124 / 294
Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
87.単独行動禁止令発動
しおりを挟む「それは、どうにか努力でなれるものなのかな?」
勿論、誰だって、穢れを跳ね返すくらいの守護を得られたら、その方がいいに決まっている。
みんなも、身を乗り出すようにして、サヴィアンヌの返答を待つ。
しばらくカインハウザー様と見つめ合った後、チラッと衛士隊の面々を目だけで見、ため息を付くような人間くさい態度で、サヴィアンヌは距離をとった。
《……それは、シオリ……女神次第カシラ?》
「不思議な言い回しだな。シオリ=女神なのか? 女神の祝福を持つという意味なのか?」
《それも、シオリ次第カシラ》
それ以上は答えるつもりはないのか、燐光を放って羽衣に変わると、私の頭上にふわっと広がり、肩に収まった。
「答えてくれる気はないようだね、仕方ない」
一度深く息を吐くと、再び私に向き直り、膝の裏と背に腕を差し込んできて、あっという間に抱き上げて、乗ってきた馬に座らせる。
「カッ、カインハウザー様?」
「その生まれたての子鹿のような調子では、畑仕事も出来ないだろう? 今日は帰ろう」
有無を言わせず、私の後ろに跨がって、支えるためか、逃げられないようにか、抱き込むようにして手綱を引いた。
「主、もし、神殿の偵察が来て、前と状況が違うと言われたら……」
「前の状況を把握してるとは思えないが、そう言われたら、危機感を持ったわたしの不安に応えた精霊がやったと、前と同じ言い訳でもするしかないな。
あくまでも、シオリの事は秘密だ」
「了解しました」リ
「神殿なんかに、フィオちゃんを取られちゃかなわないですからね」ナ
「王家に取り込まれるかも」オ
「そんなことにはさせられません!」ロ
「フィオリーナ様の自由と御身を護らなくては」キ
なんだか、みんな張りきってる……
「みんな、ここは頼んだぞ」
寡黙なベーリングさんとリリティスさん、みんなを見守るお父さんのように控えていたドルトスさんが、私達を囲むように編隊して、花畑を後にした。
途中、林の中にシーグを見かけたが、手を振ったりはしなかった。
《シオリ!》
「サヴィア、ごめんね、今日はお手伝い出来そうにないわ」
カインハウザー様の畑の端で、シャガ芋の花に祝福をしてまわっているサヴィアを見かけた。
《元気ならいいワヨ。どうせ、また来るデショ?》
「うん、また来る!」
私とサヴィアのやりとりを横目で見ながらも、何か考え事をしているようなカインハウザー様は、街に戻るまで、ひと言も話さなかった。
* * * * * * *
街に戻っても、馬から降ろされず、屋敷までノンストップで帰ってきた。
途中、街への砦門の内側でカインハウザー様の帰りを待っていたハルカスさんに、
「今後、シオリを1人で外に出さないように」
と言い置くのも忘れなかった。
しかも、1人で外出禁止令だけではなく、カインハウザー様とリリティスさんか、各部隊のリーダー格(精霊の加護の強い人)が2人以上一緒にいることもつけ足されてしまった。
「目を離すと、何をしでかすかわからないからな、この弟子は」
困ったように微笑まれて、頭を力強目に撫でられる。
お屋敷の食堂に連れて行かれ、メリッサさんの特製、霊力魔力回復力向上デザートを食べさせられることになった。
椅子に座らせられ、離れ際に一度深く抱き締められる。
「無事でよかった。
助けを求める声を聴いた時、花畑の端で倒れている君を思い出した。また、自分がそばに居ない時に失いかけたのかと、動揺が高じて過呼吸になりそうだったよ」
大袈裟な、とは言えなかった。
あの時心配をかけたのは本当だし、今回だって、サヴィアンヌが気を利かせてシーグを連れて来てくれなかったら、ハイになって魔力球を撃ち続けるアリアンロッドに精気を持って行かれて、霊力の枯渇で昏倒していたかもしれないのだ。
「ご心配おかけしました。ごめんなさい」
「うん。でも、しようとしてやった事ではないだろう? 次からは、本当に、咄嗟の事態に対処できそうな者と一緒に行動しなさい」
再び頭を撫でられて、カインハウザー様も席に着く。
「さあさあお待たせしました、お嬢様。こちらをお召し上がりになってから、温泉でゆっくりされて、今日はそのままお休みくださいませ」
就業中のメリッサさんは、家政婦長モードだ。
カインハウザー様とリリティスさんも同じデザートを食べ、二人はお仕事に戻り、私はメリッサさんやメイドさんに伴われて、お庭の岩風呂へ。
メリッサさんのデザートはよく効いて、お屋敷に戻ってきた安心感もあって、ゆっくりでも自力で歩けるくらいには回復していた。
湯着に着替え、羽衣状態のサヴィアンヌを纏ったまま、岩風呂に入る。
冷泉だけど、私が入ると聞いていた湯殿担当のメイドさんが、あらかじめ焼いた岩を入れて、温めにしてあった。
「はぁ~、生き返るぅ」
「ふふふ、いつも、そう言うわね」
カインハウザー様と仕事に戻ったはずのリリティスさんが、湯着でやって来た。
「まだ調子出ないでしょうから、沈まないように見守りに来たわ。ついでにご相伴するわね」
綺麗なウインクで、湯に入ってきた。相変わらず素敵なプロポーション。
自分の胸が目立たないように、羽衣のかぶり方を直して、口元まで沈んだ。
37
あなたにおすすめの小説
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる