異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

48.⭐犬を飼いたいの!②

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 アリアンは田んぼへ行ったり、帰ってきてヒラスさんの顔を覗き込んだり、林の中に飛び込んで、飛び駆け抜けて戻って来たり、楽しそうだった。

「なんというか、可愛いんだが、落ち着きないってえか、まるっきり空飛ぶ子供だな?」
 アリアンに木の葉をいっぱい掛けられて、苦笑いをするヒラスさん。

「す、すみません?」
 私がさせている訳でもないのだけど、なんだか謝らなくてはならない気になる。

「まあ、いいけどな。で? なにをするんだ?」
「まずは、遊び感覚でもいいから、畑仕事のお手伝いをやってもらおうかと」
 最近は、お忙しいのか、カインハウザー様もリリティスさんもあまり畑にいらっしゃらない。
 追肥も済んでるし、たまに雨も降ってるし、もう収穫までは、雑草取りや害虫駆除くらいしかすることがない。
 そこは、私が任されてるのだ。

「アリアン? あなたの中には水霊もいるんだもの、リリティスさんみたいに、お水まき出来る?」
 訊いてみても、首を傾げるだけ。

「リリティスさんが居てくれたら、見本になるんだろうけど……」
「どうかなぁ? 人間の使う魔術と、精霊の営む魔法とは違うんじゃないか?」
 ヒラスさんのいう事も一理あると思いながらも、とりあえず、カインハウザー様のやり方に倣って、脳裏にある精霊と交信をする時の第三の眼のような感覚を呼び起こし、まわりの水霊を探す。

 水田の方から、幾らかの霧のような水霊が漂い集まってくる。
「畑に、軽く霧吹きをする程度に、水分で湿らせたいの」
 目を閉じ、畑に水分が行き渡る様子を、映像で想像する。
 これが、正しいやり方かは判らない。
 でも、私は、妖精や精霊の言葉を使えるわけでもないし、映像イメージが伝わり易いと思ったのだ。

 解ってくれたのか、人や獣の形を真似られない程度の原始的な、しかしそれゆえに純粋な水を司る魔力の源である水霊が、ふるふる揺れた後、薄い霧状になって、畑全面に広がり、スーッと地表を湿らせていく。

 その様子を見ていたアリアンロッドが、嬉しそうな表情を作り、くるくるスピンしながら、畑の上空に飛び上がり、ピタッと止まると、両手を上げて広げ、畑一面に目の細かいシャワーのような、噴霧器で撒くような水を散らした。

「おいおい、俺にまでかけてくれるなよ」
 笑いながら、ヒラスさんは、楽しそうなアリアンを仰ぎ見る。
 アリアンはちょっと小首を傾げ、スーッと降りてきて、ヒラスさんの背中に張り付く。
 暖かい風が、林の方から吹き、あっという間に、ヒラスさんも私も、服も髪も乾いていく。

「便利なもんだな」
 物理的にはれられない、精霊のアリアンの頭を撫でるヒラスさんと、歳の離れたお兄さんに可愛がられる妹のような表情のアリアンが、楽しげで柔らかい笑顔を作る。

 ──カインハウザー様。あれアリアンが、私の感情を核に作られた存在だからああなんだというのは、納得いきません。



 その後も、水遊びを始めたり、風を起こして枯れ葉を飛ばしたりするアリアンを眺めていたけど、納得、或いは満足したのか、ヒラスさんは、田んぼの様子も見てくると、耕地の奥へ行ってしまった。

 一通り雑草をとり終え、抜いてクタクタになった草を積み上げると、周りの様子を覗いながら、繁みの中へ入る。

 エルバレオの根元は、落とされた葉でいっぱいでかさ高く、根は埋まって見えなくなっていた。

「わんちゃん、居るの?」
 湿って少し重くなってる落ち葉をかき分けると、白っぽい布の一部が見えてくる。

 そのまま全体が出るまで葉を払うと、妖精の羽衣を揺らし、狼犬の鼻先だけ出て来た。

「よかった。少しは元気になったかしら?
 今日は、山猪の燻製肉と、蜂蜜たっぷりのパンを持ってきたの。パンは、今朝、私が焼いたのよ?」

 狼犬は、食べ物の匂いを嗅ぎとったのだろう、スンスンさせながら、次第に妖精の羽衣から身を出してくる。

「野菜を食べるのは、それしかなかったから? 好きなの? お肉は好きなのよね? 豆狸を捕ろうとしてたくらいなんだもの」
 豆狸を口にすると、頭を下げて横を向く。

 やっぱり、人の言葉が解るんだわ。
 今のは、狸を取り損ねた事を言われたと、恥じたのよね? 猫も、狩りに失敗すると誤魔化すって聞いたもの。




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次回、Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

 49.犬を飼いたいの!③

 
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