異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

29.温かな、優しくて力強い手

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「あんた、本当に人間?」

 ──どう言うこと? 人間じゃなかったら、何?


「妖精の羽衣が消滅したのって、あんたが【穢れ】だからじゃないの?」

 ──そんな事ない!! だって、穢れとか瘴気に染まったら、ゾンビみたいな死なない怪物になっちゃうんでしょ? 違うよね!


「あなた、本物の詩桜里なの? 本人かどうかは、私には判らないわ」

 ──そ、そんな……

 どうして、美弥子は、初めて会った時から攻撃的なんだろう? 過去に会った事もないのに。


「勝手に帰れば? 私はあなたを信用できない!!」
「嘘をついてるのよ! 出て行って! 二度と顔を見せないで!」
 

「処刑は出来ないが、ミヤコ様のためにお側に置くことは出来ない」

 ──処刑!?

 
「ミヤコ様のおためと、あなたの何かが穢れている可能性が否定出来ない以上、神殿に置くわけにもいかない」
「勿論、正体も解らぬ者を、王宮にあげることも出来ぬ」

 ──そんなっ

「処刑は出来ぬゆえ、どこへなりと行くがいい」

 ──せめて鞄を返してよ! どこへ行けばいいって言うの。この世界の事はなんにも知らないのよ?

 何も持たずに、何も知らない異世界で、たったひとりでどうすればいいの。

 陰鬱な寒村を抜けて、山を北西にくだる。
 明るい、温かそうな灯りが見えた。
 あそこで、休ませてもらえるかな……


「ツラい目にあったね。今日のところは、我が家でゆっくりしなさい。こちらにどうぞ」

 ──どうして、優しくしてくれるの? あなたは誰?

「わたしは、セルテイック・ヴァル・カインハウザー。今はこの、ハウザー城塞都市の地方領主さ」

 領主さま。お父さんよりちょっと若いのかな、と思ったら、わたしと7つしか違わなかった。失礼しました。白人男性の歳は判んないな。

「いやぁ、君を我が家に招いてよかったよ」

 ──本当? 歓迎してくれるの?

「もっと、自分を大事にしなさい」
「言えない事は言わなくていいから、嘘は言わない事。約束できるね?」

 ──いい子にしてたら、ずっと置いてくれるの?


「いいかい、ここでの君の名前だ。
 フィオリーナ・アリーチュ、15年前の秋に生まれた女性。アリーチュは秋月の事だよ。
 この街での身元を証明する号はヴァーナル(保護責任者) ・ティルジット。ティルジットは執事長セルヴァンスの姓だよ。セルヴァンス夫妻の養い子という意味だ」
 カインハウザー様は、優しく微笑んで、身分証となる木札に紐を通して、首にかけてくれる。
「いつも身につけているようにね」

 はい! ありがとうございます。……嬉しい。

「精霊の巫女様、光と風の恵みがありますように」
「さすが嫁ッコじゃ」
「嬢ちゃんのお手伝いは凄いな」
「フィオが精霊や妖精と仲良しで本当に助かるよ」

 わたしにこの世界での身分と居場所を与えてくれた人。

 精霊に好かれて、妖精を友人と出来る体質と上手く付き合う方法を、彼らを視る方法を教えてくれた人。

「カインハウザー様……」


「子供らしく素直に、大人を頼りなさい。頼ることは悪い事ではない」
「して欲しい事はあるかい?」

 ──手を、眠るまで、気持ちが落ち着くまで……

「手を、握ってて…… そばにいて」

 手の甲は身分のある人らしく手入れの行き届いた滑らかな肌をしているのに、手のひらや指には剣胝跡が残ってて少しゴツッとしてる、私のよりずっと大きくて温かな、優しい手。

「カインハウザー様……」

 力強く、でも優しく、しっかりと握られる。

「シオリなら、セルティックと呼んでもいいよ」
「セルティック、……さま」

 街では、執事さん夫婦の養い子でハウザー領主館でお世話になってる子供らしく、セルティック様とお呼びしてるけど、名前呼びは恥ずかしくて、屋敷に戻ると「カインハウザー様」に戻る。

「泣かないで。君がなくと、精霊達も悲しがる。……わたしも、つらいよ」
「セル……ティック……様?」

 え? 何? どこまでが夢で、どこからが現実なの?

 私は、ハウザー領主館で、カインハウザー様の私室に併設された、私のベッドに横たわり、ベッドサイドに椅子を置いて座って見下ろしているカインハウザー様に、しっかりと手を握られていた。


「もう、3日も目を覚まさないから心配したよ。よかった。どこか、具合の悪いところはないかな?」
「3日も?」
「そう、いつかの、妖精を視る訓練の時は、まだ魔力も霊力も残っていたから、力が入らない程度で済んだけど、今回は、極限まで魔力を使って、枯渇のため昏倒したんだよ」

 3日も寝てたなんて……

 安心したのか、カインハウザー様は肩を下ろすほど大きく息を吐いた。

 窓の外は明るくて、遠くに小鳥が飛ぶのも見える。
 穏やかな、領主館の朝、あるいはお昼だった。


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