異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

69.信頼するのと信頼たるかは別の話②

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「それでもいい?」
「はい。私が、カインハウザー様達のお役に立てるなら、利用されてもいいんです」

 カインハウザー様が、私の能力スキルなり精霊に好かれる体質なりを、領民のために都合良く利用したいと思ったとして、そのために、居場所を与え、食事を与え、親切な大人の顔を見せるのだとしても。
 そのためになら、私は……

「ストップ」
 カインハウザー様が大きな手で、私の口を押さえる。
「言っては駄目だよ」
「シオリちゃん、なるべく、そういう言質を取らせちゃ駄目よ。あなたと主は、たくさんの精霊の加護を持ち、嘘をつかないと誓約したでしょう?
 そう言った宣言は、時には、契約になってしまう事もあるの」
 気を許して、本気で言った言葉なら尚のこと。

「シオリがそう言ってくれる言葉を、わたし達が利用して、それこそ奴隷のように何でもやらせるかもしれないよ?」
「そんな事にならないと思っているから。それに、そうなっても後悔しないからこその信頼です」
「シオリ」
「はい。もう、言いません。ですが、そういう気持ちもわかっていただけると嬉しいです」

 悲しそうな顔をして、リリティスさんが私にしがみつくように、抱きしめてきた。
「そんな顔をさせてごめんなさい。依存してる……つもりはないんですが、そうならないようにちゃんと自分の足で立てるよう頑張りますから……
 なにか、お仕事をください。あの小屋で、一人で生きていけるように、この街での役割をください」


 *****


 今の私は、セルヴァンスさんメリッサさん夫婦の後見で、この館で下働き見習いをしている子供だ。
 この秋で15歳になり、この国の法律で成人と見なされ、独り立ちする予定である。
 そのために、リリティスさんの住んでいた小屋も与えられた。後は、大人としての仕事だ。

 自分の稼ぎで食べられるようになったら、ここへシーグを連れてきたい。

「どんな仕事につきたいか、色々やってみるのもありかもね」

 そう言って、ウインクしてくれたリリティスさんについて、街をまわっている。

 いつも挨拶をしてくれる粉屋のお兄さん、鍛冶屋のおじさん。猟師会、農協のおじさん達。
 小物、雑貨店のおばさん。
 残念だけど、この、そう大きくない街の中では、人を雇うほど大規模な商業は多くない。
 みな、家族内だけで仕事をまわしている。どうしても手が足りないときだけ、萬屋を通して、人を一時雇いするのだそう。

 私の(日本の)認識でいくと、萬屋よろずやと言えば、なんでも売ってる雑貨店に近いものなんだけど、ここでは、あちらで言うなんでも屋に近いらしい。

 人々の依頼に合わせて、見合った能力スキルを持った人を派遣するコーディネイトする場所なんだとか。
 ファンタジー小説で言う、冒険者ギルドみたいなものかしら?

 でも、この街は国境近くの砦街なので、元々ドルトスさんやロイスさん達のような衛士隊が配置されていて、傭兵や護衛士のような、戦闘職種の人達はいなかった。

「ここで、色んなお手伝いをしながら、自分に合った仕事を探る人もいるわ」
 多くの人は、親について、手伝いながら技術や仕事を受け継いでいったり、自分の興味のあることのプロに師事して、下働きをしながら学んでいくものらしい。

 武器が好きな人は、刀鍛冶に弟子入りしたり、武器屋で働きながら知識と目利きを蓄えたり。
 親が農家なら、家族総出で手伝いながら、畑を受け継いでいったり。

 でも、私の親はいないし、受け継ぐ田畑もない。
「あら、本当に農業をやりたいなら、畑を用意するわよ?」
「え?」
「言っただろう。この国の土地は総て国有地だと。
 家も独り立ちする若者に用意するように、領主の判断で、農家を希望する者に畑も分け与えるし、その者の能力に合わせて、与える畑の範囲も決める。
 君が、山猪を飼って食肉に卸したいと言うのなら養豚場を紹介するし、刺繍や編み物が好きだと言うのなら、街の仕立屋を紹介する」

 本当に、領地を任された貴族や領主の裁量で家や土地や職業が決まるの?
 中には、自分の好きな人に優遇したり、気に入らない人に不遇したりする人はいないのだろうか。と思ったら、それなりに過去にはそう言う領主もいたらしい。

 評判のよくない領主や貴族は、定期的に転地──領地替えをさせられ、それでも改められなければ、領主や貴族として認められなくなり、最終的にはなんの権限もない一平民に落とされるのだという。

「まあ、平民に落とされる前に、場合によっては投獄や財産没収、たいていが色んな権利や資格を失う事になるけどね」

 わたしは、そんな目に合わされる前に辞職して、この国境近くの田舎に引っ込んだんだけどね。
 とても明るく笑って言えることではないように思うけど……

 カインハウザー様のようにちゃんとした領主さまが、身分を剥奪されるかもしれないなんて、そんな事があるのだろうか……?

「そんな事より、シオリは何をしたいのかな?」
「何をしたいか、ですか? 何が出来るのか、ではなくて?」
「したい事があるなら、まずはそちらを優先した方がいい。どうせなら楽しく働きたいだろう?」
 どうしても無理そうなら、違う職に変わればいいさ。
 そう言って、一日で歩いてまわれるくらいの小さな街を案内してくれた。



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