執事と従僕、公爵家私設の騎士に見張られて、自由がない状況だ。
扉の外に騎士が立つ様子は、まるで囚人のようだと思った。
室内に執事と従僕が常駐し、見張られていると言っても過言ではない。
居心地は最低であった。
人の生命に関わるような大罪を犯したわけではないが、父親のセルディオにしてみれば、王命に背き、騎士道を修めた貴族紳士であるよう努める事を怠ったという咎人ではある。
「陛下直々に、お言葉を賜った。本来ならお前も御前に赴き、沙汰を受けるべきではあるが、まあなんだ、陛下の(阿呆の顔も見たくないという)温情により、私からの申し渡しとする」
(なんだよ、沙汰をとか温情によりとか、人を犯罪者みたいに)
不満があるのが見て取れる息子の様子に、セルディオは深いため息をついた。
「そうは言うが、お前はシスティアーナ嬢に対して誠実ではなかっただろう?」
「お言葉ですが、父上。他に愛した女がいるまま婚姻し、入り婿でありながら愛人を囲うような不誠実な男にならないよう、婚約を破棄して別れることこそが、誠実さではありませんか?」
「お前はそこまで愚かであったのか」
「なぜですか」
「お前は、王命をなんだと思っているのだ?」
「国王が下した命令」
質問者の意図を汲まず、ピントのズレた答えを出すのは、さすが親子であった。
「ただ国王陛下のお言葉というだけではない。王命──詔勅というものは、国・貴族社会を維持し、国土と国民、己が領地を守り、子々孫々に遺していくための、国王の打ち出した政策のひとつなのだ」
(なんだよ、それ。俺の結婚は馬や豚の交配かよ)
惚れた女とも一緒になれないのか。
ますます、口が尖っていく。椅子にじっとしているのも苦痛になってきた。
「王命に背き、貴族の務めを果たさないと言うことは、国王を軽んじ、己の出自を軽んじると言うことだ。よく考えなさい」
──なんだよ、それ
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