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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
57.妖精王と目覚めの朝
しおりを挟むカラカルの妖精王サヴィアンヌのおかげで、朝までぐっすり眠れ、爽やかな目覚めを……
って、え? 今、何時!?
お屋敷からそう離れてない位置にある、リリティスさんの初ひとり暮らしの小屋。
いつまでもカインハウザー様の寝室に間借りしているのが恥ずかしく気がひける私のために、予定より早く昨夜からの使用を許可され、初めてのひとり暮らしに気を遣ってくださったリリティスさんが、お泊まりしてくれた。
寝物語に、リリティスさんの子供の頃の話をしてもらい、内容がちょっと寝づらい雰囲気になってきたのを、サヴィアンヌが癒しの魔法をかけてくれ、ゆっくり眠ることが出来た。の、だ、けれど……?
え? 腕時計は、10時を指している。リサイクルショップで購入したネジ巻き式で、もちろん、日本製の12時間表示のものだ。
この世界の1日は25時間。毎日1時間づつ進むことになる。今日はまだ合わせてないので、それでも9時……!?
いつもなら、4時に起きて朝食のパンの仕込みを手伝うか、5時起きで畑に向かうか、遅くても6時には起き出して、お屋敷の家政を任されているメリッサさんと、ハウスキーパーのお手伝いを始める。
でも、今、9時……?
与えられたばかりのひとり暮らしの小屋の扉が、ドンドン、ノックと言うより拳で叩かれている。
「シオリ? リリティスもいるのか? どこか具合でも悪いのか?」
カインハウザー様の不安げな声が聴こえる。
メリッサさんとセルヴァンスさんもいるみたい?
彼らが心配してるのが伝わってくるし、疲れて昏倒した時を除いて、今まで寝坊したことないのだから、心配するのは当然だろう。
皆の心配はもっともで、早く返事しなくちゃと思うのに、頭が真っ白で、反応できない。
どうして、もう9時なの? どうして、起きれなかったの?
そして、どうして、リリティスさんは未だに起きないの? あんなに、扉がドンドンいってるのに。
ぼーっと、ベッドの上で上半身を捻って、斜めに起こしたまま固まっていると、業を煮やしたのか、扉の鍵が外され、3人が雪崩れ込むように入ってくる。
本当なら女性の寝ている部屋に、男性であるカインハウザー様やセルヴァンスさんは遠慮するのだろうけど、寝坊して、訪問しても反応のない私達を心配して、そのまま戸棚で目隠ししたベッドの前まで駆け込んできた。
「シオリ!? どこか具合で……も……?」
一応上半身を起こしている私と、目が合う。
寝坊したとは言え朝だし、心配してくださってるのだし、せめて挨拶をしなくてはとは思うのだが、なかなか反応できない。
そして、隣で、私の左手を握って眠るリリティスさんは、この状況でもまだ、起きなかった。
「シオリ、大丈夫か?」
カインハウザー様がそっと手を伸ばし、固まった私の、頰を撫でる。
それでも状況が理解できず、ぼーっとしたまま、カインハウザー様の目をただ見ていた。
一応、私は起きているし、私が身を起こしているため掛布がはぐれ、リリティスさんのしどけない姿がのぞいていて、セルヴァンスさんはさすがに遠慮されて、リビング空間の方へ下がられた。
「今、9時? 時計が壊れてるんじゃなくて?」
「そうだ。初めての環境でなれなくて、寝つけずにいてまだ寝てるのだろうと、起こさずにいたが、幾らなんでも遅すぎないかと様子を見に来てもまだ静かなままで……
何時もなら、二の刻までに起き出して、何かしら活動していたのに、どうしたのかと……」
カインハウザー様のお顔を見ていると、ポロっと涙が落ちる。なんで?
「シ、シオ……シオリ? ……ど、どうし……」
見てるこちらがおかしくなるくらい、動揺されたカインハウザー様。
何度か、メリッサさんの顔を見て、オロオロした後、恐る恐るといった感じで、私の頰に当てていた手を後頭部へ回し、抱えるように胸に引き寄せる。
「たぶん、夢を、なにか夢を見ていたのだと思います。思い出せないけど」
「そ、そうか…… 夢でよかったな?」
頭を撫でてくれる。ここの基準でもうすぐ成人だというのに、この扱い。
そして、この状況でも起きないリリティスさん。
握られた左手が温かいので、具合が悪いわけでは無いのだろうけど……
リリティスさんの手をぼんやり見ながら、なぜまだ起きてこないんだろうと考えていると、
「リリティスは寝起き悪くないはずなんだがな?」
カインハウザー様も気になるのか、視線を私の頭の天辺から、リリティスさんへ移す。
ゆったりとしたシャツを着ていたので、お胸がまろび出る事はないけれど、カインハウザー様に見られたくはないのではないのかしら。
《ゴメンネ、ちょっと祈りが効き過ぎちゃった》
枕元の、サラダボウルにハンドタオルを敷いた寝床から、虹色の蝶が飛び出す。
《リリティスがいい子だったカラ、すやすや眠れるよう、眠りの癒しの魔法をかけたの、久し振りだったから効き過ぎちゃったノヨ》
ちょっとやり過ぎちゃった、テへ♡
そんな風に首を傾けて舌を出す美女の姿が脳裏に浮かぶ。
「害はないんだな?」
《そうよぉ? なんか、自分で昔話始めて、自分で過去の出来事や想いに傷ついたみたいだったカラ、よく寝れるように、眠りで癒す、妖精郷のとっておきの魔法をかけてあげたノヨ?》
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次回、Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
58.妖精王と狼犬⑤
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