異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

文字の大きさ
110 / 294
Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

73.嫁ッコの知識と妖精王

しおりを挟む

「畑に行くんでしょう? ご一緒しましょう」
 キーシンさんの申し出で、ベーリングさんと3人で、カインハウザー様の畑まで行くことになった。

 馬は二頭。人間は三人。

 初めは、歩く私に合わせて、二人も馬の手綱を引いて歩いてた。

 途中の畑で、アリアンがちょっかいを出し始めると、ベーリングさんは、手にしていた槍をキーシンさんに手渡して、私の脇に両手を差し込み、一気に持ち上げるようにして、馬の背に座らせた。
 幸い、乗馬クラブで見るような鞍ではなく、あぶみこそついてるものの、騎乗する部分をかなり厚い皮で覆ってるだけで、その形状は同乗者が増えても関係なかった。

 元々軍馬で、騎士達もゆったり座って騎乗るものではないのだろう。
 中腰で立って乗るためにあぶみは必要なものの、厚手の毛布のような掛布の上に革の鞍を腹帯で取り付けているだけなのは、横座りサイドサドルの女性や騎手の前後に子供など、同乗者を座らせる状況の前提もなく、敢えて駄つけもっこは必要がないのかもしれない。

 私がいちいちアリアンの行動に口を出そうとするので、ベーリングさん達の予定が遅れて迷惑をかけてしまったのだろう。

 私の後ろに颯爽と騎乗したベーリングさんと、二人の槍を抱えて騎乗したキーシンさんが、常歩なみあしよりやや速めに馬を走らせると、畑の端で水を噴霧して遊んでいたアリアンも気づいて追いかけてくる。

 風の精霊をベースに複数の精霊が混ざり合って生まれた精霊だけに、スッと音もなく宙を泳ぐように飛んで来る。

「最初から、こうしていればよかったかな……」

 やっぱり、迷惑掛けてたのね。ごめんなさい。

 馬が駆けている間は、もっこのない鞍の上で捕まるものもないので、しっかりバランスをとっていないと落っこちそうだし、喋ったら舌を噛みそうなので、後で謝ろう。
《私が憑いてて、シオリを馬から落とすワケないでショ》

 なんだろう、サヴィアンヌの言葉は、透き通った音が耳から入るけれど、意味は直接頭に響くはずなのに『憑く』って聴こえた気がする……


 * * * * *


 お爺ちゃんズのいる田んぼで降ろしてもらい、二人は花畑の方へ、見張りの交代に行ってしまった。
 手間と時間をとらせちゃったな……

 やはり日本のお米とは違うのか、籾っ子ちゃん達の加護のお陰なのか、夏を迎えるに当たって、ちらほら稲穂が実り始めていた。


「籾ッコ達に訊いたんじゃがな、この小さな虫、南の方にはたくさんおって、イネを食べ尽くすこともあるそうなんじゃよ」

 そう言ってノル爺さんが見せてくれたのは、小さな小さな羽虫。多分、ウンカに似てるかな。
 稲を見ると、アブラムシに似た、1㎜ほどの虫もみっちりついてる穂もあった。

「アブラムシ……かな? トンボとか天道テントウ虫がいたらいいんだけどなぁ」

 日本の知識だからここでも同じかはわからないけど、江戸時代の大飢饉の原因が、ウンカやイナゴだったりするって聞いた事あるかも。
 私のバケツ稲作にも、アブラムシもウンカもカメムシもいっぱい来た。その時とった手段は……

「無農薬で行きたいけれど、手で取るのは大変ですよね」
「そうじゃなぁ、雑草や虫が死ぬような薬は、稲にもまわりの他の植物にも、積もれば人にも毒じゃろうからな」

 とにかく、私の知識では、天敵の虫や小動物がいるのが一番いいけど、どうやって集めてくるのか、どうやってこの畑に居着いてもらうかが難しそうだよね。

木酢もくさく液ってわかりますか?」
 この世界にも利用されているかどうかはわからないけど、ナラやブナ、竹などを炭にするときに出る水蒸気と煙の、冷却蒸溜した水分のことだ。
 九割方は水分だが、約1割ほどの酢酸さくさんと、僅かなアルコールやフェノールなど何百種もの成分が含まれている。
 原液では植物自体を傷めてしまうが、木酢液には水の分子を小さくする効果で通常の水よりも吸収しやすくなるため、1,000倍~2,000倍ぐらいに薄めて土壌に散布すると、根の張りがよくなり、微生物が活性化し堆肥の発酵も促される。
 また、300~1,000倍に薄めて霧吹きしたり、刷毛で葉や茎に塗ったりして、害虫や害獣を避けつけない忌避剤にもなり、用途は広い。

「ほんに、嫁ッコは博学じゃな。炭焼きのキノがなんぼか持っとったはずじゃ」
「明日、さっそく持ってこようかの」
「今日の所は、手作業で退治するかのぉ」

 お爺さん達が田に入り、茎を軽く握るようにして下から上へ、アブラムシやウンカを手でしごき捕っていくので、手伝う。

《シオリ、田んぼのまわりにニームや蓬菊タンジー苦蓬をニガヨモギ 植えたりしたらどうカシラ?》
この世界ここにもあるの?」

 ニームは暖かい地域(インド原産で熱帯地方に多く植生している)の常緑樹で、種子から採れるオイルが虫除けになる。

 ニガヨモギは弱いが毒性のある草で、植えているだけで葉の独特の匂いが、虫除けになる。
 毒性とはいえ、アブサンというお酒の原料にもなるし、胃腸の薬にもなる。

 タンジーはハーブの一種で、シダに似たノコギリのような葉で、花壇に植えていると虫除けになる。
 葉をポプリにしたものを棚や倉庫に吊して虫除けにしたり、カーペットの下に入れて、アリノミ避けにも使われる。

《あるワヨ。名前は違うケド。テントウ虫はこの辺りにはいないけど、トンボなら、ちょっと待ってもらえたら、用意するワヨ》

 サヴィアンヌが蝶々の姿でひらひら飛びながら、自信ありげに請け負った。

 

しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

処理中です...